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宮川サトシの体験記「俺は尿管結石が捨てられない」

宮川サトシの体験記「俺は尿管結石が捨てられない」

腎臓から尿道までの尿路に結石が生じる「尿路結石」。泌尿器科外来でも患者数の多い疾患のひとつで、突然生じる激しい痛み、血尿などが典型的な症状です。大学生の頃に尿管結石を発症した漫画家・宮川サトシさん。じつは、そのときの結石を今も大事に保管していて……。

宮川サトシさん
宮川サトシさん

漫画家。1978年生まれ。岐阜県出身。東京で暮らす地方出身妖怪たちの悲哀を描いたギャグ漫画『東京百鬼夜行』(コミック@バンチ/新潮社)で2013年に漫画家デビュー。最愛の人を亡くした哀しみを描いて多くの共感の声を生んだエッセイ漫画『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』(WEB漫画サイト・くらげバンチ/新潮社)は、累計500万PVを突破した。現在は週刊新潮にて『俺は健康にふりまわされている』(新潮社)、週刊モーニングにて『ワンオペJOKER(原作)』(講談社)等を連載中。
 
X:https://x.com/miyagawa_sato

宮川サトシの体験記「俺は尿管結石が捨てられない」
宮川サトシの体験記「俺は尿管結石が捨てられない」
宮川サトシの体験記「俺は尿管結石が捨てられない」

尿管結石なんて、関節痛や歯槽膿漏のような〝おっさんのぼやきのネタ〟のひとつぐらいで、自分には縁のない話だと思っていました。それが学生の頃に突然自分の身にふりかかってきて、この世から消えてなくなりたくなるような激痛を味わうなんて。それも一度や二度ではなく、覚えているだけでも4~5石……。

腰から下腹部にかけて、照英さんのような屈強な男にゆっくりと内臓を握りつぶされていくような痛み。撫でたりつねったりしてごまかそうにも、痛みのもとまで手が届かないもどかしさ。

世界にはこの痛みを抱えている自分と、そうでない人たちしかいない……。どうして自分が……。そんなことを考えながら床を翻筋斗(もんどり)打って転げ回ることしかできない、地獄の時間でした。

結石が尿道を通り過ぎるときの感覚は、擬音で表すなら「ゾルゾルゾルッ」でしょうか。一瞬尿が止まり、結石はすぐに尿圧でプツッと押し出され、便器に当たって「カラン」と音を立てます。これまでの苦しかった痛みの記憶を、一瞬で浄化してくれる清々しい音です。

10年前に田舎から東京へ越してきて以来、久しくこの音を聞いていません。環境や飲む水が変わったからなのでしょうか、新規の結石を感じなくなりました。

医師の話によれば、自分の場合、腎臓にやや大きめの母体石があって、そこから崩れ落ちたものが降りてきていたのだそうです。海上に浮かぶ航空母艦から小型戦闘機が出撃していく映像が脳裏に浮かびます。戦闘機はもうすべて飛び立ったのでしょうか。戦いは終わったのでしょうか。

なんにせよ、あんな地獄は二度と御免なのですが、最近は不思議とどこか寂しさも感じている今日この頃です。

CREDIT
漫画&テキスト:宮川サトシ リード文:HELiCO編集部+ノオト

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