「栄養バランスのよい食事を取ろう」と意識していても、栄養の偏りや不足が気になることはありませんか。そもそも、どの栄養素がどのように体に働くのか、わからない方も多いでしょう。この記事では、栄養素の働きや不足しがちな栄養素を効率的に摂る方法などについて解説します。
- 教えてくれるのは…
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- 新出 真理さん
- 山形県立米沢栄養大学 講師
管理栄養士、産業カウンセラー、博士(栄養学)。女子栄養大学卒業後、管理栄養士として(財)日本健康文化振興会、電設健保健診センターで栄養・運動指導等や、保健医療従事者へのカウンセリング教育に従事。筑波大学大学院修士課程健康教育学専攻修了後、開業。ヘルスサポート研究会カナン代表、健康教育コンサルタントとして栄養相談や保健医療福祉専門職の養成・卒後研修、企業・自治体の栄養関連アドバイザーなどを行う。女子栄養大学大学院博士後期課程(栄養学専攻)修了。博士(栄養学)。2025年度より現職。
[監修]新出真理さん:https://www.u.yone.ac.jp/outline/faculty/shinde_mari/
山形県立米沢栄養大学:https://www.u.yone.ac.jp/
栄養素は人間が生きるうえで欠かせない成分
私たちが元気に楽しく生活を続けるには、体を動かすエネルギーを得て、健康を維持していくことが必要です。その体の働きを支える重要な役割を担っているのが、栄養素です。
栄養素は役割に応じて、大きく3つに分けられます。
- エネルギーのもとになる栄養素:主に炭水化物。体を動かす燃料になる
- 体のもとになる栄養素:主にたんぱく質。体のあらゆる組織に使われている
- 体の調子を整える栄養素:ビタミンとミネラル。身体機能の維持・調整を行う
エネルギーのもとになる栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質)
体内でエネルギー源として使われる栄養素は、炭水化物、脂質、たんぱく質の3つ。これらはエネルギーに変わるタイミングが異なります。
最も早くエネルギーに変わるのは炭水化物で、炭水化物が不足した際にエネルギーに代わるのが、順にたんぱく質、脂質です。食事で十分な炭水化物を摂取できなければ、筋肉に存在するたんぱく質が脂質より先にエネルギー源として利用されるため、筋肉量の減少につながります。
炭水化物(糖質)
炭水化物は、ヒトの消化酵素で消化・吸収される「糖質」と、消化・吸収されない「食物繊維」に大きく分けられます。糖質は、体内で消化(分解)されるとブドウ糖になり、血液で全身に運ばれてエネルギーに変わります。
ブドウ糖は脳の重要なエネルギー源です。脳で消費されるエネルギー量は、体が生命活動を維持するために使うエネルギー(基礎代謝)の約20%を占めます。
脂質
少量でも大きなエネルギーを生み出す栄養素です。糖質とたんぱく質は1gあたり4kcalのエネルギーを産生しますが、脂質は1gあたり9kcalと2倍以上のエネルギーを産生します。
消費されなかったエネルギーは、皮下脂肪や内臓脂肪として体に蓄えられます。一方で、脂質は不足すると肌荒れや便秘が起こりやすくなるため、適度に摂ることが大切です。
体のもとになる栄養素(たんぱく質)
皮膚や髪、爪といった体の目に見える部分から、筋肉や内臓まで、あらゆる組織は主にたんぱく質で構成されています。
たんぱく質
たんぱく質は、20種類のアミノ酸によって構成される物質です。体内ではたんぱく質の分解と合成が常に繰り返されており、分解された一部は排泄されます。そのため、食事でたんぱく質を定期的に摂取し、失われた分を補う必要があります。
体の調子を整える栄養素(ビタミン・ミネラル)
主にビタミンとミネラルがあり、ビタミンは水溶性と脂溶性のビタミンに分けられます。
水溶性ビタミン
水に溶けやすい性質を持つビタミンには、ビタミンB群(B1、B2、葉酸等8種類)とビタミンCがあります。
ビタミンB1とビタミンB2は糖質や脂質をエネルギーに変える働きがあります。ビタミンB6はたんぱく質の分解や合成に関わり、ビタミンB12は葉酸とともに赤血球の形成を助けます。
葉酸もビタミンB群のひとつです。DNAの合成をサポートする働きがあり、細胞分裂が盛んに行われている胎児には特に重要な栄養素です。
ビタミンCは抗酸化作用により、細胞の老化や動脈硬化、免疫機能の低下などの原因となる体の酸化を防ぐ働きがあります。
脂溶性ビタミン
脂質に溶けやすい性質を持つビタミンには、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類があります。ビタミンAとビタミンEは、水溶性のビタミンCとともに「ビタミンACE(エース)」と呼ばれており、いずれも強い抗酸化作用を持っています。
ビタミンDはカルシウムと深く関わる栄養素です。小腸でのカルシウムの吸収を促したり、カルシウムが骨に定着するのを助けたりする働きがあります。ビタミンKも、カルシウムが骨に取り込まれるのをサポートするほか、血液の凝固にも関わっています。
ナトリウム
細胞外液に多く存在し、カリウムと協力して細胞内の水分量や浸透圧(※)、酸性・アルカリ性のバランスを調整します。長期的に摂りすぎると、血液中のナトリウム濃度が高くなり、濃度を調整するために血液中の水分量が増え、むくみや高血圧につながる恐れがあります。
※浸透圧…濃度の違いによって水分が移動するときに生じる圧力
カリウム
細胞内液に多く含まれ、ナトリウムと相互に関わりながら、細胞内の水分量や浸透圧、酸性・アルカリ性のバランスを一定に保っています。その結果、摂りすぎたナトリウムを尿として排泄させる作用もあります。
カルシウム
体内に最も多く含まれるミネラルで、その約99%が骨や歯に存在しています。残りは血液や細胞に含まれ、心臓の拍動や筋肉の収縮・弛緩、血液の凝固など、幅広い機能を支えています。
マグネシウム
カルシウムとともに骨を構成しています。また、300種類以上の酵素反応に関わることで、エネルギー産生や体温調整、神経伝達、ホルモンの分泌などをサポートします。
鉄
赤血球の赤い色素成分であるヘモグロビンの材料となるミネラルです。ヘモグロビンは、呼吸で取り込んだ酸素を全身の細胞へ運び、細胞から二酸化炭素を受け取ります。食品中には、たんぱく質と結合したヘム鉄、またはたんぱく質と結合していない非ヘム鉄の形で含まれています。
亜鉛
体の成長に欠かせないミネラルで、細胞分裂やたんぱく質の合成、ホルモンの分泌などの働きを支えています。舌の表面にある、味を感じとる器官「味蕾(みらい)」の細胞分裂にも関わるため、亜鉛が不足すると味覚に影響が出ることがあります。
日本人が不足しがちな栄養素は?栄養素を効率的に補う方法
日本人はビタミンDやカルシウムが不足しやすい傾向があり、さらに月経のある女性は鉄も意識して摂る必要があります。
不足しがちな栄養素「ビタミンD」を効率よく摂る方法
ビタミンDは日光を浴びることで、体内でも合成されます。しかし近年は、屋内中心の生活による日光浴の減少、日焼け止めの使用、食生活の変化などの理由から、ビタミンDが十分に合成されづらい状況になりつつあります。
ビタミンDは、鮭やイワシ、カレイ、サンマなどの魚類に多く含まれています。屋内で過ごす時間が長い方や肉中心の食事が多い方はビタミンDが不足しやすいため、魚を取り入れるように意識しましょう。週に4回以上、積極的にとれるとベストです。
ビタミンDは、まいたけやエリンギ、えのきだけなどのきのこにも比較的多く含まれています。
不足しがちな栄養素「カルシウム」を効率良く摂る方法
日本人は欧米人に比べて乳製品の摂取量が少ないため、カルシウムが不足しやすいとされています。まずは「カルシウム自己チェック表」で、自身の摂取状況を確認しましょう。
カルシウム自己チェック表結果の見方
A:20点以上 良い
1日に必要な800mg以上摂れています。このままバランスのとれた食事を続けましょう。
B:16〜19点 少し足らない
1日に必要な800mgに少し足りません。20点になるようもう少しカルシウムを摂りましょう。
C:11〜15点 足らない
1日600mgしか摂れていません。このままでは骨がもろくなっていきます。あと5〜10点増やして20点になるよう、毎日の食事を工夫しましょう。
D:8〜10点 かなり足らない
必要な量の半分以下しか摂れていません。カルシウムの多い食品をいまの2倍摂るように頑張りましょう。
E:0〜7点 全く足らない
カルシウムがほとんど摂れていません。このままでは骨が折れやすくなってとても危険です。食事をきちんと見直しましょう。
出典:石井光一, 上西一弘, オステオポローシスジャパン 13(2),497-502,2005
不足しているカルシウムを補うためには、このチェック表で点数が低かった項目を改善するよう工夫することをおすすめします。カルシウムは牛乳や乳製品だけでなく、大豆製品、青菜、海藻、骨ごと食べられる魚などの幅広い食品に含まれています。
不足しがちな栄養素「鉄」を効率よく摂る方法
鉄が不足する主な原因は月経であるため、女性は積極的に鉄を補う必要があります。体に吸収されやすいヘム鉄(レバーや赤身肉など)だけでなく、非ヘム鉄(小松菜、ほうれん草、大豆製品、玄米など)もビタミンCを一緒に摂ることで吸収率を高められます。ビタミンCは果物だけでなく、野菜やいも類にも含まれています。
ライフステージ別・食生活のアドバイス
若年成人期(20〜30代)
仕事や生活環境の変化で生活リズムが崩れやすい時期ですが、3食きちんと食べることが大切です。朝食を抜くと、体のリズムが乱れやすくなるほか、筋肉量の維持の面でも影響があります。
筋肉のもととなるたんぱく質は、一食でまとめて摂るよりも、朝食・昼食・夕食で均等に摂る方が筋肉量を維持できるという研究報告があります。
また、20〜30代は主菜が肉中心になりやすく、肉の脂身に含まれる飽和脂肪酸を摂りすぎる傾向があります。主菜に魚類や大豆製品なども取り入れ、食物繊維も摂取することで生活習慣病の予防が期待できます。
中年期(40〜64歳)
中年期になると、若いころと同じ食事内容でも、基礎代謝の低下に伴い体脂肪がつきやすくなります。
とくに主菜が肉中心になると、脂質の摂りすぎから肥満を招きやすくなります。魚類や大豆製品を取り入れ、副菜は主菜の倍量程度を目安に、食物繊維をたっぷり摂ることを心がけてください。
脂質の摂りすぎを防ぐには、油を使った料理(揚げ物、ドレッシング、バターなど)は1食につき1品程度までに抑えるのが理想的です。たとえば、朝食でトーストにバターを塗り、オムレツとドレッシングをかけたサラダを食べると、1日分の目安量を超えてしまいます。蒸し料理や煮物など、油を使わない料理を組み合わせてみましょう。
また、女性にとって40〜50代は更年期と重なり、体に不調が現れやすい時期です。栄養バランスのよい食事と十分な睡眠を心がけ、体を労りましょう。
高齢期(65歳以降)
高齢期の食事では、肉や魚、卵、大豆製品、野菜、海藻、果物など、さまざまな食品を組み合わせて食べることが大切です。研究では、食事に多様な食品を取り入れる人ほど筋肉量が多く、握力や歩行速度などの身体機能も高く維持できる傾向にあることが報告されています。
毎日の献立を考える際に参考にしたいのが、「さあにぎやかにいただく」です。この言葉は、身体機能と関係の深い、10種類の食品群の頭文字を並べたもの。1日の食事のなかに、できるだけ、これらをバランスよく取り入れてみましょう。
出典:東京都長寿医療センター研究所
妊娠期
妊娠期は、葉酸・鉄分・カルシウムの栄養素を積極的に補いましょう。妊娠中、特に妊娠初期は、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる「神経管」がつくられる大切な時期です。妊娠を計画している女性は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを下げるためにも葉酸を意識して摂りましょう。
また、妊娠期は血液量が増えるため、赤血球が十分に作られなければ血液が薄まり、貧血になることがあります。貧血の予防には、鉄とあわせて赤血球の材料となるたんぱく質を摂ることが大切です。
さらに、妊娠中は胎児の体を形成するために、カルシウムの吸収率も増加しますが、普段から十分とっていない人は必要量を満たせません。積極的に摂取して、胎児の健やかな成長をサポートしましょう。
編集部メンバーのある日のごはん、栄養バランスは?
今回は、HELiCO編集部メンバーの“ある日のごはん”をもとに、大まかに見て栄養が足りていそうかを新出さんにチェックしていただきました。栄養バランスのよくあるお悩みと改善のヒントをご紹介します。
編集部員・Aさんの食事の特徴と悩み
- 忙しいときは外食や惣菜、コンビニを利用することが多い
- 野菜、特に緑黄色野菜をもっと取るべきか気になっている
- 野菜をどのように食事へ取り入れればよいか悩んでいる
- たんぱく質を意識して摂っているが、量が十分なのかわからない