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『凪のお暇』作者、1年間の「お暇」を経て気づいたこと

『凪のお暇』作者、1年間の「お暇」を経て気づいたこと

漫画『凪のお暇(なぎのおいとま)』の作者であるコナリミサトさんは、主人公が「お暇」という自由な時間を過ごす作品を描きながら、ご自身も2022年から約1年間、休載をしていた時期があります。

休載期間のSNSを見てみると、粘土細工をしたり、手帳をデコレーションしたり、のびのびと過ごされていたようにも見えます。しかし、長い休載は勇気のいること。実際のところは、どんな心境だったのでしょうか。

コナリさんの「お暇」の考え方、そして自身が「お暇」を取るときに心がけてきたことなどを詳しく伺います。

教えてくれるのは…
コナリ ミサトさん
コナリ ミサトさん

7月22日生まれ。ハイティーン向けファッション雑誌・CUTiE(宝島社)でマンガ家デビュー。代表作にドラマ化された「珈琲いかがでしょう」(マッグガーデン)、「ひとりで飲めるもん!」(芳文社)など。2016年からは月刊エレガンスイブで「凪のお暇」を連載し、2025年に完結。単行本は累計580万部を突破。同作はTBSでドラマ化されたほか、第65回小学館漫画賞では少女向け部門を受賞するなど話題を呼んだ。

『凪のお暇』とは?

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月刊誌『Eleganceイブ』(秋田書店)にて2016年8月号から2025年4月号まで連載し、2019年にはテレビドラマ化もされた、大人気漫画『凪のお暇(なぎのおいとま)』。空気を読みすぎてしまう28歳の主人公・大島凪が、仕事や恋、人間関係などを手放して得た「お暇」を過ごすなかで、さまざまな人と関わり合いながら、自身の考え方や価値観を変化させていく物語です。

「お暇」以前の凪は、強いくせ毛を毎日さらさらのストレートヘアに整え、節約をすることで背伸びした生活を維持し、周囲にマウントを取られながらも、隠れて営業部のエースと交際をすることで自尊心を保ち暮らしていました。しかし、溜め込んだストレスが爆発してしまい、過呼吸になって倒れてしまいます。

一見すると、自身のためだけに無理をしてきた凪ですが、実際は誰よりもまじめに仕事に取り組み、恋人の希望を懸命に叶え、周りのために無理をしてきた面があるのも事実。そんなふうに、つい無理をしてしまう「休むのが苦手」な方々からも多くの共感を集めました。

お暇=宙ぶらりんな状態になるのを許す期間

―作品のタイトルにもなっている「お暇(おいとま)」という言葉について、どのように捉えていますか?

コナリさん
コナリさん

「休憩」や「お休み」、あるいは「小休止」といった意味合いで捉えています。もっと言えば、「宙ぶらりんな状態になるのを許す」期間のことでしょうか。

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漫画『凪のお暇』の作者・コナリミサトさん

―「宙ぶらりんな状態になるのを許す」とは、具体的にはどういうことでしょうか。

コナリさん
コナリさん

立ち止まったり、考えなきゃいけないことを保留にしておいたり、そういう状態である自分自身を許すということですね。そういう時間が大事だと思っています。そうしているうちに「宙ぶらりん」であることに飽きてきて、行動したり考えたりし出すのではないでしょうか。

―「飽きる」ですか?

コナリさん
コナリさん

「飽きる」というのは、言い換えれば「もういいや、と思えるまでやり尽くす」ということですね。

―ただ、そうなるまで宙ぶらりんな状態が続くというのも不安になりそうです。

コナリさん
コナリさん

終わりが見えないと不安になっちゃいますよね。でも、ちゃんと終わりはあります。「お暇」自体は人生の節目に何度もあって、終わりと言っても「第一弾の終わり」みたいなもの。いずれ何かをきっかけに第二弾の「お暇」が始まり終わっていく、そういうものだと思っています。
 
会社の有給休暇とか、転職先に入社するまでの間とか、期間が決まっている「お暇」もありますよね。これはあくまで私の場合ですけど、期間が決まっていない「お暇」は、飽きたと思ったら終わり。新しい生活を始めたり生活スタイルを変えたりしたいと思ったとき、いつも気持ちの根底に「飽きた」があって、そこから人生が新しい方向に進み始めるんです。

コナリさんが約1年の「お暇」を取って気づいたこと

―「お暇」といえば、コナリさんは2022年8月から1年ほど、『凪のお暇』の休載期間を取られていました。理由を伺ってもいいですか?

コナリさん
コナリさん

じつは妊娠、出産をしたんです。もともと「少し休みたい」と思ってもいたのですが、そんな頃に妊娠という身体的なきっかけもできたことで、休載することにしました。

―そうだったんですね!? おめでとうございます! ご出産に向けて体調を整えられていた時期でもあるかとは思いますが、どのようなことをして過ごされていましたか?

コナリさん
コナリさん

粘土でいろいろつくったり、手帳をデコレーションしたり、編み物をしたりして過ごしていました。何かが完成に向かって進んでいく感覚が好きなんです。

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コナリさんが休載期間中につくった粘土細工(左)とデコ手帳(右)。世界観が溢れている。

―休載期間という「お暇」を取って、気づいたことはありますか?

コナリさん
コナリさん

昔から「心が元気なら、体も元気だろう」と考えていたのですが、妊娠をすると自分の体が思い通りにならない状態が続くわけで、そのなかで「まずは体が大事なんだ」と思うようになりました。体が元気なら、心もついてくる感覚がある。逆だったんですよね。
 
以前は運動も食事もあまり気を使っていなかったんですけど、いまは筋トレをしたり、意識的に必要な栄養を摂取するようにしたりと、「体が資本だ」という意識を持って生活しています。

―「心が元気なら、体も元気だろう」と思っていたということは、心は元気であることが多かったのでしょうか。

コナリさん
コナリさん

つねに心が元気だったかといえばそうでもなくて、特に休載前は、いまになって思えばかなり参っていたと思います。街中の広告を見て、「この表現は誰かを傷つけてはいないだろうか」とモヤモヤ考え過ぎてしまうとか、目に入る情報がとにかく気になっていました。

―そういった状態になったとき、以前はどうしていたのですか?

コナリさん
コナリさん

自分がまずい状態だとなんとなく思っても、目の前の仕事をしなきゃという気持ちでやり過ごしてしまい、なかなか向き合えずにいました。目の前のことに向き合い続けるだけじゃなく、見て見ぬフリをしてしまうことにも目を向けるべきだったとあとから気づいたので、休載期間をとって良かったなと思います。

こまめに休むためのアイデア

―まとまった期間でなくても、日ごろからこまめに休むことはありますか? また、どんなことをされていますか?

コナリさん
コナリさん

いろんなことをしますよ! 最近はパーソナルジムに通っているので、そこで教えてもらった肩回しや開脚をしています。熱いお風呂に入るのもいいですね。散歩をするのも大好きです。あとはコーヒーと、甘いもの。

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―コナリさんの作品には、食事をする場面がよく出てきますが、ご自身もそういったことがお好きなのでしょうか。

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「お暇」期間中にできた仲間たちと、一緒に料理をつくって食べる凪(5巻)

コナリさん
コナリさん

ひとりだと毎日同じものとか食べちゃうんですけど、友達と料理をつくったり食べたりするのは好きですね。先日はパイシートを買いすぎてしまったので、友達を家に呼んで、それぞれ好きなものをパイ包みにする会をしました。
 
誰かと外食するときも、なるべくおいしいものを食べたり飲んだりしたい。おいしいものを人と共有するのが好きなのかもしれません。食を通していろんな人とコミュニケーションを取って、それに癒されている感覚があります。

―こまめに休むアイデアをいろいろとお持ちのようですが、休むとなると、何もしないよりは何かしていたほうが落ち着きますか?

コナリさん
コナリさん

何もしないのも好きですよ。先日、広島県の尾道へ行ったんですけど、海に浮かんでいるクラゲを何時間もぼーっと眺めていましたし。何をするにも、「これをすると頭が落ち着く」と思うことが好きですね。

「お暇」を取るのが難しい、と思ったら

―『凪のお暇』は、主人公の凪が「お暇」期間を過ごす物語ですが、後半では凪と入れ替わる形で、凪のお母さんも「お暇」を取る時期があります。あの展開はどのように構想されたのでしょうか?

コナリさん
コナリさん

凪は仕事や恋を手放し、さらに携帯電話も解約して引っ越すことで「お暇」を手に入れました。でも、凪のお母さんは、若いころに北海道から一度上京したものの、夢破れて地元に戻り、それからすべてを諦めてしまっていた。そんな母の姿を見て、凪が「東京へ行って」と送り出して、お母さんの「お暇」がスタートするんですね。

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凪のお母さんのお暇が始まった経緯(9巻)。実家に帰った凪が、母の様子を見かねて東京へ送り出した。

コナリさん
コナリさん

凪のお母さんは、かつて暮らしていた東京に強い執着があって、かといって地元での生きづらさに抗うこともできず、ずっと「宙ぶらりん」になれずにいました。だからお母さんにも「お暇」を過ごしてもらい、自分にかけた呪いのようなものを解いてもらわないとダメだと思ったんです。『凪のお暇』という物語を終わらせるためにも。

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凪の「お暇」の始まり(左/1巻)とお母さんの「お暇」の始まり(右/9巻)。「二人の後ろ姿が入れ替わるのがいいなと思って描いた」とのこと。

―そうして凪のお母さんは東京へ行き、自分の執着と向き合うことになりましたね。

コナリさん
コナリさん

「お暇」というのは、思考から離れることだと思っています。自分のなかで当たり前になっている価値観とか、つい考えすぎていることから離れること。

凪のお母さんの場合は、自分にかけた呪いを解くために、「地元の生きづらさから抜け出せない」という思考から離れて、東京で執着の要因を見つけ出す必要があったんですよね。

―凪のお母さんのように、誰かが「お暇」をくれたらいいですが、環境や状況によって「お暇」を取るのが難しい場合もあります。どうしたらいいと思いますか?

コナリさん
コナリさん

仕事や育児などに追われる人が、「スマホゲームならできる」というのを聞くことがあります。それは、短い時間で手軽に取れる「お暇」だからなのではないでしょうか。私も今後取り入れたいと思っています。オススメがあったら知りたいです。
 
あと、物語を読むとかでもいいと思います。長い物語が難しければ、短歌に触れるとか。そうしてまずは、いつもの思考から少し離れてみるのはいかがでしょうか。

―コナリさんは休載期間を取ると決めたとき、不安にはなりませんでしたか?

コナリさん
コナリさん

復帰するときに、作品を構想したり描いたりする感覚が戻るのかとか、そういった不安な気持ちはありました。でも、『Eleganceイブ』編集部の方々に相談をしてみたら、「体が第一なのでしっかり休んでください」と背中を押していただけて、自分が思うよりも周りは休むことを受け入れてくれるんだなと感じました。

―休みたいと思って決断するときに、コナリさんはご自身に対してどのように「許可」を出していますか?

コナリさん
コナリさん

自分で自分にお伺いを立てるようにしていますね。自分に対して一番厳しい自分がいて、それに対して「自分なんてこんなもんですよ」とお許しを得るというか。
 
卑屈な感じじゃなくて、あくまで「そういう自分もいるよ」と認めてもらうような感覚です。誰しも、自分のハードルを自分で上げがちなので。実際、自分って、自分が思うほどすごくはないじゃないですか。

―自分の声を自分で聞くのは大事だと思います。ただ、周囲の声や反応が気になることもあります。

コナリさん
コナリさん

たとえば「人に迷惑をかけるかもしれない」というのは、誰かに言われるよりもまず、自分が一番に考えているはず。自分よりも自分に厳しい存在って、まずいないと思うんです。

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自分の今後に悩む凪に、元カレ・慎二が「自分が一番自分に厳しい」ことを教えてくれた(12巻)。

コナリさん
コナリさん

自分が一番厳しくて、それに比べたら周りの人はそんなに厳しくない。そう思えると、少し休みやすくなるのではないでしょうか。

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CREDIT
取材・文:鈴木梢 写真:小野奈那子 編集:HELiCO編集部+ノオト

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