冬になると気分が落ち込む「冬季うつ」の症状と対策

冬になると気分が落ち込む「冬季うつ」の症状と対策

寒い冬になると、気分が沈んだり、一日中だるかったり、寝ても寝ても眠かったりといった不調を感じることはありませんか。じつは冬の体調不良には、寒暖差によって起こる自律神経の乱れ(冬バテ)のほかに、日照不足が関係する「冬季うつ(季節性感情障害)」が隠れている場合があります。

本記事では、こうした冬の不調の原因や特徴、家庭でできる予防策や受診の目安について、専門医の解説とともに紹介します。

教えてくれるのは…
勝 久寿先生
勝 久寿先生
人形町メンタルクリニック院長 精神保健指定医、精神科専門医、臨床精神神経薬理学専門医、日本医師会認定産業医、日本精神科産業医協会・認定会員

1992年に旭川医科大学を卒業後、北海道大学医学部附属病院麻酔蘇生科、東京慈恵会医科大学精神医学講座を経て2004年より現職。企業の産業医としても活動。現在は行政官庁の精神科嘱託医として職場のストレス対策などについての研修やメンタルヘルス相談に尽力している。著書に『「いつもの不安」を解消するためのお守りノート』(永岡書店)『とらわれ「適応障害」から自由になる本』(さくら舎)など。
 
[監修者]勝 久寿先生:https://www.cocoro-support.com/photo_3.html
人形町メンタルクリニック:https://www.cocoro-support.com/

冬バテ、冬季うつ、冬の2大不調の違いとは?

厳しい寒さが続く冬は、風邪、冷え、肩こりなどに悩まされる人も多く、体調管理が難しいと感じている人は少なくないでしょう。また、日照時間が短くなることで、疲れやすい、気分が沈むなどのメンタル不調も感じやすくなります。この時期特有の不調として、自律神経失調症や冬季うつの違いを知っておきましょう。

寒暖差が招く「冬の自律神経失調症」

冬は、屋外と室内との急激な気温差によって自律神経のバランスが乱れやすくなるため、体調不良を起こすことがあります。

また、寒さによる活動量の低下や忙しさ、ストレスなども自律神経のバランスを崩す一因になり、めまい、頭痛、冷え、だるさ、肩こり、倦怠感など、心身にさまざまな症状が現れます。近年では、こうした不調を「冬バテ」という言葉で表すこともあります。

日照時間の不足によって起こる「冬季うつ」

冬季うつは「季節性感情障害(SAD)」とも呼ばれ、特定の季節になると繰り返し症状が現れる、うつ病の一種です。主な原因は、冬の日照時間の短さにあります。日照時間の減少により、気分を安定させる神経伝達物質「セロトニン」の分泌が低下すると、睡眠リズムや食欲をコントロールする脳の神経のバランスが乱れやすくなり、次のような症状が現れやすくなります。

  • 気分の落ち込み
  • イライラ感・不安感
  • 過眠(朝起きられない、寝過ぎてしまう、日中も眠い)
  • 過食(食欲が高まる、午後から夜にかけて甘いものや炭水化物が欲しくなる・ドカ食いしてしまう)
  • 社会機能、活動性の低下(無気力になり引きこもる、仕事に行けなくなる)」
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冬になると毎年のように調子が悪くなり、春になると自然とよくなるという周期性がある点は、冬季うつの大きな特徴です。冬季うつは、出社できなくなる、朝起き上がれない、社会生活への影響が大きい場合もあります。その特徴を把握しておきましょう。

冬季うつになりやすいのはどんな人?

冬季うつは、20代前半の若年層に多く、男性でも女性でも見られますが、女性は男性より4倍なりやすいという研究もあります。また、日照時間の短い地域ほどリスクが高まると考えられています。

勝先生
勝先生

欧米では人口の1〜10%が冬季うつを経験するとされ、日本の調査では人口の 約2%に冬季うつが疑われたという報告があります。地域別では、北日本や、北欧諸国など緯度の高い地域で多い傾向があるようです。しかし、最近はリモートワークの増加など、ライフスタイルの変化により日光に当たる機会が減っており、年代や性別に関係なく、冬季うつのリスクに注意が必要でしょう。

軽い冬季うつ「ウインターブルー」は、早めのケアで改善しやすい

冬季うつとウインターブルーは同じ意味合いで使われることもありますが、秋から冬にかけて明確なうつ状態が見られるものを「冬季うつ」といい、比較的軽度のものは、一般的に「ウインターブルー」と呼ばれています。症状が軽い段階であれば、生活上の工夫で改善しやすいのが特徴です。

家庭でできる冬季うつ予防策の中心は「朝の光」

冬季うつは、軽度なものであれば、セルフケアで改善が期待できます。その対策の1つが、できるだけ屋外に出て「日光を浴びること」。特に朝日を浴びることで、気分を安定させる神経伝達物質「セロトニン」という脳内物質の活性化や、体内時計の調整につながるとされています。

もちろん、生活リズム、食事、運動といった基本的な生活習慣を見直すことも大切です。ウインターブルー、冬季うつ対策に効果的な次の4つの予防策を取り入れてみましょう。

① 朝の光を浴びる
冬季うつの改善には、2,500ルクスなら1〜2時間/日、10,000ルクスなら30分間程度/日、日光(光)を浴びることが目安とされています。

ルクスは、光が当たっている場所の明るさ(照度)を示す単位です。季節や時間帯によって差はありますが、曇り空でも屋外での日光は約10,000ルクス、室内の窓際での日光は約2,500ルクス、一般的な室内照度は500~750ルクス程度とされています。

冬季うつに関係するのは、網膜に入る光の明るさです。こうした光の刺激が、体内時計やメラトニンの分泌、セロトニンの働きの調整に関わると考えられています。そのため、冬季うつ対策では「目に入る明るさ × 時間」を意識することが大切で、天気のよい日は屋外で30分程度散歩することがすすめられています。

曇りの日でも、屋外の明るさは室内照明よりずっと強いため、短時間でも外に出ることに意味があります。朝の散歩は、体内時計のリセットにもなり一石二鳥です。そのとき、歩きスマホはやめて、顔を上げて目に光を入れましょう。

② 食事からセロトニンの材料を摂取する
セロトニンの合成には、「トリプトファン」という必須アミノ酸が必要です。トリプトファンを多く含む大豆製品(豆腐、納豆、味噌など)、乳製品(ヨーグルト、牛乳、チーズなど)を積極的に食べましょう。また、ビタミンDの摂取も重要です。魚類やきのこ類を食べるほか、日光を浴びることで体内合成もできます。

③ 無理のない運動を取り入れる
激しい運動よりも、日光を浴びながら行えるウォーキングや散歩、軽い筋トレ、ラジオ体操など、無理なく続けられるものを選びましょう。セロトニンの分泌も促進されます。「よく動いたな」「気持ちよかったな」と感じる程度の強度で行うことが大切です。

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冬季うつはどうしたらよくなる? 診断と治療法

冬季うつは、春になれば自然と症状が回復していきます。「ずっとつらいわけではない、楽になる」と前向きに捉えることも大切です。しかし、症状が重い場合には医師に相談して、自分に合った治療を受けましょう。

診断では、まずうつ病の診断があり、その上で季節性の変化があるかどうかを確認します。気分の落ち込みが「ストレスとは関係なく、季節のリズムによって起きている」、そして「春になると自然とよくなる」という周期性があれば冬季うつと診断されます。

主な治療法には、光療法、薬物療法、心理療法(認知行動療法など)があります。

高照度光療法

2,500〜10,000ルクス程度の強い光を1〜2時間浴びる治療により、セロトニンの分泌を促します。保険適用外となりますが、高照度光療法装置(ライトボックス)という照射器が販売されています。照射を中断すると再発するため、冬の間は毎日行います。外出可能な人では、朝の散歩でも光療法の効果が期待できます。

薬物療法

うつ症状が強かったり、光療法で効果が出なかったりした場合には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬を使用します。春になったら薬の量を減量、または中止します。

認知行動療法

冬季うつでつらい思いをしている人は、冬に対してネガティブなイメージが定着し、それがさらに病状を悪化させる原因にもなります。そのイメージを修正するために、冬には温泉やイルミネーション、ウインタースポーツなど冬ならではの過ごし方・楽しみ方があり、ネガティブな面ばかりではないことを、医師とともに再発見していくような心理療法もあります。

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こんなときは受診を考えて

健康な人でも「寒さが苦手」という人は多いものです。しかし、会社を休まざるを得ないなど生活に支障をきたす症状が続いているなら、「冬季うつ」の可能性があります。

秋から冬(9月から3月頃)になると…

  • 決まって気分が沈むことを2年以上繰り返している
  • 朝起きられず、仕事に行けないなど生活に影響が出ている
  • 過眠、過食傾向が強く、体重が増加してしまう
  • 毎年冬に同じ症状が出てつらい

こんな症状があれば、治療が必要な状態だと考えられます。早めに専門医に相談しましょう。

勝先生
勝先生

冬季うつは、加齢とともに治るケースもありますが、放っておくと冬以外にもうつ状態が現れるようになり、季節性のない「反復性うつ病」や「双極性障害」に移行することもあります。社会生活に支障が出ているようであれば、心療内科や精神科の専門医を受診してください。生活スタイルについて、しっかりと耳を傾けてくれる医師を選ぶことが重要でしょう。

早めのケアで心身を整えよう!

日照時間の光不足が大きく関係する冬季うつは、症状が軽いうちにケアをすることで予防可能です。1日1回は外に出て、意識的に太陽の光を浴びるようにしましょう。冬を元気に過ごすために、不調を感じたら早めのケアを心がけたいですね。

CREDIT
取材・文:及川夕子 編集:HELiCO編集部+ノオト イラスト:オガワナホ

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