声が枯れてしまって思うように出ない……といった経験はありませんか? 大切な会話や電話、会議など、たくさん話さなくてはいけない場面で思うように声が出ないと、不安やもどかしさを感じることもありますよね。本記事では、声枯れを改善するためのツボを、声枯れの原因ごとにご紹介します。空気が乾燥しがちな季節、喉に違和感があるときや声枯れをすぐに治したいとき、緊張でうまく声が出ないときなどに、手軽にできるセルフケアとして実践してみてください。
- 教えてくれるのは…
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- 松浦 悠人先生
- 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 助教
東京有明医療大学卒業、同大学院を修了し博士(鍼灸学)を取得。埼玉医科大学東洋医学科 非常勤職員、東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 助手を経て2021年4月より現職。北海道大学遺伝子病制御研究所 分子神経免疫学分野 客員研究員。はり師・きゅう師、全日本鍼灸学会認定鍼灸師・指導鍼灸師。専門は、精神科における鍼治療の応用、特にうつ病や双極性障害うつ状態における鍼治療。
[監修者]松浦悠人先生:https://www.tau.ac.jp/department/healthsciences/acupuncture/teachingstaff-s/
東京有明医療大学:https://www.tau.ac.jp/
乾燥による声枯れを治したいときのツボ
秋から冬にかけては空気も乾燥し、声枯れや喉の痛みが生じることがあります。乾燥で声がうまく出ないのかも……と思ったときには、ここで紹介するツボを押してみてください。声枯れや喉の痛みが生じる前にツボ押しをするのもおすすめです。
腕のツボ:列欠(れっけつ)
列欠(れっけつ)は、親指側の手首から指2本分ほど肘側にたどった場所にあります。親指を当て、垂直に押しましょう。
顔のツボ:頬車(きょうしゃ)
頬車(きょうしゃ)は、エラの前上方にあり、奥歯を噛みしめると筋肉が盛り上がるところです。人差し指の腹を使って押しましょう。唾液の分泌を促すことで、乾燥による声枯れに役立ちます。
喉の炎症による声枯れを治したいときのツボ
風邪などで喉に炎症が起きてしまったとき、喉の痛みだけでなく、声枯れが生じてしまうこともあります。そのような場合に効果が期待できるツボをご紹介します。
手のツボ:魚際(ぎょさい)
魚際(ぎょさい)は、親指のつけ根のぷにぷにとしたふくらみと骨のちょうど境目にあるツボです。親指の腹で優しく押しましょう。
緊張・ストレスによる声枯れを治したいときのツボ
緊張などにより喉や胸が詰まったような感覚になると、声を出しにくくなることがあります。そうした緊張による声枯れに対して、効果が期待できるツボをご紹介します。
首のツボ:天突(てんとつ)
天突(てんとつ)は左右の鎖骨の真ん中、くぼみのところにあるツボです。天突は喉に対して垂直に押すと苦しくなってしまうので、くぼみに人差し指を当て、下方向に押すのが望ましいです。
加齢による声枯れを治したいときのツボ
加齢によって声枯れが起こるケースもあるでしょう。東洋医学では、年を重ねるにつれて体を潤す成分が減っていくと考えられており、それにより声がしゃがれていったり、肌が乾燥したり、便秘になりやすくなったりします。
足のツボ:太渓(たいけい)
内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみにあるのが太渓(たいけい)のツボです。親指で押しましょう。
太渓は声枯れそのものにダイレクトに効果があるというよりは、加齢によって失われた全身の潤いを取り戻すためのツボといえます。
原因不明や複合的な原因による声枯れに効くツボ
声枯れや喉の痛みが生じているものの、原因がわからない、あるいはいくつかの要因が重なっているケースは少なくありません。そんなときには、以下で紹介するツボ押しを試してみてください。
手のツボ:合谷(ごうこく)
手の甲の親指と人差し指の骨が合流する部分から人差し指側に沿ってあがり、骨の中央にあるのが、合谷(ごうこく)と呼ばれるツボです。親指の腹で押しましょう。
合谷は、首から上に現れる症状全般に対して効果が期待できる、オールラウンダーなツボといえます。そのため、喉の痛みや声枯れを治したい場合にもぴったりです。
ツボの効果的な押し方と注意点
押し方
ツボの位置によって押しやすい指が変わりますが、基本的には、どのツボも同じような押し方をします。体の真ん中にあるツボ以外は左右同じようにツボを刺激してあげるのがベストです。
① ツボに対して指を垂直に、ゆっくりと3〜5秒かけて押す
② 3秒程度、押した状態をキープする
③ 3〜5秒かけてゆっくりと離す
④ 3〜5秒ほど休む
⑤ ①〜④の流れを3〜5回繰り返す
注意点
指先だけでなく、腕の力全体を加えるようにしてじんわりと押すようにしましょう。強く押しすぎたり、長時間押し続けたりするのは避けてください。また、以下のような場合は、ツボ押しを控えるようにしてください。
・急性の病気が疑われる症状がある
・発熱している
・出血性の病気がある
・皮膚に異変がある
・怪我が治癒していない
・炎症が起こっている部位がある
・飲酒しているときやその直後、空腹時や満腹時
そのほか、強い痛みを感じた場合などは、すぐに中止するようにしましょう。
ツボ押しで本当に声枯れが改善されるの?
東洋医学では、「声(発声)」には肺が関係するといわれています。肺は、体に悪影響を及ぼす外部からの要因のうち、「燥(乾燥)」に特に弱く、乾燥で肺の潤いが損なわれ、声枯れにつながると考えられています。
では、ツボ押しは、どのようなメカニズムで声枯れに効果的とされるのでしょうか。声枯れはさまざまな要因で起こり得るため、それぞれの原因に合わせた考え方があります。
乾燥タイプ:ツボ押しによって潤いをもたらす
肺に関わるツボを押すことで、五臓における肺(内臓の肺のほか、気管支や呼吸機能も含む概念)に潤いがもたらされ、声枯れの改善につながります。
一方で唾液腺に関係するツボ押しで唾液が分泌されると、物理的かつ直接的に口のなかや喉が湿ります。これもまた乾燥による声枯れに効果的です。
炎症タイプ:ツボ押しによってこもった熱を取り除く
風邪などで喉に炎症が起きると、その部分には熱がこもります。熱を取り除くツボを押すことで、症状を和らげることが期待できます。
声の出しすぎ:ツボ押しで消耗した「気」を回復する
声の出しすぎは、東洋医学では「気(生命を維持するための体内エネルギー)」の使いすぎによって肺気虚(はいききょ:肺の「気」が不足した状態)になっているとされます。そのため、肺の力を回復させるツボ押しがよいと考えられます。
不安・緊張:ツボ押しによって「気の滞り」を改善する
不安や緊張などの精神的なストレス、疲労などによって気の巡りが滞ると、梅核気(ばいかくき:実際に喉には何もないにも関わらず、喉に梅の種が詰まったような違和感がある状態)やヒステリー球(医学的異常は見つからないのに喉に何か詰まっているように感じる状態)になります。それにより声が出しにくくなることも。ツボ押しによって気の巡りを良くすることで、声を出しやすくなります。
「声枯れに有効なツボ」に関するよくある質問
どれくらいの時間で効果が出る?
物理的に最も早くアプローチできる声枯れ対策のツボ押しは、頬車(きょうしゃ)による唾液の分泌です。
一方で、そのほかのツボ押しは、あくまでも「体が治そうとする力を助ける」ものといえます。そのため、日頃から声枯れ予防のためにツボ押しをする、あるいは、声枯れの予兆や喉の痛みを感じた時点で押すのが望ましいです。
初心者におすすめのツボはどこ?
おすすめのツボは、合谷(ごうこく)と頬車です。
合谷はツボの位置が見つけやすく、声枯れ以外にも呼吸器や喉の症状全般的に効果が見込めるため、「声枯れや喉の痛み、違和感が生じたら最初に押すツボ」と思っておくとよいでしょう。また、頬車もすぐにできるツボ押しとして覚えておくと便利です。
ツボ押し以外で声枯れを和らげる対策と予防法はある?
加湿
やはり声枯れや喉の痛みを治したい場合、あるいは予防する場合に気をつけたいのが加湿です。こまめに飲み物を飲むのはもちろん、加湿器で乾燥を緩和するのがおすすめです。
旬の食べ物を食べる
東洋医学では、肺と白色の食材は関連があるといわれています。また、季節の食べ物は、その時々に応じた作用があるとされており、冬には白菜や大根など白い食べ物を食べることで、肺に潤いがもたらされると考えられています。そのほか、イモ類も体を温める作用のある食べ物なので、冬は特におすすめです。
一方、スパイスなどの刺激物(辛味)は、適量であれば気を発散・巡らせ、体を温めます。しかし辛味の過剰摂取は、逆に熱による発汗で肺の乾燥を悪化させるといわれています。そのため、声枯れを治したい際や、予防をしたい際には辛味の摂り過ぎは控えたほうがよいと考えられます。
受診を検討したほうがいい目安は?
声枯れが日に日に悪化している場合には、早めに医療機関を受診するのが望ましいです。思い当たる原因がないにもかかわらず、突然声枯れが起こった場合には、発声(声帯の動きなど)に関わる反回神経(はんかいしんけい)に異常が生じている可能性もあります。そのような場合にも受診を検討しましょう。
また、声枯れ以外に発熱などほかの症状がある場合、あるいは喉にできものができている場合などにも、医療機関を受診するのが望ましいです。
声枯れの原因に合わせてツボを押してみよう
一口に声枯れに有効なツボといっても、原因によってアプローチはさまざまです。声枯れの原因に合わせたツボ押しをすることで、より効果が期待できます。ぜひ声枯れの予防や対策として、ツボ押しを試してみてください。