健康な体を維持するためには、毎日の食事から必要な栄養素をしっかり摂っておきたいものです。しかし、なかには不足していても自覚しにくく、気づかないうちに体に影響を及ぼす栄養素もあります。
今回は、“健康のために知っておきたい栄養素”のなかから、日本人に不足しがちな「ビタミンD」をピックアップ。ビタミンDの働きや効果、効率よく摂取する方法、不足しやすい人の特徴などを解説します。
- 教えてくれるのは…
-
- 新出 真理さん
- 山形県立米沢栄養大学 講師
管理栄養士、産業カウンセラー、博士(栄養学)。女子栄養大学卒業後、管理栄養士として(財)日本健康文化振興会、電設健保健診センターで栄養・運動指導等や、保健医療従事者へのカウンセリング教育に従事。筑波大学大学院修士課程健康教育学専攻修了後、開業。ヘルスサポート研究会カナン代表、健康教育コンサルタントとして栄養相談や保健医療福祉専門職の養成・卒後研修、企業・自治体の栄養関連アドバイザーなどを行う。女子栄養大学大学院博士後期課程(栄養学専攻)修了。2025年度より現職。
[監修]新出真理さん:https://www.u.yone.ac.jp/outline/faculty/shinde_mari/
山形県立米沢栄養大学:https://www.u.yone.ac.jp/
ビタミンDとは?その働きと効果、1日の目安摂取量
ビタミンDは、脂質に溶けやすい脂溶性ビタミンの一種です。魚やきのこなどの食材から体に取り入れるほか、紫外線が皮膚に当たることでも合成されます。
カルシウムの働きをサポートするビタミンD
ビタミンDは、骨の健康と深く関わる栄養素で、主にカルシウムの働きをサポートしています。
まず、カルシウムを運ぶたんぱく質の生成を促し、小腸でのカルシウムの吸収を助けます。さらに、吸収されたカルシウムが骨に組み込まれるのを促す役割も担っています。
また、血液中のカルシウム濃度を保つことも、ビタミンDの働きのひとつです。血液中のカルシウムは神経伝達や筋肉の収縮に関わっているため、神経や筋肉が正常に働くうえでも、ビタミンDは欠かせない存在です。
そのほか、細胞増殖の調整、転倒・骨折リスクの低減、心血管疾患や免疫機能との関わりもあると報告されています。
ビタミンDの摂取目安量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、12歳以上の男女のビタミンD摂取目安量は、1日あたり9.0μg(マイクログラム)とされています。
しかし、令和6年に実施された「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の男女のビタミンD平均摂取量は6.9μgにとどまっています。実際の摂取量が目安量を下回る状況は長年続いており、日本人はビタミンDが不足しがちであるといえます。
不足しがちなビタミンD。不足するとどうなる?
ビタミンDが不足しても、体の不調はすぐには現れません。血液中のビタミンD濃度を測定しない限り、不足に気づくのは難しく、自覚症状のないままビタミンDが足りていない状態が続くケースもあります。
こうした状態が続くと、閉経後の女性や高齢者では骨粗しょう症を発症しやすくなります。骨粗しょう症とは、骨の形成と分解のバランスが崩れて骨量(骨に含まれるミネラルの量)が減少し、骨がもろくなる病気です。
- すべての女性が気をつけたい「骨粗しょう症」
-
「骨粗しょう症」という病名は聞いたことがあるけれど、高齢者の病気だろうし自分にはまだ関係ない。そう思っている人は多いのではないでしょうか。重篤な病気ではないととらえている人もいるかもしれませんが、骨粗しょう症による骨折が引き金となって寝たきりになったり、骨折を繰り返したりすることもあり、健康への影響はかなりのもの。また、骨量や骨密度は女性ホルモンの影響を大きく受けるため、とくに40代以降の女性は気をつけたい病気です。https://www.aisei.co.jp/helico/health/bone-muscle-osteoporosis/
骨粗しょう症予防は、症状が出る前からの対策がなによりも重要です。正しい知識を身につけて、生涯自分の足で歩ける丈夫な体づくりを目指しましょう。
骨量は成長期に増加し、20歳前後で最大になります。しばらくは安定した状態が続きますが、50歳頃から急激に減少します。この変化は加齢によるもので、止めることはできません。若いうちに骨量のピークを高めておくとともに、骨の健康に関わる栄養素を積極的に摂取して、骨量の減少を緩やかにすることが大切です。
日本人のビタミンD不足が注目されている理由
研究の進展や社会的な背景の変化により、ビタミンDの重要性はこれまで以上に広く認識されるようになっています。
高齢社会における、骨粗しょう症やサルコペニア対策としての必要性が高まっているほか、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、免疫機能との関わりがあらためて注目されたのです。
こうしたなかで、日本人の多くがビタミンDを十分に摂取できていない実態も明らかになってきました。重要な栄養素であるにもかかわらず摂取量は不足しているという状況が続いています。
ビタミンDはどんな食品に含まれる?
ビタミンDは、魚類やきのこ類に多く含まれています。特に魚類の含有量は多く、たとえば鮭を1切れ(80g)食べると、25.6μgのビタミンDを摂取できます。
ビタミンDは肉類にも含まれていますが、肉類は脂質異常症のリスクに関わる飽和脂肪酸が多く含まれる点に注意が必要です。脂肪酸のバランスを考えると、魚類からビタミンDを摂るのがおすすめです。
ビタミンDを効率よく摂取する方法
食事からビタミンDを摂取するには
魚類の調理は手間がかかるイメージがあるかもしれませんが、次のような加工食品を活用することで、手軽に魚を取り入れることができます。
魚の加工食品の例
- 調理済みの焼き魚
- 鮭フレーク
- さばやいわしの缶詰
- 刺身
刺身は、安いときなどにまとめて買って、ポン酢や味噌などの調味料に漬けて冷凍保存をして、食べたいときに焼いたり、電子レンジで加熱したりしてアレンジしてもよいでしょう。
日光でビタミンDを合成するには
ビタミンDの合成に必要な日光浴の時間は、その日の紫外線量や服装、日焼け対策の程度によって差はありますが、関東地方なら夏は日陰で30分程度、冬は1時間程度が目安とされています。
紫外線量は地域によっても大きく異なります。5.5μgのビタミンDを合成するために必要な日光浴の時間は、12月の札幌では日中でも76.4分かかるのに対し、那覇ではわずか7.5分とする研究結果もあります。
ビタミンDが不足しやすい人の特徴
魚をあまり食べない
日本人は、体に必要なビタミンDの多くを魚から補っているというデータがあります。魚を食べる機会が少ない方はビタミンDが不足している可能性があるため、「最近、魚を食べているかな」と日頃から意識を向けておくことが大切です。
屋外で活動する機会が少ない
在宅勤務の普及や、休日を室内で過ごす機会の増加により、外に出る機会が減っている人は少なくありません。紫外線を浴びる時間が短いと、ビタミンDが不足する可能性があります。
散歩をしたり、コンビニへ歩いて買い物に行ったりするなど、意識的に日光に当たる時間をつくってみましょう。
入念に日焼け対策をしている
日焼け止めを使う習慣が定着している一方で、過度な日焼け対策は皮膚でのビタミンD合成を妨げると考えられています。
日焼け対策を行いながらビタミンD不足を防ぐには、食品からの摂取がより重要です。お魚を積極的に食べて、健やかな体づくりを意識していきましょう。
ビタミンDに関するよくあるご質問
Q.ビタミンDの摂取を特に意識したい年代は?
Q.妊娠中のビタミンD不足は、母体や赤ちゃんにどのような影響がある?
Q.サプリを飲めばそれでOK?