最近、心に余裕がない、疲れが抜けにくい、眠りも浅い……。そんな状態が続くとき、背景に「セロトニン」というホルモンの乱れが関係していることがあります。セロトニンは気分の安定だけでなく、睡眠や食欲、自律神経のバランスにも関わる大切な物質。この記事では、セロトニン不足のサインや原因、今日からできる整え方、更年期との関係まで、専門家のコメントを交えて解説します。
- 教えてくれるのは…
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- 小野 陽子先生
- 対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座
岩手医科大学卒。聖路加国際病院にて初期研修・後期研修、その後東邦大学医療センター大森病院にて心療内科の研鑽を積み、2021年より現職。産婦人科専門医と心療内科医の両方の資格をもつ。医学博士・産婦人科専門医・女性ヘルスケア専門医・心身医療専門医・女性心身医学会認定医師・産業医・健康スポーツ医。
[監修者]小野 陽子先生:https://w-wellness.com/wp/ginza/staff/
対馬ルリ子女性ライフクリニック:https://w-wellness.com/
セロトニンとは?女性の心と体を整える“脳内物質”
セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれることがありますが、正確には脳内で働く神経伝達物質のひとつです。
脳の中では、神経細胞同士が情報をやり取りしながら、心身の状態を調整しています。セロトニンはこの情報伝達に関わり、気分(感情)・睡眠と覚醒のリズム・食欲・認知機能など、幅広い働きを支えているとされています。 女性特有のPMSやPMDD、更年期の不調にも深く関わっています。
セロトニンの不足は心と体にどのように影響する?
セロトニンは、気分の安定や不安の調整に関係し、分泌が低下すると「不安が強くなる」「落ち込みやすくなる」「睡眠がうまく取れなくなる」といった変化が起こりやすいと考えられています。
さらに、セロトニンは腸の動きにも関与し、消化・吸収を助けるほか、最近では骨代謝(骨の生まれ変わり)などへの関与も注目されています。
セロトニン不足は更年期の不調にも関係する?
更年期の女性の体では、卵巣機能の低下・停止により、女性ホルモンであるエストロゲンの変動・低下が起こります。この変化に体が対応しきれず、自律神経のバランスが乱れると、身体的・精神的にさまざまな不調(更年期症状)が起こります。
エストロゲンの変動に加えて、セロトニンなど神経伝達物質のバランスが更年期の不調に関わることもあります。例えば、更年期に起きやすい抑うつ状態は、エストロゲンの低下に加え、ノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質の分泌量、家庭や仕事での負荷などの社会的要因も重なることで起こると考えられています。
PMS、PMDDとセロトニン不足の関係
女性の10代〜40代には、PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)で気分の落ち込みが強く出る人もいます。こうした症状にもセロトニンが関係している可能性が報告されており、治療として、セロトニンの働きを調整するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使われることもあります。
さらに、PMSの経験がある人は、その後更年期に入ったときに精神症状が出やすいこともデータで示されています。更年期世代に入り、「以前からPMSでしんどい思いをしていた」「最近、またメンタルが揺れやすい」と感じている方は、早めのケアが大切です。
これって当てはまる?セロトニン不足のサイン
以下の状態が続く場合は、セロトニン不足のサインかもしれません。
- 以前よりイライラしやすい
- 気分が落ち込みやすい/涙もろくなる
- 不安が強く、考えが止まらない
- 眠りが浅い、途中で目が覚める
- 朝起きた瞬間から疲れている
- 集中力が続きにくい
- 甘いものがやめられない/食欲が増える、または落ちる
- 何もしていないのに疲れる
- 胃腸が重い、便秘や下痢が続く
必ずしも「当てはまる=セロトニン不足」とは言い切れません。ただし、こうしたサインが続く場合は、生活を見直して整えましょう。
気軽にできる!セロトニンを増やす(整える)4つの習慣
セロトニンの働きが乱れる背景には、ストレスや睡眠不足、栄養の偏り、日光不足や運動不足、腸内環境の乱れなどが関係していると考えられています。また日光浴や運動療法は、セロトニンを増やす可能性があるとされています。 まずは、以下の習慣をできることから始めてみましょう。
1朝の光を浴びる
太陽の光は、体内リズムの調整に役立ちます。朝、起きたらカーテンを開けて窓辺に立つことから始めましょう。曇りや雨の日でも、セロトニンを整えるには十分な光量があります。
2少し息が上がる程度のウォーキングをする
ウォーキングなどの有酸素運動(リズム運動)は、セロトニンを増やす助けになります。目安は「週2〜3回以上」「1回につき15〜30分」「少し息が上がる程度」です。 まずは5分でもいいので、「ひと駅分歩く」「昼休みに少し外に出る」など、生活に組み込みやすい方法で取り入れましょう。
3寝る前の“ナイトルーティン”を決める
眠りのスイッチを入れるために、五感に訴える何かを取り入れましょう。例えば、白湯を飲む、照明を落とす、アロマを焚く、音楽を流すなど、「自分はこれをすると眠れる」という体への合図をつくって習慣にするイメージです。
4ベッドは“寝るだけの場所”にする
ワンルームなどでは難しい場合もありますが、ベッドは寝るためだけの場所にして、スマホを持ち込まない工夫を。寝る直前のスマホは脳が覚醒しやすく、眠りの質を下げる原因にもなります。
- 心と体をもっと元気に!ホルモンが喜ぶ生活習慣
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心や体のいろいろな働きを調節してくれているホルモン。食べる、眠る、集中する、幸せを感じる、ストレスに対抗する、体温を一定に保つ、子どもを産み育てるなどにもホルモンの働きが欠かせません。https://www.aisei.co.jp/helico/health/hormone-rejoicing-habit/
つまり、私たちが健康でいるためには、ホルモンを分泌・循環しやすい環境を整えておくことが大切です。この記事では、ホルモンの力を引き出すために知っておきたい知識や生活習慣を紹介します。
トリプトファンを意識した食事でセロトニンの産生をサポートする
体内でセロトニンをつくるには、必須アミノ酸である「トリプトファン」の摂取が不可欠です。必須アミノ酸は体内で合成できないため、食事から摂る必要があります。トリプトファンは大豆製品や乳製品など、タンパク質が多い食品に含まれ、これらを摂取したうえで運動することで、脳内で使われやすくなり、セロトニンの産生が促される可能性が高まるというわけです。そのほか、ビタミンBやD、ミネラル類(鉄、マグネシウム、亜鉛)も、セロトニンの合成を助けてくれる重要な栄養素です。
トリプトファンを含む食べ物
◯大豆製品(納豆、豆腐など)
◯卵
◯乳製品(ヨーグルト、チーズなど)
○魚、肉(マグロ、カツオ、鶏肉など)
- 簡単おいしい!「お守りドリンク」でホルモンの働きをサポート
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毎日を元気に過ごすために大切なホルモン。https://www.aisei.co.jp/helico/health/hormone-supporting-recipe/
なかでも、幸福を感じやすくなる「セロトニン」、女性の健康や美容において重要な役割を担う「エストロゲン」は、心の健康とも密接に関係しています。
これらのホルモンはストレスや加齢などで不足することがありますが、食材に含まれる栄養素によって働きをサポートできるそう。
食材をミキサーにかけたり、温めたりして、おいしく飲みながら心身をケアできる “お守り”ドリンクのレシピを3つ、管理栄養士の美才治真澄さんに教えていただきました。
食事でタンパク質を補いにくい場合には、市販のプロテインなどを活用するのもよいでしょう。
こんなときには相談を!医療機関への受診の目安
セロトニンの乱れは、生活習慣で整えられる部分もありますが、自己判断では見極めが難しいことも。以下のような症状が2週間以上続く場合には、無理をせず医療機関へ相談してみてもよいでしょう。
- うまく眠れない/食欲が湧かない
- 日常生活に支障が出ている
- 気分の落ち込みが強く、回復しない
受診先に迷ったら、通いやすい内科でも問題ありませんし、更年期にある人や更年期症状が気になる場合は婦人科、気分の落ち込みが強い場合は心療内科・精神科、うまく眠れなくてつらい場合は睡眠外来など、行きやすい窓口からで構いません。
セロトニンに関するよくある質問
Q. サプリでセロトニンを増やすことはできる?
A. サプリには過度に期待せず、まずは生活習慣の見直しを。
サプリでセロトニンの材料やサポートになる栄養素を補うことはできます。ただし、サプリは研究段階のものもあるため、効果を過度に期待せず、睡眠・運動・食事の見直しもあわせて行いましょう。食事でタンパク質を補いにくい日などは、プロテインを活用するなど“続けやすい工夫”をするのも一案です。
Q. セロトニンを増やせば増やすほど、心身に現れた症状は良くなる?
A. 増やせば増やすほどよいわけではありません。
セロトニン不足によるうつ病や不安障害の治療では、脳内のセロトニンに作用する薬として「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」が用いられます。しかし、「増やせば増やすほどよい」というものではありません。治療は必ず医師と相談しながら進めましょう。
Q. 症状が軽減してきたら、薬を自己判断でやめてもいい?
A. 自己判断せずに、必ず医師に相談を。
自己判断で急にやめるのはおすすめできません。減薬は、必ず医師と相談しながら進めてください。
Q. PMSはホルモンバランスが乱れているから起きる?
A. ホルモンの変動が不調の原因になるのは事実。しかしホルモンバランスが“乱れている”わけではない。
PMSは、「ホルモンバランスが乱れている」から起こるのではありません。排卵と生理が毎月定期的にあり、女性ホルモンが正常に変動しているからこそ起こりやすい現象といえます。毎月のリズム=正常なホルモン変動がきっかけとなって脳内物質が影響を受け、心身に不調が起こるのです。
- 生理前に不安定になるからだとこころ 「PMS」はなぜ起こる?
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生理が始まる少し前から、怒りっぽくなったり落ち込んだりといった気分の変調や、頭痛、だるさなどの不調を感じてつらいという経験はありませんか。生理前の不快な症状に悩まされているなら、それは「PMS(月経前症候群)」かもしれません。なかには家事や仕事が手につかなくなってしまう、ひどく感情的になり人間関係のトラブルに発展してしまうなど、日常、社会生活に支障をきたすケースもあります。https://www.aisei.co.jp/helico/health/women-healthcare-pms-pmdd/
PMSで困っている場合、どうしたら楽になれるのでしょう。本記事では、PMSの症状や見分け方、セルフケア、治療法について解説します。自分の心と体に向き合って、快適な対処法を見つけましょう。
まずは、小さなセルフケアから
忙しい毎日のなかで、自分のケアが後回しになってしまうこともあるでしょう。心身の不調を感じたときは、朝の光を浴びる、5分だけ歩く、寝る前にスマホを置く——その小さな習慣が、心と体を“回復しやすい状態”へ戻してくれるかもしれません。体の不調と気持ちの不調はリンクしていて、どちらか一方からでもアプローチを始めることで改善が期待できます。まずはできそうなことから、始めてみませんか。