日々の食事には、体の調子を整えるために必要な栄養素が何種類も含まれています。健やかな生活を送るうえで、それぞれの栄養素がどのような働きを持ち、どう摂るとよいのかを知っておくことが大切です。
今回は、“健康のために知っておきたい栄養素”のなかから、「カリウム」をピックアップ。体内の水分等のバランス維持に欠かせないカリウムの働きや、効率よく摂取する方法などについて解説します。
- 教えてくれるのは…
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- 新出 真理さん
- 山形県立米沢栄養大学 講師
管理栄養士、産業カウンセラー、博士(栄養学)。女子栄養大学卒業後、管理栄養士として(財)日本健康文化振興会、電設健保健診センターで栄養・運動指導等や、保健医療従事者へのカウンセリング教育に従事。筑波大学大学院修士課程健康教育学専攻修了後、開業。ヘルスサポート研究会カナン代表、健康教育コンサルタントとして栄養相談や保健医療福祉専門職の養成・卒後研修、企業・自治体の栄養関連アドバイザーなどを行う。女子栄養大学大学院博士後期課程(栄養学専攻)修了。2025年度より現職。
[監修]新出真理さん:https://www.u.yone.ac.jp/outline/faculty/shinde_mari/
山形県立米沢栄養大学:https://www.u.yone.ac.jp/
カリウムとは?その働きと効果
カリウムは、多量ミネラルといって必要量が多く、健やかに過ごすために欠かせない必須ミネラルの一種です。
成人の体内に120〜200g程度(体重の0.2%)含まれており、同じく必須ミネラルであるナトリウムと共に、筋肉や心臓、神経など体のさまざまな部分の機能を支えています。
カリウムの主な働きは、細胞内外の水分・ミネラル量のバランスを調整することで、この働きにはナトリウムが深く関わっています。
ナトリウムを多く摂りがちな日本人に必要なカリウム
ナトリウムは、食塩の主成分であるミネラルで、カリウム同様、成人の体内に約100gが含まれています。カリウムが細胞内液に多く存在するのに対し、ナトリウムは細胞外液に多く含まれています。
日本人は食塩摂取量が多く、ナトリウムを摂りすぎる傾向があります。生活習慣病の発症および重症化予防のためにも、腎臓での利尿作用(ナトリウム排泄作用)があるカリウムを積極的に摂ることが望まれます。
※1 ただし病気などで腎臓の機能が低下していると、カリウムの摂取制限が必要な場合があるため、不安がある方は医師や薬剤師に相談してください。
カリウムはそのほかにも、体内のpH(※2)を一定に保つ働きや神経の刺激の伝達、心臓の機能維持、筋肉の収縮・弛緩を正常に保つ働き、細胞内の酵素の活性化などにも関わっています。
※2 酸性・中性・アルカリ性の度合いを示す指標
▼栄養素についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
- 体に必要な栄養素とは?主な役割と食生活のアドバイス
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「栄養バランスのよい食事を取ろう」と意識していても、栄養の偏りや不足が気になることはありませんか。そもそも、どの栄養素がどのように体に働くのか、わからない方も多いでしょう。この記事では、栄養素の働きや不足しがちな栄養素を効率的に摂る方法などについて解説します。https://www.aisei.co.jp/helico/health/nutrition/
カリウムはどんな食品に含まれる?1日の摂取目安量
カリウムの1日の摂取目安
WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、高血圧などのリスクを減らすために1日3,510㎎のカリウムを摂ることが推奨されていますが、日本人のカリウム摂取量はこれを大きく下回っています。
そのため、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、実態を踏まえ、生活習慣病の予防を目的とした成人1人1日当たりのカリウム摂取の当面の目標量を、男性3,000mg以上、女性2,600mg以上と定めています。
しかし、現状多くの日本人はこの目標量にも届いていません。加えて、日本人は食塩を摂りすぎる傾向があるため、食塩を控えながらカリウムを積極的に摂ることが大切です。
カリウムを含む食品
カリウムを含む食品として代表的なのは、野菜と果物などの植物性食品です。特に多く含まれている食べ物は下記のとおりです。
緑黄色野菜:ほうれん草、にら、ブロッコリー、トマト、モロヘイヤなど
その他の野菜:れんこん、セロリ、ズッキーニ、ごぼう、レタスなど
果物:バナナ、メロン、キウイフルーツ、ぶどう、さくらんぼなど
芋類:里芋、さつまいも、じゃがいもなど
きのこ類:ぶなしめじ、えのきだけ、エリンギ、しいたけ、まいたけなど
そのほか昆布やひじきなどの海藻類などにも豊富に含まれている
図版作成協力:菊地咲羽(新出研究室卒研生)
とはいえ、ほとんどの野菜や果物にはカリウムが十分に含まれています。食品による量の違いはあまり気にせず、自分が食べやすいものを取り入れるとよいでしょう。
りんごをよく食べる地域は血圧が低い?
参考になる事例のひとつに、りんごの名産地である青森県で1950年代から1970年代にかけて実施された、「りんご摂取と血圧に関する調査」(※)があります。東北地方は食塩摂取量が比較的多い地域ですが、この調査では、りんごをよく食べる人ほど血圧が低い傾向があることが示されています。
これは、カリウムを含むりんごを日常的に食べることで、ナトリウムの排出が促され、高血圧の予防につながったためと考えられています。
りんごは果物のなかで特別にカリウムが豊富な食品というわけではありません。しかし、カリウムを含む食品を日頃から取り入れることで、健康に影響がもたらされた好例といえるでしょう。
※出典元:「生活条件と血圧 とくに食塩過剰摂取地域におけるりんご摂取の血圧調節の意義について」東北女子大学 佐々木 直亮(日本衛生学雑誌 45 (5), 954-963, 1990)
カリウムを効率よく摂取する方法
カリウムは水に溶け出しやすい性質があり、調理法によって摂取できる量が変わります。
たとえば、野菜を細く切ってゆでたり煮込んだりすると、野菜の切り口からカリウムがゆで汁や煮汁に溶け出てしまい、せっかくの栄養素が失われやすくなります。大切なカリウムを効率よく摂るために、以下の方法を取り入れてみましょう。
1生で食べる
トマトなど水にさらさずに食べられる生野菜は、カリウムの流出がなく取り入れられるのでおすすめです。ドレッシングやマヨネーズなどの調味料の使用を控えると、食塩の摂取が抑えられ、カリウムの働きを活かせます。
2せいろやフライパンで蒸す
せいろ蒸しやフライパンでの蒸し焼きも、ゆでるのに比べるとカリウムの流出量が少ないので効果的です。せいろ蒸しは、素材本来のやさしい味わいを楽しめるのも魅力です。フライパンで蒸し焼きにすると、水分が飛んで味が凝縮されるため、塩などの調味料を控えてもおいしく食べられます。電子レンジ加熱も、手軽な調理方法のひとつです。
3汁物にする
汁物に野菜を加えると、汁に溶け出たカリウムも一緒に摂取できます。ただし、食塩の摂取量も多くなりやすいため、1日1回を目安に素材の味を楽しめる程度の食塩控えめを意識して取るとよいでしょう。
日本人の野菜の平均的な摂取量は、1日約350gの目標に対して十分ではなく、野菜料理を1日1皿(約70g)増やすことが推奨されています(プラスワン運動)。カリウムを補うためにも、野菜のおかずを1品プラスしてみましょう。
食塩以外の味・香りを活用するのもポイント
カリウムの働きを十分に活かすためには、食塩を控え、ナトリウムを摂りすぎないことが大切です。酸味や辛味、うま味、香りを活用すれば、塩分量を抑えながらおいしくカリウムを摂取できます。
素材の酸味が活きたトマトスープや、お酢とラー油を使ったサンラータンは、塩分が少なくても満足感を得られやすくおすすめです。カレーパウダーや黒こしょうなどのスパイス、香り豊かなごま油も、食塩を控えた物足りなさを補ってくれます。味噌汁で食塩量を抑えるためには、出汁を濃いめにとってうまみを効かせましょう。
カリウムが不足・過剰になっているサインとは
カリウムが不足するとどうなる?
長期的なカリウム不足は、高血圧につながる可能性があります。また、夏バテの際に感じる体のだるさと関係があることも指摘されています。
体内のカリウム量が著しく低下して起こるのが、「低カリウム血症」です。低カリウム血症とは、血中のカリウム濃度が基準値を下回った状態のことです。低カリウム血症では、けいれんや低血圧などの症状がみられます。
カリウム不足は、食べ物を体内に取り入れない状態が続くことで起こります。一時的な欠食によってすぐに体に影響が出ることはありませんが、長期にわたって食事が取れない状態が続く場合は注意が必要です。
また、下痢・嘔吐が続く場合や、一部の利尿薬の服用などで水分とともに排出されることも、カリウムが不足する原因です。
カリウムを過剰摂取するとどうなる?
健康な人であれば、食事から摂ったカリウムは尿として排出されるため、特にカリウムのサプリメント等を使用しない限りは、過剰摂取によって体に影響が出る可能性は低いと考えられます。
ただし、腎臓病などで腎機能が低下している人は、カリウムを排出する力が弱まっているため、血中にカリウムが溜まって「高カリウム血症」になる恐れがあります。
高カリウム血症とは、血中のカリウム濃度が基準値を超えた状態で、心臓などの筋肉の収縮の調節、神経伝達などがうまく働かなくなる点が特徴です。悪化すると筋肉の脱力や不整脈などが起こり、命に関わる場合もあります。
病気や薬とカリウムの関係
持病がある方や薬を服用している方は、カリウムの摂取に注意が必要な場合があります。
腎臓病などの持病がある方は、体内にカリウムが蓄積されやすくなっています。カリウムを含む食品を普段通り摂取してよいか、必ず医師に確認してください。
降圧薬や利尿薬の一部、また甘草(かんぞう)を含む漢方薬などは、血中のカリウム濃度に影響を与えることがあります。薬によってカリウムが不足したり、反対に過剰になる場合があるため、持病がある方や薬を服用している方は、カリウムの摂取について医師や薬剤師に相談しましょう。
夏は発汗でカリウムが不足するって本当?
汗には体内のミネラルが含まれているため、汗をかくとカリウムも失われます。多量に汗をかく場合はカリウムが不足する可能性がありますが、通常の発汗量であれば問題になりにくいと考えられます。
大切なのは、日ごろの食事でカリウムをしっかり摂ることです。日本人の多くは、カリウムを生活習慣病予防のために摂りたい目標量に対して、十分に摂取できていません。カリウムを含む食品を毎食取り入れることを目指しながら、1日3食きちんと食べて、定期的にカリウムを補うことを意識しましょう。