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焦らない叱らない。みんなで寄り添う子どものおねしょ

焦らない叱らない。みんなで寄り添う子どものおねしょ

「おねしょが治らないけど大丈夫かな」「おねしょをしちゃった子どもに、なんて声をかけてあげたらいいの?」などと悩んでいる方は少なくないと思います。いろいろな対策を講じてもうまくいかなかったり、親子ともにナーバスになってしまったり、おねしょが解決するまでに試行錯誤を繰り返すことはめずらしくありません。

本記事では、おねしょの原因や改善のために家庭でできること、医療機関に行く目安についても解説していきます。お子さんにしっかり寄り添うためにも、まずはきちんとした知識を学んでいきましょう。

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おねしょの定義って? 5歳を1つの目安に

子どもはおむつからトイレトレーニングなどを経て、自分でトイレに行き排尿をするようになります。多くの場合2~3歳でトイレトレーニングが完了するとされていますが、子どものおねしょについては、目安となるものはあるのでしょうか。

日本夜尿症学会がまとめた『夜尿症診療ガイドライン2021』によると、おねしょは「5歳以上で月に1回以上、夜の睡眠中に尿をもらしてしまうことが3か月以上続く」と「夜尿症(やにょうしょう)」であると定義されており、おねしょに悩む子どもの割合は5歳で15%、7歳で10%、10歳で5%程度といわれています。また、明確な原因はわかっていませんが、10歳未満における男女の割合は、2:1で男の子に多いとされています。

おねしょが続いてしまうと、体に何か原因があるのではないかと心配になったり、つい子どもを叱ってしまったりすることもあるかもしれませんが、大人が思っている以上に子ども自身が気にしている場合も多く、おねしょが気になって宿泊行事に対して消極的になる、おねしょがない子どもと比較して自尊心が低くなってしまうという研究データもあるのです。

おねしょの原因とは――体の仕組みを知ろう

おねしょをしてしまう背景には、さまざまな原因が考えられ、1つだけではなく複数が関係している場合も。ここでは、おねしょの主な原因を紹介していきます。

焦らない叱らない。みんなで寄り添う子どものおねしょ

睡眠中も尿がたくさんつくられてしまう(夜間多尿)

本来睡眠中は、尿量を抑えるホルモン(抗利尿ホルモン)が分泌されています。年齢が上がるにつれておねしょをする子どもの割合が減っていくのは、抗利尿ホルモンの分泌量が年齢とともに増えることも要因の1つです。しかし、おねしょをしてしまう場合、このホルモンの分泌量そのものが少ない可能性があります。

膀胱が過敏になる(尿を溜める力が弱い)

膀胱は一定量の尿を溜められるようにできていますが、睡眠中に膀胱が過敏になり尿を溜められなくなってしまうことも、おねしょのひとつの原因です。起きているときであれば、膀胱が過敏になっても、尿意を感じた際に尿道の周りにある筋肉(骨盤底筋)が無意識に働き排尿を我慢することができます。しかし、睡眠中に膀胱が過敏になった状態で骨盤底筋が働かず、尿道を締められない場合に、おねしょをしてしまうのです。

睡眠から目覚める(覚醒する)力が弱い

おねしょをしてしまう子どもは、起こしても覚醒しにくいとされています。そのため、尿意を感じても覚醒できずにおねしょをしてしまうことに。逆に、ここまでに挙げた「夜間に多く尿がつくられる」「膀胱の容量が少ない」といったことがあっても、睡眠から覚醒する力に問題がなければ、夜中に目を覚ましてトイレに行けるため、おねしょをしてしまうことはありません。

遺伝的な要素や便秘、別の病気、心理的な問題が関係することも

おねしょは遺伝的な要素もあり、両親のどちらかが子どものころに夜尿症だった場合、そうではない子どもと比べて5~7倍ほど、両親ともに夜尿症だった場合には、約11倍も夜尿症になりやすいという報告があります。

また、便秘気味で膀胱が圧迫されてしまい、おねしょをしやすくなったり、ADHD(注意欠如・多動症)がある場合におねしょをしやすくなったりします。加えて、「またおねしょをしたらどうしよう」と不安(ストレス)を感じ、それが原因でおねしょを引き起こしてしまう悪循環に陥ることも。

ただし、昼間ももらしてしまう場合には、別の病気などが原因となっている可能性もあります。また、上記の代表的な要因だけではなく、生活習慣や食事メニューなども関係しているといわれています。

脱おねしょのための生活改善方法――家族で取り組めること

おねしょにはさまざまな原因が関係しています。改善するために、家庭ではどのようなことができるのでしょうか。医療機関を受診した際も、まずは生活改善を行うように指導されますので、意識してみましょう。

焦らない叱らない。みんなで寄り添う子どものおねしょ

夕食の時間を早める

夕食は、就寝の2-3時間前までに済ませるのが理想的です。水分補給のメインは日中と考えて、夜は水分を必要以上に摂らないように心がけましょう。タンパク質を多く含む牛乳、カリウムが豊富な果物、カフェイン入りのお茶などは利尿作用があるので、夕食時はなるべく控えましょう

塩分を摂りすぎない

尿は体の老廃物や余分な塩分を排泄する役割を果たしています。つまり、余分な塩分が増えるほど、尿量も増えてしまう可能性が高いのです。水分摂取量ばかりに注目してしまいがちですが、毎日の食事の塩分摂取量も意識してみましょう。

体を冷やさない

体が冷えると膀胱が敏感になり、おねしょにつながることも。寒い時期は特にお風呂でしっかり温まったり、寝具を温めたりしておくなどの対策が有効です。

就寝中に無理やり起こさない

おねしょを防ぐため、夜中に定期的に子どもを起こすケースも見られますが、じつはNG行動です。抗利尿ホルモンは寝ている間に分泌されるため、起こしてしまうと分泌量が増えなくなってしまいます。また、何よりも大切なのは、無理やり起こしてトイレに行くのではなく、「自ら尿意を感じて目が覚める」「睡眠中に排尿しそうになった際、反射で尿を止める」という成功体験を積み重ねること。こうして体に覚えさせることが、脱おねしょへの近道です。

ただし、おねしょをほぼ毎日繰り返すような場合には、成功体験を積み重ねること自体が困難になります。そのため、きちんと医療機関を受診して、薬物療法や後ほど説明するアラーム療法などの治療を通じ、成功体験のきっかけをつくることが大切です。

おねしょを責めない、叱らない

おねしょをしたいと思ってしている子どもはいません。ときにはおねしょをしても平気な顔をしていたり、無関心を装っていたりすることもありますが、一番気にしているのは子ども自身です。いずれにせよ、周囲からの「なんでおねしょしちゃうの!」といった問い詰めるような言葉は精神的なストレスを与えて、おねしょに対する不安を増加させるだけ。子どもの不安や劣等感に寄り添うことを第一に心がけましょう。

医療機関受診の目安とは――おねしょは治療で改善できる

焦らない叱らない。みんなで寄り添う子どものおねしょ

皆さんに知ってほしいのは、「おねしょは治療をすれば治る」ということ。生活指導などを含め、医療機関できちんと治療を行った場合、自然におねしょがなくなるのを待つ場合(自然経過)と比較して2~3倍ほど治癒率を高められ、治るまでの期間が短縮されるという報告もあります。

5~6歳では昼間のおもらしがあれば、また小学1年生でほぼ毎日、小学3年生で週に3回以上のおねしょがあれば、医療機関の受診を検討しましょう。宿泊行事をきっかけに医療機関を受診する方が多く、なんとか一時的な治療・対処法などでしのぐ場合もありますが、本来おねしょの治療は長期的な目線で行うもの。目安として短くても3か月〜半年はかかると考えた方がよいでしょう。1年で5割、2年で7〜8割のお子さんが完治できる傾向にありますので、ぜひ計画的に治療にあたってください。

受診するのは、おねしょ(夜尿症)外来、あるいは小児科や泌尿器科で夜尿症を専門にしている医師がいる医療機関が望ましいでしょう。

一般的には先ほどお伝えした生活改善指導のほか、アラーム療法や薬物療法などの治療法があります。アラーム療法は、おねしょをした際、パンツ(あるいはおむつ)に装着している専用のセンサーがそれを感知してアラームを鳴らし、「少し眠りが浅くなることで、おしっこを止める反射を誘発する」というものです。これを繰り返すことで、おねしょの量や回数の減少に効果があるとされています。

これらの治療の方針は、おねしょの原因を判断したうえで検討していきます。

おねしょについて、理解は深まったでしょうか。「おねしょは家庭で取り組める生活改善方法があること、さらに治療によっても治るもの」という認識をもつことが大切です。子どもの気持ちに寄り添いながら、長い目で見守っていくことを心がけましょう。

教えてくれたのは・・・
副田 敦裕先生
副田 敦裕先生
世田谷こどもクリニック医院 院長

大学卒業後、国立大蔵病院小児科に勤務の後、新生児医療や障害児医療を学び、講師として大学病院で勤務医を経験。その後、勤務医としてさまざまな研鑽を積み、現在「上町駅」より徒歩1分の『世田谷子どもクリニック』にて院長として診療を行う。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:山内マスミ

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