私たちの体は、日々の食事から取り入れるさまざまな栄養素によって支えられています。それぞれの栄養素がどのような役割を担い、どうやって取り入れるとよいのかを知っておくと、体調を整えるうえで役立ちます。
今回は、“健康のために知っておきたい栄養素”のなかから、「亜鉛」をピックアップ。亜鉛の働きや不足したときの体の変化、効率よく摂取する方法などを解説します。
- 教えてくれるのは…
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- 新出 真理さん
- 山形県立米沢栄養大学 講師
管理栄養士、産業カウンセラー、博士(栄養学)。女子栄養大学卒業後、管理栄養士として(財)日本健康文化振興会、電設健保健診センターで栄養・運動指導等や、保健医療従事者へのカウンセリング教育に従事。筑波大学大学院修士課程健康教育学専攻修了後、開業。ヘルスサポート研究会カナン代表、健康教育コンサルタントとして栄養相談や保健医療福祉専門職の養成・卒後研修、企業・自治体の栄養関連アドバイザーなどを行う。女子栄養大学大学院博士後期課程(栄養学専攻)修了。2025年度より現職。
[監修]新出真理さん:https://www.u.yone.ac.jp/outline/faculty/shinde_mari/
山形県立米沢栄養大学:https://www.u.yone.ac.jp/
亜鉛とは?その働きと効果
亜鉛はミネラルの一種で、体内に約2gしか存在しない「微量ミネラル」に分類されます。体のなかで占める割合は少なくても、体の代謝や活力の維持において欠かせない栄養素です。
亜鉛は、酵素の働きを助ける「縁の下の力持ち」
亜鉛は、人間の生命活動に欠かすことのできない「縁の下の力持ち」といえる存在です。
主な働きは、体内でさまざまな物質を合成・分解する「酵素」が正常に機能するための部品になること。亜鉛が関わる酵素は、体内に200種類以上あります。
たとえば、食事から取り入れた肉や魚のたんぱく質は、消化によってアミノ酸に分解され、そこから人の皮膚や髪、爪などに必要なたんぱく質へとつくり変えられます。この変換を助けているのが酵素であり、亜鉛はその酵素の働きを支えています。
亜鉛が関わる酵素の主な働き
- 新しい細胞をつくる
- 体の設計図となるDNAをつくる
- 体の機能を調整するホルモンをつくり、分泌する
- 血糖値を調整するインスリンを安定して蓄え、分泌する
- 免疫機能や神経の働きを保つ
- 活性酸素を取り除いて無毒化する酵素の材料となる
このように、亜鉛は体のあらゆる場所で、重要な役割を果たしています。
亜鉛が不足するとどうなる?
亜鉛が不足すると、次のような症状が現れることがあります。
□ 味がわかりにくくなる
□ 傷が治りにくくなる
□ 口内炎ができやすくなる
□ 抜け毛が増える
□ 髪が細くなる
□ 肌荒れや湿疹が起こる
□ 疲れやすくなる
□ 感染症などにかかりやすくなる
これらの症状は、主に細胞をつくる働きが弱まるために起こります。
なかでも、亜鉛不足のサインとしてよく知られているのが、味がわかりにくくなる症状です。舌の表面には、味を感じ取る「味蕾(みらい)」という器官があります。亜鉛が不足すると味蕾の細胞分裂がうまく行われなくなり、味を感じにくくなることがあるのです。
疲れやすくなる要因のひとつにも、亜鉛不足によって筋肉の細胞がスムーズに合成されなくなることが挙げられます。体内の亜鉛の約60%は筋肉に存在しています。筋肉の材料となるたんぱく質を十分に摂っていても、亜鉛が不足していれば、筋肉の細胞はうまくつくられません。
亜鉛はどんな食材に含まれる?1日の摂取目安
亜鉛の摂取目安
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、亜鉛の1日あたりの摂取推奨量は次のように定められています。
亜鉛の1日あたりの摂取推奨量
18〜29歳 ……… 男性9.0mg、女性7.5mg
30〜64歳 ……… 男性9.5mg、女性8.0mg
65〜74歳 ……… 男性9.0mg、女性7.5mg
75歳以上 ……… 男性9.0mg、女性7.0mg
一方で、日本人の亜鉛の摂取量は、推奨量に届いていないという調査結果もあります。亜鉛は、健康を維持するために意識的に摂るべき栄養素といえるでしょう。
亜鉛を含む食材
肉や魚、卵、野菜、海藻などさまざまな食材に含まれている亜鉛。調理法によって成分が変化したり失われたりすることはないとされています。そのため、加熱の有無や調理の仕方は気にせず、食べやすい方法で食卓に取り入れるので構いません。ここでは、亜鉛を多く含む食べ物を紹介します。
1牡蠣(かき)・魚介類
あらゆる食べ物のなかで、特に亜鉛を豊富に含んでいるのが牡蠣です。100g(大きなもので5個程度)食べると14.0mgと、2日分近くの亜鉛を摂取できます。
2ご飯(特に玄米)
ご飯も、亜鉛を補ううえで重要な食べ物のひとつ。白米にも亜鉛は含まれていますが、より効率よく摂取したい場合は玄米を取り入れてみましょう。
ご飯1膳分(150g)で比べると、精白米から摂取できる亜鉛は0.9mgであるのに対し、玄米では1.2mgを摂取できます。
3納豆・枝豆
大豆製品にも亜鉛が含まれていますが、なかでも注目したいのが納豆です。調理せずにそのまま食べられるうえに、ご飯と組み合わせやすく、亜鉛を補う習慣をつけやすい食べ物といえます。納豆を1パック(40g)食べると0.8mgの亜鉛を補えます。
4種実類
ごまやカシューナッツ、アーモンドなどの種実類も亜鉛が豊富です。ごまを料理に振りかけたり、砕いたナッツをサラダに散らしたりするだけでも亜鉛を補えます。
亜鉛を効率よく摂取する方法
亜鉛は、いつもの食事を少し工夫するだけで無理なく補えます。ここでは、日々の食事のなかで、亜鉛を効率よく摂取する方法を紹介します。
主食をしっかり食べる
主食を抜いたり、過度に減らしたりせず、まずは適量の主食をしっかり食べることを意識しましょう。そのうえで、亜鉛が豊富な玄米を取り入れるのも方法のひとつです。1日1食玄米ご飯に置き換える、ランチに玄米入りのおにぎりを選ぶなど、少しずつ取り入れてみるとよいでしょう。
たんぱく質源となる食材を毎食取り入れる
たんぱく質を多く含む食材には亜鉛が比較的多く含まれています。魚介類や大豆製品だけでなく、卵や肉類でも亜鉛を摂ることができます。
亜鉛が不足しやすい人の特徴
食生活や体の状態によっては、亜鉛が不足しやすくなることがあります。次のような特徴に当てはまる方は、亜鉛の摂取を心がけましょう。
主食の量が少ない人
ダイエットや糖質制限のために主食の量を大幅に減らしている人、主食を抜きがちな人は、亜鉛が不足しやすい傾向があります。日本人が摂取している亜鉛のおよそ4分の1は、穀類に由来するものです。主食を過度に減らすと、亜鉛の摂取量も減ってしまいます。
和食を食べる機会が少ない人
亜鉛を多く含む魚介類や大豆製品は和食でよく使われる食材です。そのため、和食を食べる機会が少ない人も、亜鉛が不足しやすいと考えられます。
細胞分裂が活発な人
特に成長期の子どもや妊娠中の人は、通常よりも多く細胞をつくる必要があるため、より多くの亜鉛が必要です。筋肉の分解と合成が活発に行われている運動習慣のある人や、ケガや手術からの回復期にある人も、細胞が活発につくられている状態なので、亜鉛が不足しないように気をつけましょう。
亜鉛に関するよくあるご質問
Q.亜鉛の吸収を妨げるものはある?
Q.亜鉛を摂りすぎるとどんな影響がある?
Q.亜鉛と女性の健康にはどんな関係がある?