いますぐ出したいのに、なかなか出てくれない硬くなった便。仕事中や外出先など、タイミングを選ばずやってくる不快感や痛みに悩まされている方も多いはず。そこで本記事では、硬くなった便をスムーズに出すために、すぐにできる対処法や、便秘予防のために日常生活でできる予防法について解説します。
- 教えてくれるのは…
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- 鳥居 明先生
- 鳥居内科クリニック 院長、日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医など
米国のノースカロライナ大学への留学や東京慈恵会医科大学の助教授などを経て、大学病院勤務の経験を生かして鳥居内科クリニックを開設。患者さんの立場に立った分かりやすい説明や体に優しい検査、治療を心がけている。
[監修者]鳥居 明先生:https://www.torii-naika.com/aisatsu.html
鳥居内科クリニック:https://www.torii-naika.com/index.html
便秘の種類と便が硬くなる原因は?
便秘にはいくつかの種類がありますが、最も多いのは「機能性便秘」です。
これは腸に器質的な異常(炎症や腫瘍など目に見える形での異常)がないにも関わらず、生活習慣やストレスなどで腸の働きが低下するものです。
機能性便秘
腸に病気や構造の異常はないけれど、排便がスムーズにできないのが特徴です。原因としては以下が挙げられます。
- 水分不足や食物繊維不足
- 運動不足
- ストレスによる自律神経の乱れ
- 腸の動きが鈍くなり、便が長時間腸内にとどまることで水分が抜け、硬くなる
その他の便秘の種類
- 器質性便秘:腸に腫瘍や癒着など物理的な障害がある場合に、便が通りにくく、停滞して硬くなる
- 症候性便秘:認知症、パーキンソン病、糖尿病、甲状腺機能低下などの病気が原因となりえる
- 薬剤性便秘:オピオイドや抗ヒスタミン薬などの服用が原因となりえる
- 妊婦・高齢者特有の便秘:ホルモン分泌量の変化による腸の動きの低下や筋力低下で排便が難しくなる
便が硬くなる原因は?
便が硬くなる原因には、主に以下の3つが考えられます。
- 水分不足
- 気温の低下や寒暖差
- 腸の動きが悪い
冬は水分摂取量が減りやすく、便秘に要注意の季節といえます。また、寒暖差や冷えは自律神経の乱れを招くため、交感神経が優位になりやすく、腸の働きが鈍くなることもあります。
便秘を放置するとどうなる?
「たかが便秘」と思う方もいるかもしれませんが、じつは便秘によってさまざまな病気のリスクが上がったり、QOL(生活の質)が低下したりすることがわかっています。
これは、便秘で腸内に溜まった硬くなった便を出そうといきむことで、血圧が上がるなど循環器系に影響を及ぼすためです。加えて、便秘が認知症の発症リスクを上げることもわかっています。これに関して詳しい原因はまだわかっていませんが、腸内細菌が関係している可能性があるといわれています。
また、便が腸内に溜まることで腸閉塞を引き起こす場合も。硬くなった便が腸内に長期間とどまることで、結果的に潰瘍ができたり、大腸の壁に穴が空いてしまったりすることもあります。
トイレでできる! 硬くなった便を出しやすくする方法
排便しやすい姿勢は、「考える人」のポーズ
排便時の姿勢として望ましいのは、ロダンの彫刻「考える人」のポーズです。背筋を伸ばした状態で肘を太ももに置いて前かがみになり、かかとを上げる、もしくは足台などを使って膝を腰より高い位置にします。
すると、いきみやすくなるのに加え、直腸と肛門の位置がまっすぐになるため、排便がスムーズになります。「便が出かかっているのに出ない」「もう少しで出そう」というときは、トイレでこの姿勢をとってみましょう。
はやく便秘を改善したい! いますぐ家でできる対処法とは?
対処法1:腹部マッサージ
腹部のマッサージも簡単にできる対処法のひとつです。大腸の形を意識して、「の」の字を書くように行うのがポイントです。
右手側のお腹の上部と左手側のお腹の上部・下部の大腸のカーブはガスがたまりやすいので、重点的に押しましょう。両手で優しく、痛みが出ない程度にゆっくりグーっと押し込むようにマッサージします。
対処法2:入浴・腹部を温める
体が冷えると腸の動きが鈍くなります。腸を活発にするには、入浴で体を温めることが効果的です。ただし、お風呂のお湯が熱すぎると、交感神経が優位になり逆効果なので注意しましょう。湯たんぽなどでお腹を温めるのもおすすめです。
便秘を根本から改善するには? 便を柔らかくする食べ物や生活習慣
便秘改善のための習慣1:こまめに飲み物を飲んで水分補給をする
水分摂取量が少なかったり、便が長時間大腸にとどまったりすると、便が硬くなって腸内で動きにくくなり、便秘を引き起こします。そのため、便秘の予防や改善には適度な量の水分摂取が欠かせません。
1日1.5L~2L程度を目安に、「喉が渇いた」と感じる前にこまめに水分補給をしましょう。
便秘改善のための習慣2:繊維質と適度な油分を摂る
日頃の食生活への配慮も、慢性的な便秘の改善には欠かせません。食物繊維は、不溶性と水溶性に分けられ、これらをバランスよく摂ることが大切です。
水溶性食物繊維
- 多く含まれる食べ物:海藻(わかめや昆布)、果物(キウイ、りんご)など
- 特徴:便を柔らかくする働きがあるため、硬くなった便に有効
不溶性食物繊維
- 多く含まれる食べ物:玄米やさつまいもなど
- 特徴:便を排出しようとする腸の動きを促す一方、食べ過ぎるとガスでお腹が張ってしまうこともある。過剰に食べないよう注意
また、油分は排便時の潤滑油の役割を果たすため、適度に摂ることが望ましいです。カロリー制限をしていると、油分の摂取量が少なくなりがちですが、極端な制限は便秘を招く可能性があります。
便秘改善のための習慣3:乳酸菌・ビフィズス菌などを意識して摂る
乳酸菌やビフィズス菌の摂取によって腸内で善玉菌が増加し腸内環境が整うと、便秘の改善が期待できます。積極的に食事に取り入れるようにしましょう。
乳酸菌を含む主な食品
- 味噌
- ヨーグルト、ナチュラルチーズ
- 乳酸菌が含まれるキムチや漬物
ビフィズス菌を含む主な食品
- ビフィズス菌入りのヨーグルト
また、これらは食物繊維を一緒に摂ることで乳酸菌やビフィズス菌が増えやすくなります。
便秘改善のための習慣4:適度な運動と規則正しい生活
運動で腸が刺激されると、便を体外に排出させる働きが生じます。ただし、競技スポーツのようにハードに体を動かすと、交感神経が優位になってしまうため、散歩や体をひねる動きを取り入れるなどの適度な運動が有効です。
また、夜ふかしや不規則な生活は自律神経の乱れにつながり、腸の動きが鈍くなるため、できるだけ規則正しい生活を送るように心がけましょう。
便秘改善のための習慣5:朝食を食べ、排便習慣をつける
人間には、胃結腸反射といわれるものがあり、胃に食べ物が入ると大腸が動き、直腸に便が押し出されます。胃結腸反射は、空っぽの胃に食べ物が入ったときに活発に起こるため、朝食とその後の排便習慣をつけることで便秘になりにくくなるのです。
忙しくて、あるいは食欲がなくて朝食をとらない方は、少しずつでもよいので朝食を食べる習慣をつけるのがおすすめです。
便秘改善のための習慣6:座りっぱなしに気をつける
座りっぱなしでいると、全身の血行が悪くなり、腸の働きが低下します。また長期間、座り姿勢が多い生活を送っていると腹筋の力が弱まり、うまくいきめなくなってしまうことも。1時間に1度は立ち上がり、体をひねる運動などを取り入れてみてください。
注意点と医療機関への相談が必要なケース
高血圧の方はいきみすぎないよう注意
無理にいきむことで、どうしても血圧が上がってしまいます。急激な血圧上昇は心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。そのため、特に高血圧の方は、生活習慣の改善や薬の活用でスムーズに便を出せるようにしておくことが望ましいです。
強い痛みを伴う場合は医療機関に相談を
硬くなった便が長らく出ずに、強い腹痛が襲ってきた場合、あるいは排便時に強い痛みを伴う場合は医療機関を受診してください。
便秘外来でよく見られる症例と対処法
よく見られる症例1:若年女性
若年女性は、女性ホルモンの影響で便秘になりやすいです。生理開始前に分泌が増えるプロゲステロンというホルモンは、腸の動きを鈍くする働きがあります。便が体内に長くとどまるうちに水分量が減り、硬くなった便が便秘を引き起こします。
生理前のタイミングでは、いつもよりも意識的に水分を摂るように心がけましょう。また、生理前には体がだるくなるという方もいるかと思いますが、散歩などを取り入れることで体の不調を緩和させたり、腸の動きを活発にしたりすることが期待できます。
よく見られる症例2:高齢男性
男性は70歳を過ぎたころ、便秘に悩むことが増えていきます。これは、食事量の減少や服用薬の影響、筋力の低下、姿勢など、さまざまな理由が組み合わさって起こります。これまで便秘に悩んだ経験がなく、対処法がわからないというのも、原因のひとつです。
無理に食事量を増やす必要はありませんが、朝食をきちんと食べ、散歩などで適度に体を動かすことを心がけましょう。また、ストレスによる自律神経の乱れも便秘の原因となるため、ストレス発散のための趣味などを見つけるのもおすすめです。
硬い便(便秘)に困ったときのよくある質問
Q.子どもや高齢者が便秘で困っている場合、どう対応すればいいですか?
A. 幼児期の子供は遊びに夢中で水分補給を忘れることがあり、高齢者は喉の渇きを感じにくい場合があります。水分不足は便秘の原因になるので、周囲の人が積極的に水分摂取を勧めてあげるようにしましょう。
また、薬を使う場合、直接大腸を刺激してぜん動運動を促す「刺激性の下剤」は痛みを伴うので、使用しないことが望ましいです。まずは水分摂取や非刺激性の下剤(酸化マグネシウム)で、硬くなった便を柔らかくすることを優先しましょう。
Q.便秘にならないための予防法はありますか?
A. 大切なのは便が硬くならないよう適度な水分摂取をすること、運動量や食事に気をつけることです。ストレスで交感神経が優位になることも便秘の原因となるため、できるだけリラックスできる時間をつくりながら日々を過ごすようにしましょう。
便が硬くなる前に排便できる状態を目指そう
硬くなった便を出す方法などをお伝えしてきましたが、最も大切なのは、便が硬くなる前に排泄できるようになることです。生活習慣の見直しを行ったり、排便習慣をつけたりすることで、毎日快便の状態を目指していきましょう。