テストステロン(男性ホルモン)とは?減少する原因と改善ケア

テストステロン(男性ホルモン)とは?減少する原因と改善ケア

「落ち込みやすくなった」「イライラしやすくなった」「疲れやすくなった」
中高年男性に起きやすいこのような心身の不調は、男性ホルモンとも呼ばれる「テストステロン」の減少による男性更年期が原因かもしれません。今回は、テストステロンの役割や減少の原因、そして日常生活で実践できるセルフケアや改善ポイントについて解説します。

教えてくれるのは…
松本 昌和先生
松本 昌和先生
みらいメディカルグループ 理事長

東海大学医学部卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院にて研修医として研鑽を積んだ後、同学の腎・高血圧内科へ入局。さらに御徒町腎クリニック院長を経て、2015年に「持続可能な医療の実践」を理念として掲げるみらいメディカルクリニックを立ち上げた。みらいメディカルクリニックが立ち上げた「東京テストステロン研究会」のメンバーとしても活動している。
 
[監修者]松本 昌和先生:https://mirai-mg.com/introduction/
みらいメディカルグループ:https://mirai-mg.com/

テストステロン(男性ホルモン)とは?

テストステロンとは、主に男性の精巣でつくられるホルモンの一種です。一般的に「男性ホルモン」と呼ばれることも多く、男性らしい体つきや骨格を形成するために必要な物質で、筋肉量や骨密度の維持といった体の健康を支える重要な役割を担っています。

また、テストステロンは、「気力」「決断力」「自己肯定感」など、社会生活を送るための活力や精神状態に深く関わっています。そのため、テストステロンの分泌が十分な状態では、行動力や決断力に優れ、チャレンジ精神が旺盛になるともいわれています。

テストステロンの分泌は、思春期頃から急増し、20代前半くらいにピークを迎えます。その後、個人差はあるものの、30代以降から緩やかに減少していきます。加齢である程度テストステロンが少なくなることは避けられない一方で、減少の程度には生活習慣やストレスなど、環境の要因も大きく影響します。

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テストステロンが少ない状態は、男性にどんな影響をもたらす?

テストステロンが少ない状態になると、肉体的にも精神的にもさまざまな変化が現れます。

肉体面と精神面に及ぼす影響

肉体面

テストステロンが少ない男性の特徴として、筋肉量の低下と脂肪が蓄積しやすくなることが挙げられます。

「以前と食事の量は大きく変わっていないのに、お腹周りに脂肪がついてぽっこりしてきた」という場合、テストステロンの減少によって筋肉量が減り、基礎代謝が低下しているかもしれません。

また、十分な睡眠をとっても抜けない慢性的な疲労感や、睡眠の質の低下(ぐっすり眠れない、途中で目が覚めるなど)、性欲の減退なども、テストステロンが少ない男性によくみられる特徴のひとつです。

精神面

精神面においては、テストステロンが少ないことで、意欲やモチベーションが上がりにくくなることがあります。

以前と比較してテストステロンの量が減少した場合、心の状態や考え方が変化していく傾向があります。社会や人との関わりを面倒に感じてしまうことも少なくありません。

自己肯定感が下がり、物事をネガティブに捉えやすくなるため、これまで楽しんでいた趣味に関心がなくなったり、休日に外出する気力が湧かなくなったりします。

松本先生
松本先生

特に精神面の症状はうつ病などと混同されることも多いですが、テストステロンの減少が原因の場合「男性更年期障害(加齢性腺機能低下症/LOH症候群)」と呼ばれます。2021年に行われた調査では、中高年就労男性のおよそ1割がテストステロンの減少による更年期障害に苦しんでいるという結果もあります。

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健康リスクとの関連も

さらに、テストステロンが少ない状態は、前述のように日常生活の質(QOL)を大きく左右するだけでなく、いくつかの健康リスクとも関連するといわれています。

生活習慣病との関係

テストステロンには「筋肉量を維持し、体脂肪を増やしにくくする」作用があるため、テストステロンが少ないと筋肉が減り、体脂肪が増えるなど肥満のリスクが高まります。内臓脂肪が増えると、血圧や血糖値を上げる物質が分泌されやすくなり、メタボリックシンドロームにつながる可能性があります。

そのため、テストステロンが少ないことは糖尿病や高血圧といった生活習慣病のリスク上昇にもつながります。また、肥満が進行するとテストステロンの量が少なくなるという、悪循環にも陥ってしまうため、要注意です。

骨や認知機能への影響

テストステロンが少ないことは、骨密度の低下(骨粗しょう症)とも関連することが知られています。また、テストステロンは、記憶を司る脳の部位である海馬にも作用することがわかっています。テストステロンが少なくなることで、認知症の発症にも関連するのではないかといわれています。

テストステロンの増やし方

加齢によるテストステロンの減少は避けられませんが、生活習慣の改善によってテストステロンの分泌を維持・促進できる可能性があります。

1筋力トレーニング(筋トレ)を取り入れる

テストステロンの分泌を促すうえで、特に効果的とされているのがレジスタンストレーニング(抵抗運動)、いわゆる「筋トレ」です。

ジムで特別な器具を使って本格的に鍛える必要はなく、自分の体重を負荷にする「自重トレーニング」でも十分に効果が期待できます。効率的に大きな筋肉を動かすことができるスクワットは、特におすすめです。

筋トレのポイント

  • 週2〜3回、1回30分〜1時間程度が目安
  • 筋肉が回復する時間を確保しながら、継続することが理想的
  • トレーニングの間隔は中1日~2日を目安に、筋肉痛がある場合には無理をせずに休む
  • 毎日高負荷な筋トレを続けるとストレスホルモンが増加し、逆効果になることもあるので注意
  • 太もも、お尻、背中などの「大きな筋肉」を動かすことで、効率よくテストステロンの分泌を促す
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ランニングなどの有酸素運動が、直接テストステロンを増やす効果は限定的と考えられています。ただし、ストレス発散や体型維持に役立つため、適度な範囲で筋トレと組み合わせるのは問題ありません。過度な有酸素運動は筋トレ同様、ストレスホルモンを増やす可能性があるため、やりすぎには注意しましょう。

2食事・栄養バランスを整える

テストステロンの産生には、栄養素も大いに関係しています。特に以下のような栄養素が不足している場合、意識的に摂取するよう心がけましょう。

特に意識したい栄養素

  • 亜鉛:牡蠣、赤身肉(牛)、レバー(豚・牛・鶏)などに含まれる
  • ビタミンD:鮭、サンマ、きのこなどに含まれる。日光を浴びることでも体内で生成される
  • マグネシウム:ナッツ類、豆腐、ほうれん草などに含まれる
  • タンパク質:肉・魚・卵・大豆食品などに含まれる

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3睡眠を大切にする

テストステロンは、睡眠中に多く分泌されます。睡眠不足が続くと分泌量が減少しやすいため、十分な睡眠時間を確保すること、睡眠の質を高めることも重要です。

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4ストレスをため込まない

慢性的なストレスは、「コルチゾール」というストレスホルモンの分泌を増加させます。コルチゾールが増えると、精巣からのテストステロンの産生が抑制されることがわかっています。ストレスを感じることが多い方は、意識的に発散することが大切です。

こんなときには受診を検討してみて

次のような状態が続く場合は、医療機関の受診を検討してみてください。

□ 慢性的な疲労感・倦怠感が続く
□ 気分が沈みやすく、何事に対しても意欲が低下している
□ イライラしやすくなった、周囲の人に当たりやすくなった
□ 睡眠の質が悪くなった
□ 筋肉が落ちてきた、体脂肪が増えた
□ うつ病で治療を受けたが、なかなか改善しない

松本先生
松本先生

テストステロンの減少による男性更年期の症状はうつ病と似ており、メンタルクリニックなどで「うつ病」と診断されて治療を受けたものの改善が乏しく、あとから男性更年期だとわかるケースもあります。精神的な不調が続く際には、泌尿器科(特に男性更年期・メンズヘルスを専門とする医療機関)への受診も選択肢のひとつです。

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テストステロンに関するよくあるご質問

Q.テストステロンが多いと攻撃的になる?

松本先生
松本先生

「男性ホルモンが多い=攻撃的になる」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際には逆の場合が多いとされています。テストステロンが多い人は、ストレス耐性が高まり、寛容でいられる傾向があります。
 
反対に、テストステロンが少ない状態はイライラしやすくなったり、些細なことで怒りやすくなったりする傾向があります。仕事や家庭でのストレスでつい周囲に当たってしまう……という状態も、男性更年期(テストステロン減少)の症状のひとつと見られることがあります。

Q.テストステロンが多いと前立腺がんになりやすい?

松本先生
松本先生

現時点では、テストステロンの量と前立腺がんの直接的な因果関係を示す科学的根拠は示されていません。ただし、前立腺がんの既往がある方への、男性更年期障害に対するテストステロン補充療法は慎重に行うべきとされており、治療を受ける際には事前に診察・検査を通じて医師が確認します。気になる方は、医師に相談のうえ判断するようにしましょう。

Q.テストステロンが多いと薄毛になる?

松本先生
松本先生

テストステロンの量が薄毛(男性型脱毛症:AGA)に直接関係するわけではありません。
 
AGAの主な原因は、テストステロンが変換されてできる物質(ジヒドロテストステロン)。この物質が毛根に作用することで脱毛が促進されます。ジヒドロテストステロンの影響を受けやすいかどうかは遺伝による部分が大きいため、同じホルモン量であってもAGAの発症のしやすさには個人差があります。

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Q.テストステロンは男性でしか分泌されない?

松本先生
松本先生

テストステロンは、男性ホルモンという通称から「男性にしか存在しない」と誤解されがちですが、女性の体内でも分泌されています。女性にとってもテストステロンは、ストレス耐性を高めたり、社交性を保ったりするために重要な役割を担っており、男女問わず「心身の健康を支えるホルモン」といえます。

本記事の監修者・松本先生からのメッセージ

男性更年期障害で悩んでいる方は少なくありません。個人的には、テストステロンの減少、男性更年期障害によって働けなくなってしまう方がいらっしゃるという状態は、ひとつの社会課題とも感じています。

テストステロンは、体だけでなく、心の状態や判断力、対人コミュニケーションにまで影響するホルモンです。本人だけでなく、パートナーや家族の方にも、男性更年期という概念を知っておいてほしいと思います。

「なんとなく最近様子がおかしい」「精神科に通ってもなかなか改善しない」と感じたら、泌尿器科への相談も選択肢にしてみてください。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:フクイヒロシ
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