あなたは、自分の血圧の数値を把握できていますか? 「自分の血圧を知らない」、もしくは「健康診断で血圧が高めと指摘されたけど、まだ高血圧ではないから大丈夫」という方もいるかもしれません。しかし、血圧は基準値よりも高くなることで、段階的に心疾患や脳血管疾患のリスクを高めてしまいます。高血圧対策の第一歩は、自分の「血圧」を知ること。本記事では、血圧の基本はもちろん、今日からできる高血圧の改善策までご紹介します。
- 教えてくれるのは…
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- 大屋 祐輔先生
- 一般財団法人 沖縄県北部医療財団 理事長
九州大学医学部を卒業後、米国シンシナティ大学医学部生理学教室への留学や、琉球大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神経内科学講座 教授、琉球大学病院長兼任などを経て、2025年4月より現職。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の作成委員長を務めた。
[監修者] 大屋 祐輔先生(沖縄県北部医療財団HP)
そもそも血圧って何?
血圧とは、心臓が血液を体中に送り出すときに、血管の内側にかかる圧力のことです。心臓はポンプのように動いており、ギュッと縮んで血液を押し出すときの圧力を「上の血圧(収縮期血圧)」、心臓が緩んで次の拍動のために広がるときの圧力を「下の血圧(拡張期血圧)」と呼びます。血圧計で表示される「120/80」などという数字は、この「上/下」を意味しています。
血圧は、心臓が1回の拍動で全身に送り出す血液の量、血管の弾力性、血液の粘度などによって変動します。また、測定するタイミング(時間帯や季節、運動前後など)、食事やストレスなどさまざまな要因によっても変わります。
そのため、一時的に血圧が上がることは誰にでもあります。問題は、血圧が高い状態が長期間にわたって続いてしまうことです。
高血圧が続くとどんなことが起こる?高血圧の危険性
血圧が高いと、血管の壁が内側から強い力で押され続けることになります。この状態が長期にわたって続くと、次第に血管は傷つき、それを体が修復しようとする過程で血管が厚く硬くなります。こうして弾力を失った状態が、いわゆる「動脈硬化」になります。動脈硬化が進行すると、脳の血管が破れたり詰まったりする「脳卒中」、心臓の血管が詰まる「心筋梗塞」や「狭心症」などをはじめ、「慢性腎臓病」や「認知症」など、さまざまな病気を引き起こすリスクが高まります。
高血圧は多くの場合、自覚症状がありません。そのため、気づかないうちに動脈硬化が進んでしまいます。だからこそ、高血圧予防・改善の第一歩は「自分自身の血圧を知ること」なのです。
高血圧と診断されていなければ、血圧が高めでも問題はない?
血圧の上が140mmHg以上、もしくは下が90mmHg以上の場合、高血圧と診断されます。ただし、これは医療機関(診察室)で測定した場合です。家庭で測定する場合は、上が135mmHg以上、もしくは下が85mmHg以上が基準となります。医療機関での測定では緊張により血圧が高めになることがあるため、家庭での基準値より高く設定されています。
一方、この数値より少しでも低ければ問題ないかというと、そうではありません。この数値はあくまで「高血圧の診断」の基準であり、実際には「この数値より低ければ安全」という明確な境界線はありません。
最も健康に良いとされる血圧の基準は、「上が120mmHg未満、かつ下が80mmHg未満」です。一般的な血圧の分類は以下のとおりです。
一般的な血圧の分類
- 正常血圧:上が120 mmHg未満、下が80 mmHg未満
- 正常高値血圧:上が120〜129mmHg、下が80 mmHg未満
- 高値血圧:上が130〜139mmHg、下が80〜89 mmHg
- I度高血圧:上が140〜159mmHg、下が90〜99 mmHg
- II度高血圧:上が160〜179mmHg、下が100〜109 mmHg
- Ⅲ度高血圧:上が180mmHg以上、下が110 mmHg以上
高血圧と診断されている、もしくは血圧が基準値よりも高めの人は、上が130mmHg未満、かつ下が80mmHg未満を目標として血圧の改善を目指しましょう。
血圧改善のためには何をすれば良い?
高血圧のリスクが分かったところで、血圧を適正値まで下げるために意識したいポイントを紹介します。
まずは減塩を!
私たちの体は塩分を摂りすぎると、血液の浸透圧を一定に保つために血液中の水分を増やす(血液量を増やす)ことで対応します。すると、血管の壁にかかる圧力が強くなり、血圧が上がります。
また、腎臓は塩分の排出と吸収を担っていますが、塩分過多の状態が続くと腎臓のろ過機能が低下していきます。それにより、塩分や水分の排出が上手くいかなくなり、血液量が増え、さらに血圧が上がるという悪循環に陥るのです。
こうした背景から、高血圧の改善には減塩が効果的です。1日の塩分摂取量は6g未満が推奨されています。麺類のスープは控えめに楽しんだり、漬物や汁物からの塩分摂取を減らしたりするなどの工夫をしてみましょう。
塩分の排出を助ける働きのある、カリウムを含む食材を積極的に摂るのもおすすめです。カリウムは、わかめや昆布などの海藻、切り干し大根、ブロッコリーやバナナなどに豊富に含まれています。
飲酒や喫煙も血圧を上げたり、動脈硬化を進行させたりするので気をつけて
アルコールを摂取すると一時的に血圧が下がりますが、一定時間が経過すると血圧を元に戻そうと血圧を上昇させます。また、長期にわたって飲酒習慣があると、アルコールが抜けた状態のときに血管が過敏になり、血圧が上がりやすくなります。1回の飲酒量に気をつけるほか、休肝日を設けたり、飲酒時に一緒に水を飲んだりして対策しましょう。
喫煙は、血管を傷つけて動脈硬化を進行させます。そのほかにもさまざまな健康への害があるため、血圧以外の観点からも禁煙が望ましいです。
ハードじゃなくてもOK! 運動を取り入れよう
適切な運動を継続することで、筋肉に酸素や栄養を運ぶために血管が広がったり、ストレス発散によって交感神経の緊張が和らぎ血管が拡張したりして、血圧降下が期待できます。有酸素運動、もしくは筋トレなどのレジスタンス運動(筋肉に負荷をかける動き)を取り入れてみましょう。
有酸素運動
- 目安:1日30分、1週間で150分以上
- ポイント:10分×3回と細切れに行ってもよい
- 主な運動:ウォーキング、ジョギング、水泳、ダンスなど
レジスタンス運動(筋トレ)
- 目安:1日20分程度、週3回程度
- ポイント:いきむことで血圧が上がるため、力を入れる運動は最大の力の40~50%程度にする
- 主な運動:スクワット、腕立て伏せ(膝をついてもOK)、上体起こしなど
日常生活を改善したうえで、薬も上手に使おう
以前は、できるだけ薬を服用しなくて済むように、生活習慣を改善しようという考え方でした。しかし、生活習慣を改善したうえで薬を服用することで、より薬の効果が期待できたり、服用する薬も少なく済んだりするため、現在は生活習慣の改善と服薬の2つの軸で降圧をする考え方が広まってきています。
まずは自分の血圧を知るところから始めよう!
自身の血圧を把握していない方は、まずはお近くの医療機関や調剤薬局、地域の公民館、あるいは家庭用血圧計などで血圧を測ってみましょう。「いまはまだ大丈夫」という方も、血圧は年齢とともに上がりやすくなるため、「未来の自分を守るため」と思って、ぜひご自身の血圧に興味を持ってみてください。