完璧でなくていい。忙しい日々を整える簡単朝ごはん

完璧でなくていい。忙しい日々を整える簡単朝ごはん

新入学、就職、異動など、春は生活環境が大きく変化する季節です。慣れない環境での緊張や忙しさから生活リズムが乱れ、朝ごはんを抜いてしまう日もあるでしょう。しかし朝ごはんには、体と内臓の働きを整え、新生活の不調を防ぐという大切な役割があります。

本記事では、食欲がない朝や忙しい日でも無理なく始められる、現実的な朝ごはんの整え方を、時間栄養学の専門家・永井成美先生に伺いました。

完璧な食事である必要はありません。できることから少しずつ、始めてみましょう。

教えてくれるのは…
永井 成美先生
永井 成美先生
兵庫県立大学教授・管理栄養士

2004年京都大学大学院人間・環境学研究科修了。岡山県立大学保健福祉学部を経て、2013年より兵庫県立大学環境人間学部に勤務。専門は栄養生理学、栄養教育。日本時間栄養学会副会長、日本栄養改善学会・日本肥満学会評議員などを務める。体内時計と食の関わりを探求する時間栄養学研究の成果を、さまざまなメディアで発信している。
 
[監修者] 永井 成美先生:https://www.u-hyogo.ac.jp/shse/narumi/index.html
兵庫県立大学 環境人間学部・研究科HP:https://www.u-hyogo.ac.jp/shse/

朝ごはんは、内臓の体内時計をリセットする“スイッチ”

私たちの体には、約24時間のリズムで働く体内時計があります。

この体内時計は、脳だけでなく胃や腸などの消化器にも存在し、食事のタイミングに合わせて動く準備をしています。空腹時にお腹が「グー」と鳴るのも、次の食事に備えて胃腸が動き始めているサインです。

朝ごはんは、夜の長い絶食状態のあとに摂る最初の食事です。起床後に太陽の光を浴びて、朝ごはんを摂ることで体内時計がリセットされ、胃腸がよく働き、栄養素の吸収や代謝も活発になります。体温も上昇し、脳や筋肉も活動しやすい状態になります。

このように、朝ごはんは、体を活動モードに切り替えるための重要な“スイッチ”の役割を担っているのです。

体内時計のスイッチが入る仕組み
永井先生
永井先生

睡眠中に休んでいた消化器が、朝ごはんをきっかけに再始動する、体温も上がる。さらに、朝の通勤・通学や散歩で、筋肉にある体内時計のスイッチが入り、脳も動き出す。
 
こうした朝の決まった習慣の繰り返しにより、体調時計が整い、体調良く過ごすことができるようになります。午前中に集中して勉強や仕事に取り組むためにも、毎日朝ごはんを食べる習慣が大切です。

新生活のストレスや環境の変化が、朝の食欲に影響する理由

体内時計をリセットするために大切な朝ごはん。しかし、慣れない環境での緊張や忙しさが続くと、睡眠時間が不規則になったり、朝の準備に追われたりして、朝ごはんを抜いてしまうこともあるかもしれません。

また、環境の変化によるストレスや生活リズムの乱れは、自律神経のバランスにも影響を与えます。

自律神経は、消化器の働きとも密接に関係しており、特に胃はストレスの影響を受けやすい臓器です。緊張や不安があると、胃の動きが低下し、食欲がわきにくくなることがあります。試験など大事な予定のある日に食欲が落ちることがあるのも、このためです。

また、睡眠時間の乱れや夜遅い食事も、消化器のリズムに影響します。新生活の影響によって、朝の食欲が落ちることは珍しいことではありません。

朝ごはんを食べない日が続くと、食欲そのものが低下することがある

朝ごはんを抜くことによる健康への影響についても知っておきましょう。

体内時計のリセットのほかに、「食べたものをしっかり消化して体をつくる」ことも、朝ごはんの大事な役割です。しかし、朝ごはんを食べない状態が続くと、体は「食べなくても平気」と感じるようになることがあります。これは体が慣れたのではなく、じつは消化器の働きが低下している状態です。

永井先生
永井先生

朝食をしっかり食べる習慣のある大学生に、実験的に1週間、朝食を抜いてもらったところ(※)、朝食前の空腹の感じ方や胃の動きが弱まることが確認されました。消化器は、次の食事のタイミングに合わせて動きを調整するので、朝食を食べない状態が続くと準備活動が弱まり、食欲も感じにくくなるのです。
 
朝ごはんを食べなくなり、一度低下した食欲はすぐには回復しないこともわかっています。少量でも朝ごはんを摂ることが大切です。

※出典:脇坂しおり, 小橋理代, 菱川美由紀, 山本百希奈, 池田雅子, 坂根直樹, 松永哲郎, 森谷敏夫, 永井成美. 胃電図を指標とした朝食欠食と朝の胃運動の関連の検討. 日本栄養・食糧学会誌62(6):297-304,2009

食べられない朝は、飲み物から始めてもいい

食欲がない、忙しくて食べられないときの朝ごはん。どんな工夫をすれば食べられるようになるのでしょう?

永井先生
永井先生

朝起きてすぐは、胃の働きがまだ十分ではないことがあります。そのような場合は、まず、飲み物を口にすることから始めてみませんか? 水、炭酸水、柑橘系の果汁飲料といった冷たい飲み物、ホットミルクやスープなどの温かい飲み物のどちらでも構いません。胃が刺激され、食欲が起きやすくなります。

食欲を感じたら、次にヨーグルトやバナナ、パンやおにぎりなど、口にしやすいものを少量から食べる習慣をつけて行きましょう。毎日繰り返すことで、食べられる量が増え、朝ごはんが習慣化していきます。

朝、食欲がないときにおすすめの便利な食材:
バナナ、みかん、柔らかいパン、カステラ、ヨーグルト、果汁ゼリー、おにぎり、冷凍焼きおにぎりなど

朝ごはんにおすすめの食べ物
永井先生
永井先生

先ほどの大学生とは別の研究(※1)で、寮に住む高校生を対象に、ビュッフェ方式の食堂でバランスよく朝食を整える食育をしたことがあります。最初は胃の動きが良くなかった生徒が、2週間後には食べられる品数が増え、胃の動きも良くなるという結果でした。
 
この研究によって、食欲不振や胃の動きの回復には、2週間くらいはかかりそうだということがわかりました。朝食抜きの習慣を戻すには少し時間はかかりますが、放っておかずに、再びおいしく食べられるまで習慣づけていくことが大事です。
 
興味深いのは、冷たい飲み物で胃の動きは活発になるという事実です。食欲がない日は、食前にコップ一杯の水を飲むことでも食欲がわきやすくなります(※2)。試してみてください。

※1出典:Wakisaka S, Yumen Y, Takayama Y, Yoshitani K, Okuzono M, Iwami A, Nagai N. The effects of nutrition education for breakfast intake on morning gastric motility in high school students living in dormitories. J Nutr Sci Vitaminol 71:277-282, 2025
※2出典:脇坂しおり,永井 元,村 絵美,森谷敏夫,永井成美.摂取する水の温度と量がヒトの胃運動に及ぼす影響.日本栄養・食糧学会誌64(1):19-25,2011

もっと簡単においしく!忙しい日の現実的な朝ごはん提案

忙しい日の朝ごはんは、必ずしも理想的な内容である必要はありません。

まずは簡単に食べられるものを取り入れるだけでも、十分意味があります。大切なのは、完璧な食事を目指すことではなく、「朝に何かを食べる習慣を続けること」です。少量でも、体はきちんと反応します。

Q:簡単でおいしい朝ごはんの準備のコツは?

A. 夜のうちに準備をしておくのがコツ

永井先生
永井先生

そのまま食べられる、もしくは温めるだけで食べられるものをあらかじめ下ごしらえしておくと、時間がない朝も簡単においしく食べられます。前日までの準備が8割、当日の手間が2割で食べられる献立がおすすめです。

おすすめの準備

  • 具沢山のまぜご飯のおにぎりを冷凍しておく
  • ごはんも1回使用分ずつ冷凍しておく
  • 卵焼きや鮭、鶏肉を焼いたものなどの作りたてを冷凍しておく
  • 味噌玉(味噌+顆粒だし+具材を混ぜてラップで包んだ、自家製「即席味噌汁の素」)を冷凍しておく
  • ピザトーストを冷凍してストックしておく

常備食材を使ったおすすめの簡単アレンジ

  • 冷凍パスタ(冷凍野菜、溶き卵を加えてレンジへ。栄養価がUP)
  • グラノーラにヨーグルトとバナナをON(バナナは輪切りにして冷凍しておいても)
  • 耐熱容器に味噌汁とごはんを入れ、冷凍ネギ、鮭フレーク、溶けるスライスチーズを乗せてレンジへ

Q:子どもが朝ごはんを食べない場合の対処法は‎?

A.「これなら食べられる」食品を見つける&無理には食べさせない

永井先生
永井先生

子どもにもそれぞれ好きな食べ物があると思いますので、「これなら食べられる」という食品を見つけて、朝ごはんの習慣づくりのきっかけにしましょう。固形物でなく、汁物から徐々に品目を増やしていくのでもいいでしょう。
 
また、起きてすぐは、胃は十分に動いていません。起きたら先に身支度をするようにしたり、朝は早めに起きる習慣をつけたりして、ある程度活動時間を空けてから食事を摂ると、空腹感を感じやすくなり、食事も進みやすくなります。
 
ストレスは食欲を減退させてしまいますから、食事中は急かしたり叱ったりしないことも重要です。夜更かしが原因で、朝に食欲がわかないお子さんも増えているようです。生活リズムにも気を配ってあげましょう。
 
成長期には生理的な食欲不振もあるので、たくさん食べられなくてもよしとしましょう。子どもの場合、思春期以降に体が成長する過程で、食事の量も増えていきますから、「小食だからもっと食べさせなくては」などと気にしすぎないことも大切です。

Q:栄養バランスも大事にしたいときのポイントは?

A.炭水化物とタンパク質を優先しつつ、4種類の栄養群を意識すると◎

永井先生
永井先生

体内時計のスイッチを入れるには、まずは「炭水化物を含む主食」と「タンパク質含むおかず」を摂ることが大切です。

そのうえで下記4種類の栄養群を意識できるとベストですが、いきなり全部揃えるのが難しい場合は、ひとつずつ、食べられるものから増やしていきましょう。

朝ごはんに積極的に摂りたい栄養素

  • 主食(炭水化物)・おかず(タンパク質)

内臓の体内時計に関わる栄養素

  • 野菜・果物(ビタミン)・乳製品または豆乳(ミネラル)

心身のメンテナンスに関わる栄養素

完璧でなくていい。朝ごはんで元気をチャージ

新生活は慣れない環境で、神経が張り詰め疲れてしまうことも。だからこそ、少しずつでもできることから始めて、元気に過ごしたいですね。ちょっと元気がないなというときこそ、朝ごはんを工夫してみると、生活リズムが整い、忙しい中でも毎日を快適に過ごしていけるかもしれません。新生活を健やかに過ごすために、「完璧でなくてもいい朝ごはん」から、無理なく始めてみましょう。

CREDIT
取材・文:及川夕子 編集:HELiCO編集部+ノオト イラスト:中島ミドリ

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