鼻水や鼻づまりは、風邪や花粉症でもよくある身近な症状です。けれど、「いつもの風邪より長引く」「顔の奥が重い」「においがわからない」「子どものいびきがひどい」などの症状が続いているのであれば、「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」が隠れているかもしれません。この記事では、副鼻腔炎のしくみや見分け方、受診の目安とセルフケアの方法などをわかりやすく解説します。
- 教えてくれるのは…
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- 細矢 慶先生
- 鼻とにおいのクリニック池袋 院長
日本医科大学卒業。耳鼻咽喉科を専門に大学病院や関連病院で経験を積むほか、フランス「パスツール研究所」への留学を経験。2024年4月に『鼻とにおいのクリニック池袋』を開院。鼻づまりなどを引き起こす鼻の病気、においを感じづらくなる嗅覚障害に対する専門的な診療を行っている。副鼻腔手術、アレルギー性鼻炎手術、嗅覚障害が専門。日本医科大学武蔵小杉病院耳鼻咽喉科非常勤。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医・耳鼻咽喉科専門研修指導医、日本鼻科学会 鼻科手術指導医、日本アレルギー学会 アレルギー専門医。
[監修]細矢 慶先生:https://hanatonioi-cl.com/doctor/
鼻とにおいのクリニック池袋:https://hanatonioi-cl.com/
鼻の周囲の「空洞」で炎症が起きる副鼻腔炎
鼻づまりや嗅覚障害などを引き起こす「副鼻腔炎」。この病気は、風邪などの感染をきっかけとした炎症や、アレルギー性鼻炎などが背景となって起こることがあります。
副鼻腔とは、鼻の左右(頬のあたり)、鼻の奥、両目の間、ひたいに計4対ある空洞のことです。副鼻腔は、鼻の穴(鼻腔)と細い通り道でつながっていますが、ウイルス感染などで鼻の粘膜が腫れると、鼻腔への通り道がふさがりやすくなります。
すると、副鼻腔でつくられる粘液(鼻水)が外に出にくく、たまりやすくなります。その結果、炎症が悪化して副鼻腔炎につながることがあるのです。
「急性副鼻腔炎」と「慢性副鼻腔炎」の違い
副鼻腔炎には急性と慢性があり、発症から4週間以内のものを「急性副鼻腔炎」、3か月を超えて長引くものを「慢性副鼻腔炎」と呼びます。
慢性化には、鼻中隔(鼻を左右に分けている壁)が曲がっているなど、鼻の構造の個人差に加えて、感染後の免疫反応の起こり方(体質)などが影響する可能性も指摘されています。
・急性副鼻腔炎:風邪の後に発症し、4週間以内に軽快する
・慢性副鼻腔炎:3か月以上続く。治療が長引いたり、手術を検討したりすることも
さらに、慢性副鼻腔炎は、次の2つに分類されます。
- 好酸球性副鼻腔炎:粘り気の強い鼻水、鼻づまり、嗅覚障害、鼻茸(はなたけ・鼻ポリープ)ができやすいなどが特徴。喘息と関連することもあり、治療が長期化する場合がある。国の指定難病で、難病医療費助成の対象になりうる
- 非好酸球性副鼻腔炎:一般的な慢性副鼻腔炎
風邪や花粉症との違いは?見分け方のポイント
鼻水や鼻づまりは、風邪や花粉症でもよく見られる症状です。副鼻腔炎を疑う目安として、それぞれ次のような特徴があります。
- 風邪:数日〜1週間ほどで軽くなることが多い
- 花粉症(アレルギー性鼻炎):季節性がはっきりしやすく、くしゃみや目のかゆみを伴うことがある
- 副鼻腔炎:鼻づまり・鼻水が長引く、顔の奥の痛みや後鼻漏(鼻水が喉に垂れる)、嗅覚障害が出ることがある
大人と子どもで異なる、副鼻腔炎の症状・受診の目安
次のような状態が続く場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。放置すると慢性化したり、中耳炎などの合併症につながったりするリスクがあるため、適切な治療を受けることが大切です。
大人と子どもでは気づくポイントが異なります。
大人に多い症状
□ 鼻づまり・鼻水が1週間ほど経ってもよくならない/悪化している
□ 黄色や緑っぽい粘り気のある鼻水が出る
□ ほおや目の周り、頭、ひたいに痛み・重だるさがある
□ 後鼻漏(鼻水が喉に垂れる)や咳が続く
□ においがわかりにくい
□ 鼻から嫌なにおいがする
□ 鼻づまりの症状で生活に支障が出ている(睡眠の質が落ちる、集中できない)
子どもはここも合わせてチェック
子どもの場合は、大人のチェックポイントだけでなく、下記もチェックしてみてください。
□ 鼻がつらそうで眠りが浅い/機嫌が悪い
□ 鼻をよくすする、頻繁に鼻をかむ
□ 口呼吸が目立つ
□ 痰が絡んで咳き込む
※鼻の奥にあるリンパ組織・アデノイドが肥大した状態。6歳ごろをピークに大きくなる傾向がある
副鼻腔炎を予防!日常に取り入れたい「鼻」のセルフケア
副鼻腔炎の予防には、鼻粘膜を傷つけない生活が大切です。副鼻腔炎を予防するためのセルフケアや、生活習慣について紹介します。
鼻は優しくかむ・ほじらない
鼻の粘膜は、非常に薄くデリケートです。強い刺激を与えると、粘膜が傷ついて、かさぶたができ、それが鼻づまりの原因になります。また、鼻を強くかむと、耳に負担がかかったり、中耳炎の原因になったりすることもあります。
鼻をかむときのコツ
- 左右片方ずつかむ
- ゆっくり、力を入れすぎない
鼻粘膜の乾燥を防ぐ
空気が乾燥していると、鼻の粘膜も乾きやすくなります。加湿器などで部屋の湿度を保ち、鼻粘膜の乾燥を防ぎましょう。
鼻の周りを温める
ホットタオルで鼻の周りを温めると、鼻の血行がよくなり鼻がすっきりすることがあります。鼻づまりがつらいときに試してみましょう。
鼻うがい(鼻洗浄)を行う
鼻粘膜をいつも清潔にしておくためには、鼻うがい(鼻洗浄)も有効です。花粉の時期や風邪が流行る時期には、風邪の予防や鼻症状の回復の助けにもなります。お子さんの場合、市販の鼻うがいグッズを使って毎日行うといいでしょう。
風邪や花粉症を長引かせないように注意する
風邪がきっかけで副鼻腔炎になるケースも多いので、風邪をひいたときには無理をせず、極力長引かせないことが大切です。アレルギー性鼻炎も、症状が重くならないうちに医療機関を受診するなど、早めのケアを心がけましょう。花粉症は初期療法として、花粉飛散時や症状が出始めたらすぐに薬を使い始めると症状軽減につながります。
市販の点鼻薬は使い過ぎに注意する
血管収縮剤を含む点鼻薬は、使い過ぎると薬剤性鼻炎を起こし、かえって鼻づまりを悪化させることがあります。使用回数を守り、症状が長引くときは医療機関で相談しましょう。
嗅覚(匂い)を意識する
身の回りの匂いを意識して過ごすことは、鼻の異常に気づきやすくなるだけでなく、近年では、脳の活性化やフレイル(虚弱)予防、生活の質(QOL)の向上に大きく貢献するといわれています。日常生活では、コーヒーや精油などのアロマ、花の香りなどを楽しむことも、手軽なトレーニングになるでしょう。
禁煙する
タバコの煙に含まれる物質は、鼻の粘膜に影響があり、副鼻腔炎や嗅覚障害の要因になることがあります。喫煙の習慣がある人は禁煙を心がけましょう。
医療機関では何をする?検査から治療(薬・手術)まで
副鼻腔炎が疑われる場合、内視鏡で鼻腔内の状態を確認し、必要に応じてCT検査で副鼻腔の炎症の広がりや膿の有無などを確認します。
治療は状態に応じて、薬(炎症を抑えたり分泌物を整えたりする)や点鼻薬などを組み合わせます。
急性副鼻腔炎の治療
抗生物質や炎症を抑える薬、局所療法として膿を吸って鼻のなかをきれいにする治療法、ネブライザー(蒸気を吸う)療法などがあります。
慢性副鼻腔炎の治療
抗生物質や鼻汁をサラサラにする薬が併用されるほか、点鼻薬も使用します。アレルギーが原因なら抗アレルギー薬も活用。なかには歯が原因の副鼻腔炎もあり、その場合には抜歯など、原因に応じた処置が行われます。
鼻の不調はQOLに直結。長引くなら医療機関に相談を
鼻水・鼻づまりは「よくあること」と軽く見られがちですが、じつは睡眠の質や集中力を低下させるなど、QOL(生活の質)に大きく影響します。
「どろっとした鼻水」「頭痛・目のまわりの痛み」「においがわからない」「子どものいびきがひどい」などの症状が続く場合は、我慢してやり過ごすのではなく、医療機関を受診して原因を確かめましょう。鼻の調子を整えることは、日々の過ごしやすさにもつながります。