ちょっとした動作がきっかけで突然、腰に激痛が走るぎっくり腰。欧米では「魔女の一撃」とも呼ばれています。特に、寒さで筋肉がこわばりやすい冬は、ぎっくり腰のリスクが高まる季節です。
急にやってくるイメージが強いぎっくり腰ですが、なかには違和感や張りなどの「予兆」を感じる人も。そんなときは適切なケアをすることで、ぎっくり腰の発症を防ぐことができます。また、普段から筋肉の柔軟性を保ち血行を良くすることで、予防することも可能です。
今回は、久我山整形外科ペインクリニック院長の佐々木政幸先生に、ぎっくり腰を予防する生活習慣や、ぎっくり腰になってしまったときの対処法について伺いました。
- 教えてくれるのは…
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- 佐々木 政幸先生
- 久我山整形外科ペインクリニック院長
慶應義塾大学医学部の整形外科学教室に入局し、大学病院や関連病院を中心に診療。平成22年に久我山整形外科ペインクリニックを開院。整形外科治療のみならず、社会的・精神的アプローチやサプリメントなどを用いた「一人一人にあったセミオーダー治療」を実践している。
[監修者]佐々木 政幸先生:https://www.kugayama-seikei.jp/greeting.html
久我山整形外科ペインクリニック:https://www.kugayama-seikei.jp/
ぎっくり腰は腰の捻挫。原因、なりやすい人とは?
「ぎっくり腰」は、病名ではなく通称です。医療機関では、「腰椎捻挫」または「急性腰痛症」と診断されます。
この状態は、「腰の捻挫」のようなもの。腰の骨を支える筋肉や関節周辺の靭帯、椎間関節などが、急な動きに対応できずに傷つくことで痛みが生じます。多くの場合、数週間、無理なく過ごせば痛みは軽減していきます。
ぎっくり腰を発症するきっかけ
ぎっくり腰は、「体が固まっている状態」での急な動作をきっかけに発症することが多いです。
たとえば……
- 重いものを持ち上げたとき
- 前かがみになる動作をしたとき
- 同じ姿勢で長時間いた後にふと振り向いたとき
- 咳やくしゃみをしたとき
- 朝、布団から起き上がるとき
冬は特にぎっくり腰のリスクが高い季節。その理由は、寒さによって筋肉が縮こまり、固まってしまうためです。また、長時間同じ姿勢でいることも、筋肉が錆びて固まったような状態になる原因です。普段からなるべく腰の周りを温めたり動かしたりして、柔軟性を保ちましょう。
ぎっくり腰になりやすい人
腰を支える筋肉の柔軟性が低い人、筋肉量が十分ではない人は、ぎっくり腰のリスクが高いとされています。そのため、比較的筋肉の柔軟性があり活動量が多い10代はあまり発症しません。ぎっくり腰は20代くらいから多く見られ、30代~50代になると発症する人がさらに増えます。
特に、下記の特徴がある方は、ぎっくり腰のリスクが高い可能性も。
- 運動不足の人
- デスクワークで椅子に座っている時間が長い人
- 姿勢が悪い人(猫背、首が前に出ているなど)
- 肥満の人
- 筋肉が弱っている人(腹筋や背筋が弱い人)
- ストレスが溜まっている人
体を支える筋肉が弱いと、ちょっとした動きでも筋肉に負担がかかります。また、精神的なストレスがあると体に力が入りっぱなしになり、筋肉が固まってしまうことも。これらは、ぎっくり腰のリスクを高めるだけではなく、肩こりや慢性的な腰痛にもつながります。
ぎっくり腰を予防するために日常の中でできること
では、ぎっくり腰を予防するためにはどうしたらいいのでしょうか。日常の中でできる予防策を紹介します。
腹巻やカイロで腰を保温する
ぎっくり腰の予防には、腰を冷やさないことがもっとも重要です。寒い時期は腹巻を着用しましょう。また、カイロを貼るのもおすすめ。違和感があるところや、「ここを温めるとラクだ」と感じる場所に貼るといいでしょう。
湯船で全身を温める
湯船に浸かって全身を温めることは、リラックス効果もあり、筋肉の血行促進に役立ちます。38~40℃のぬるま湯に15~20分くらい浸かるのがおすすめ。ただし、高齢の方は熱いお湯に浸かったり、長湯したりすると、心臓に負担がかかる場合もあるため、無理のない範囲で調整してください。
30分座ったら1回立ち上がる
デスクワークなどで座る時間が長い場合は、机や椅子が自分に合っているかどうかを意識しましょう。また、ずっと同じ姿勢でいると腰の筋肉が固まってしまいます。仕事中はタイマーをかけるなどして、30分座ったら1回立ち上がって伸びをするのがおすすめ。こまめに体を動かす習慣をつくりましょう。
ラジオ体操
ゆっくりと大きく全身を動かすラジオ体操は、継続することで筋肉が固まるのを防ぎます。特に、腰を曲げる動作(前かがみ)と伸ばす動作(反らす)の両方をおこなうことで、腰の柔軟性を保つことができます。けっして反動をつけず、ゆっくりおこなってください。
朝・昼・晩や寝る前など、一日に何回もおこなうのがおすすめ。ただし、腰に違和感や痛みがあるときは、無理をせず安静にしましょう。
筋力の向上
腰を支える筋肉がしっかりしていると、急な負荷にも耐えやすくなります。ラジオ体操や腰の曲げ伸ばしで柔軟性を確保したうえで、余力があれば、筋力トレーニングによって筋肉を鍛えましょう。腰を支える筋肉は主に腹筋と背筋ですが、腰だけではなく体全体でバランスを取っているため、全身の筋肉をまんべんなく鍛えるのがおすすめです。
姿勢の改善
猫背や巻き肩、首が前に出ているなど、姿勢が悪い状態が続くと、無意識のうちに腰の筋肉に負担がかかってしまいます。姿勢が悪い自覚がある人は改善し、できるだけ正しい姿勢を保ちましょう。
ストレス対策とリラックス
精神的な要因も筋肉のこわばりにつながります。そのため、ストレスを発散することや、意識的にリラックスする時間をつくることが大切です。
ぎっくり腰になったらどうしたらいい?対処法を解説
では、ぎっくり腰になってしまったときはどのように対処すればいいのでしょうか。ぎっくり腰は捻挫のようなものなので、まずは炎症と痛みを抑えることが大切です。
安静にする(急性期)
起き上がれない、歩けないなど、日常動作ができないほどの重症度であれば、静かに過ごすことが重要です。ただし、以前は「絶対安静」という考え方が主流でしたが、現在は「無理のない範囲で日常生活を送るほうが良い」という考え方が主流。けっして無理はせず、できる範囲でいつも通りの生活を送りましょう。
痛みを和らげる
痛みを和らげるために、以下の方法がおすすめです。
- 湿布薬を貼る
- コルセットをする
- 痛み止めの飲み薬を飲む
- 病院で注射をしてもらう
家で手軽にできる対処法としては、湿布がおすすめ。冷湿布にはメントール成分、温湿布にはトウガラシ成分などが入っていますが、湿布は患部を温めたり冷やしたりするものではありません。あくまで、皮膚から薬を染み込ませて、炎症を鎮めるためのものです。
マッサージやストレッチは避ける
ぎっくり腰の急性期にマッサージをおこなうと、傷ついた部分を攻撃してしまい、さらに痛みがひどくなる場合があります。また、無理なストレッチは、筋肉をさらに傷つけてしまうことも。急性期のマッサージやストレッチは避けましょう。
医療機関を受診する
ぎっくり腰は数週間で症状が落ち着いてきます。ただし、下記の症状がある場合は、ぎっくり腰ではない病気の可能性もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
- じっとしていても、つねに痛い場合
- 熱が出ている場合
- 耐えられないほどの強い痛みがある場合
- 慢性的に痛みが続く場合
冬になりやすいぎっくり腰を予防しよう!
ぎっくり腰の予防には、湯船やカイロなどで腰を保温すること、ラジオ体操などの運動で筋肉の柔軟性を保つこと、そしてストレスを溜めないことなどが大切です。それでも発症してしまった場合は、コルセットや湿布などで痛みを和らげつつ、無理のない範囲で日常生活を送りましょう。
また、「ぎっくり腰は精神的な不安も痛みに大きく影響するので、もしなってしまってもあまり気に病まないでください」と佐々木先生。ぎっくり腰を予防し、健やかな毎日を送りましょう!