人の気持ちに振り回されて疲れてしまう、断りたいのに断れない、人間関係でいつもモヤモヤした悩みを抱えている……それらの背景には「自他境界(バウンダリー)」が関係していることがあります。自他境界とは、「自分」と「他人」の心の境界線を指すもので、曖昧すぎてもはっきりしすぎても、人間関係やメンタルヘルスに影響を及ぼしてしまうのです。
本記事では、自他境界の基本的な考えから、自他境界が曖昧な人の特徴、適度な境界線のつくり方までをわかりやすく解説します。
- 教えてくれるのは…
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- たかだ ちかこさん
- 臨床心理士・公認心理師
心療内科や児童相談センター、学校、被害者支援施設など、多くの現場で相談や心理検査を経験。親子・夫婦関係・子育て・発達障害・ハラスメントやDV被害など様々な相談を得意としている。うららか相談室にてビデオ・電話によるオンラインカウンセリングを受付中。
うららか相談室HP:https://www.uraraka-soudan.com/
[監修者]たかだちかこさん:https://www.uraraka-soudan.com/counselor/102
自他境界(バウンダリー)とは?
自他境界(バウンダリー)とは、「私は私で、あなたはあなたで、違う存在」という基本的な概念を表す言葉です。人それぞれにある「感情」「考え」「責任」などを区別する、自分と他者との間にある境界線を指します。
人は、元々自他境界がない状態から、成長とともに自他境界を理解していきます。たとえば、生まれたての赤ちゃんは自分のお世話を他者がしてくれているということに気づかず、自他境界が曖昧だといえます。しかし、徐々に自分とそれ以外の存在に気づき、自分と他者は違うということを学んでいくのです。
以下のような場合には、自他境界が適切に保たれているといえます。
- 自分の意見を持ちつつ、相手の考えも尊重できる
- 相手が不機嫌でも、「それは相手の問題」と考えられる
自他境界が曖昧な人の特徴
自他境界が曖昧な人は、「自分」と「他者」の感情や責任が混ざりやすい傾向があります。具体的には、次のような特徴が見られます。
- 嫌なことを嫌と言えない
- 自分よりも他者を優先しがち
- 周囲の意見にすぐに影響されてしまう
- 他者のちょっとした言動ですぐに傷ついてしまう
- 人に頼みごとをできない
- 相手に嫌と言われても、受け止めずにやり続けてしまう
- 相手が自分の思い通りに動かないとイライラする
自他境界がはっきりしすぎている人の特徴
一方で、自他境界がはっきりしすぎているパターンもあります。
- 相手を信頼せず、あまり自分のことを話さない
- 自分のペースを頑なに守りたがる
- 他者の気持ちに関心を示さない
- 目の前で困っている人に共感できない
こうした特徴がある場合には、自他境界がはっきりしすぎていると考えられます。その場合、他者との関係性のなかで必要以上に壁をつくってしまい、安心できる人間関係の構築が難しくなることがあります。
自他境界と似た概念との違い
自他境界と似た概念として、「パーソナルスペース」や「共依存」があります。
パーソナルスペースは、自分を中心に取り巻く空間そのものを指します。他者からパーソナルスペースを無遠慮に越えられると不快になるという点では、自他境界と似ています。
一方、共依存と自他境界の関連性は、共依存の状態に自他境界の問題が含まれるイメージです。
共依存に関してはこちらの記事でも解説しています。ぜひご覧ください。
- 共依存はなぜ起こる?なりやすい人の特徴と抜け出し方を解説
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私たちは日々さまざまな人と関わり、ときに助け合いながら生活しています。他者とのつながりは必要不可欠ともいえる一方、特定の相手に過剰にのめり込み、お互いにコントロールし合う状態を「共依存」と呼びます。共依存は単に依存し合うということでなく、自分らしい生活を見失い、相手の自立を阻害するなど問題が生じます。夫婦や恋愛関係にあるカップル、親子などあらゆる人間関係で起こり得るものです。共依存の代表的なパターンや、共依存からの抜け出し方などを解説します。https://www.aisei.co.jp/helico/health/addiction-codependency/
自他境界が曖昧な人の事例
事例1:友人関係での例
日常生活における人間関係のなかで、友人に「どこかに出かけよう」と誘われた際、「あまり気が乗らないな」「本当は断りたいな」と思っているにも関わらず、断ることで嫌われたり、相手を悲しませたりするのではないかと考えて断れない、というのは自他境界が曖昧な1つの例です。
事例2:仕事における人間関係での例
自分が状況を察知して自ら動くタイプの場合、同じように動かない人に対してイライラしてしまったり、さぼっていると感じてしまったり、否定的な判断をしてしまうことがあります。それによって人間関係が悪化しがちになることも。「自分が気づくことは、他の人も当然気づくはずだ」と考えてしまうことが、他者とのすれ違いにつながります。
事例3:親子関係での例
親子関係において自他境界が曖昧になる例としては、親が子どものすべてを管理し、思い通りに動かなかったときに叱ってしまうケースが挙げられます。関係性が近いと自他境界は曖昧になりやすくなるため、注意が必要です。
適度な自他境界のつくり方
では、適度な自他境界をつくるにはどんなことに気をつければよいのでしょうか。まずは、人間関係で何らかの問題が生じていたり、なんとなく生きづらさを感じたりしているときには、その要因として「自他境界の問題があるかもしれない」と疑ってみることが大切です。
そのうえで、人それぞれ気持ちや考え方があり、自分と異なるのは当たり前なのだということを、都度意識していくことが第一歩となります。自他境界がはっきりしていることは、決して冷たいことではありません。自分も相手も大切にするために、適度なバランスを保つことが必要です。
また、ストレスや疲れが原因で、普段よりも自他境界が曖昧になっていると感じる場合、ゆっくり休んだり好きなことをする時間を取ったりしましょう。
身近に自他境界が曖昧な人がいたら?
自他境界が曖昧な人は、他者の表情や態度からさまざまな情報を自分の捉え方で受け取ります。そのため、できるだけ明確に、言葉で考えや気持ちを伝えてあげると、相手にとってもわかりやすくなります。
一方で、自分自身の自他境界を相手にしっかりと示すという意味でも、自他境界が曖昧な人がいても特別扱いしないことが大切です。相手があまりに自他境界を越えて関わってくるようであれば、その際には「自分はこうされると困る」ということを明確に伝えましょう。
まずは自他境界を意識するところから始めよう