平熱は高い方がいい?体温を意識して健康になろう

平熱は高い方がいい?体温を意識して健康になろう

「平熱は36.5℃が理想的」 なんとなく、そう思っていませんか?

日頃から手足の冷えに悩む人は、「自分は低体温体質なのでは」と感じているかもしれません。でも、じつは平熱に明確な“正解の数字”はありません。体温は人によって違い、測り方や時間帯でも変わるもの。大切なのは「自分のいつもの体温」を知ることです。

この記事では、平熱の考え方から、体温を健康管理にどう活かせばいいのかまで、専門家の話をもとにわかりやすく解説します。

教えてくれるのは…
永島 計先生
永島 計先生
早稲田大学人間科学学術院 名誉教授

京都府立医科大学大学院医学研究科(生理系)修了。京都府立医科大学附属病院研修医、イエール大学医学部ピアス研究所ポスドク研究員、王立ノースショア病院オーバーシーフェローなどを経て、早稲田大学で長年教鞭をとり、現在は順天堂大学の客員研究員としても活動。専門は生理学、特に体温や体液の調節機構の研究。博士(医学)。バイタレート株式会社代表取締役。著書に『40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか』(化学同人)、監修書に『からだはすごいよ! ぬくぬくげんきぼくのたいおん』(少年写真新聞社)などがある。
 
[監修者]永島 計先生:https://w-rdb.waseda.jp/html/100000634_ja.html
バイタレート株式会社:https://vitarate.co.jp/

平熱とはそもそも何のこと?

「平熱」とは、英語でいう Normal temperature、つまりその人にとって「普通の体温」を意味します。

一般的に平熱とは、「健康な状態で、安静時に決まった部位を決まった方法で測定した体温」を指し、その範囲は36~37℃におさまることが多いようです。多くの場合、わきで測定した腋窩(えきか)温度ので、人によって35℃台〜37℃台まで幅があります。

なんとなく理想的な平熱=36.5℃前後と思い込んでいる人もいますが、この数字に厳密な根拠があるわけではありません。

1957年に報告された、東京大学・田坂定孝先生の研究では、日本人(10~50歳代の健康とみなされる男女3,000人余りが対象)の平均体温は、36.89℃±0.34℃となっています。測定方法は、椅子に腰かけた状態での水銀体温計による30分間の腋窩検温だったそうです。

現在主流になっている電子体温計とは条件が異なるため、同じような数字が出なくても自然なことです。つまり、平熱はこの範囲でなければいけないという決まった数値があるわけではなく、もともと個人差やバラツキがあるものと考えるのが適切です。

37.0℃を超えたり36.0℃を下回ったりしていても、それがその人にとっての平熱であれば必ずしも異常ではありません。

体温には「個人差」や「リズム」がある

体の内部の温度のことを「中心(コア)温」あるいは「深部体温」といいます。脳や内臓など体の中心の温度のことを指し、健康な状態であれば非常に狭い範囲(およそ37℃前後)に維持されています。これは生命維持に不可欠な脳や内臓の働きを保とうとして、体本来の「体温調節機能」が働くためで、個人差はとても小さいのです。

コア温を直接測るのは難しいため、私たちはわきの下、口の中、耳、皮膚表面などで測る体温で代用しています。すなわち、普段測っている体温です。ところが、この温度は体表に近い部分の温度(シェル温)の影響をうけます。このシェル温は、気温や服装、体格、筋肉量、皮下脂肪の厚さ、測り方などの影響を受けやすく、個人差や誤差も出やすいのが特徴です。

皮膚が冷たく、わきなどで測定した平熱が低めだからといって、体の内部まで冷えているとは限らないのです。

コア温とシェル温の場所

体温は朝低く、日中から夕方にかけて高くなる

体温は1日の中でも変化しています。体温のリズムは、脳にある視交叉上核が主導する体内時計(概日リズム)によってコントロールされており、一般的に1日のうちでは早朝が最も低く、しだいに上がり、夕方が最も高くなって、夜になると下がり始めます。この変動幅は、個人差が大きいのですが、顕著な人では1℃程度にもなります。

健康な人の1日の体温リズム

また、女性の場合は、月経周期による変化もみられます。排卵後は体温が高くなる「高温期」、月経後は低くなる「低温期」があり、これも自然な体のリズムです。

規則的なリズムが保たれているなら、それは体が正常に機能しているサインです。

子どもの体温を高めに感じるのは、なぜ?

子どもは、大人よりも体重あたりの代謝量が多く、体の中心と皮膚のあいだにある筋肉や脂肪の発達も十分でないため、体表から測定する平熱が高めになることが多くみられます。37℃台でも元気なことは珍しくありません。

子どもの発熱を判断するときは、普段の体温(平熱)を知っておき、それより何度高いかをみること、そしてぐったりしている、呼吸が早いなどの状態も合わせて確認することが大切です。例えば、平熱より1℃も高く、体調がすぐれなければ発熱と判断するのに十分な根拠となります。

自分の「平熱」はどうしたらわかる?

一般家庭では、体に負担をかけずに簡単に検温できるため、わき(腋窩)、口(舌下)、耳道などから測定できる体温計で測ることがほとんどでしょう。自分の平熱を把握するためのポイントは、とてもシンプルです。

  • 同じ体温計を使う
  • できるだけ同じ時間に、同じ測り方で測る
  • 健康な状態で数日〜1週間ほど続けて測る

(月経のある女性は月経周期に伴う女性ホルモンの分泌変化によって、低温期と高温期の2相に変化があります)

このようにして測ったときに、「だいたいこのくらいが安定している」と感じる体温が、その人の平熱です。

体温計は、現在ほとんどが電子式体温計になっています。腋窩用、舌下用(婦人体温計)、外耳道用、非接触型など、測定の場所や測定の原理は異なっています。腋窩用、舌下用は、数十秒でスピーディーに検温する「予測法」と、10分の時間が必要な「実測法」が計測に用いられています。

安定した体温を簡単に測るには、腋窩用がおすすめです。また、より正確に測るには、しっかりわきを閉じて、10分待つ実測法だとされています。少し時間と手間がかかりますが、口を閉じて測る舌下用もおすすめです。

ただし、普段の検温であれば予測法で十分です。同じ体温計で測ることで、自分のおおよその平熱を知ることもできます。また、女性の体調管理や月経周期管理には婦人体温計が適しているでしょう。

様々な方法で体温を計測している様子

平熱は「健康のバロメーター」になる

体温は、家で手軽に確認できる数少ない「体のサイン」のひとつ。自分の平熱を知ることは、健康管理のうえでも役に立ちます。

例えば、風邪かな?と思うような症状があるときに、「37℃だから熱がある」「36.8℃だから大丈夫」と、数字だけで判断するのではなく、

  • いつもの体温(平熱)より高いかどうか
  • だるさや寒気、のどの痛みなど、ほかの症状があるか

といった点を、普段の状態と照らし合わせて考えることが大切です。平熱がわかっていれば、わずかな変化でも「今日は無理をしないで過ごそう」「早めに休もう」といった判断につながります。子どもや家族の熱を測るときにも、平熱を基準に考えることで、必要以上に慌てずに対応しやすくなるでしょう。

女性の場合は、基礎体温(※)のリズムを記録しておくことで、月経周期や体調の波、妊娠の兆候などを把握する手がかりになります。これは、体調がゆらぎやすい時期の“見える化”にもなるため、無理をしすぎないための目安としても活用できるでしょう。

※基礎体温:起床直後の安静時に測る体温

自宅で起こりやすい高齢者の「低体温症」

暖房をつけずに寒い部屋でじっとしていたら、動けなくなってしまったーー。
高齢者は加齢により、体温調節の能力が低下し、暑さ・寒さへの感覚も鈍くなる傾向があります。また、代謝に関わる病気を持っている人も多くいます。その結果、屋内にいても、深部体温が35℃未満になる「低体温症」を起こすリスクがあります。栄養状態が悪く、痩せている人も注意が必要です。低体温症は重症化すると命に関わることもあるため、周囲の人による見守りや防寒対策が大切です。

女性が知っておきたい「体温が下がる病気」

「寒がり」は、甲状腺機能低下症の代表的な症状の一つです。甲状腺ホルモンは、体の代謝やエネルギー産生を調節する役割を担っており、不足すると寒がり、基礎体温の低下、眠気、むくみなど、さまざまな症状が現れることがあります。発症頻度は女性に多く、加齢とともに患者数が増えていくため、気になる症状がある場合は専門の医療機関で相談しましょう。

体温を上げれば健康になる?という誤解

「体温を上げると免疫力が上がる」「体温が低いと病気になりやすい」といった説には、科学的根拠が乏しいものもあります。

平熱は個人差があり、おおよそ35℃〜37℃台の範囲内であれば正常と考えられます。人間には外気温に関わらず、体温を一定に保とうとする働きがあり、これは生命維持に不可欠な機能です。そもそも安静にしているときの体温を1℃上げることは、簡単ではありません。

体温の観点からは、以下のように基本的な生活習慣を整えることが大事です。また、体温リズムを安定させます。

  • バランスの取れた食事
  • 規則的な生活リズムと十分な睡眠(休養)
  • ストレスケア
  • 適度な運動をする

自分の「いつもの体温」を知っておこう

体温は、家で手軽に測れる数少ない健康指標のひとつです。ただし、平熱に正解はなく、体温は人それぞれで日々変化するものです。ぜひ「普段の自分の平熱がどのくらいか」に目を向けてみましょう。体温は、体の状態を静かに教えてくれるサイン。血圧や体重と同じように、体からのサインに気づけることが、健康生活への第一歩です。

CREDIT
取材・文:及川夕子 編集:HELiCO編集部+ノオト イラスト:福田玲子 図版:松本さくら(linen inc.)

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