冬の入浴は温度差に注意!「ヒートショック」の予防と対処法

冬の入浴は温度差に注意!「ヒートショック」の予防と対処法

朝晩の冷え込みが強まると、家のなかでも温度差を感じることが増えてきます。リビングはポカポカ、でも脱衣所や浴室はひんやり——。じつはその温度差こそが、入浴中の急な体調変化「ヒートショック」の原因です。

冬場の入浴時にめまい、立ちくらみのほか、失神や脳梗塞、ときに突然死などを招くヒートショックは、誰にでも起こり得る健康リスクです。冬を安全に過ごすために、その予防法や、起きた場合の正しい対応について知っておきましょう。専門家のアドバイスとともにご紹介します。

教えてくれるのは…
関根 一朗先生
関根 一朗先生
湘南鎌倉総合病院 救急総合診療科部長

日本一の救急搬送受け入れ数である 湘南ER(湘南鎌倉総合病院)で働く救急医。赤ちゃんのおむつかぶれ相談から心肺停止の蘇生行為まで、さまざまな疾患を幅広く診療。特技は、初対面の子どもを泣かさずに処置すること。 モットーは「正しく、優しく、伝わる医療を」。日本救急医学会救急科専門医、同指導医。近著に『大切な人に話したくなる 体と命のなぜなに ぶつけたら痛いのはどうして? ケガをしたらどうする?』(著者:湘南ER/出版社:KADOKAWA)がある。
 
[監修者]関根 一朗先生:https://www.skgh-er.jp/about/
湘南鎌倉総合病院HP:https://www.skgh.jp
湘南ER 公式Instagram:https://www.instagram.com/shonan_er

なぜ危険?ヒートショックが起こる原因と主な症状

冬になるとよく耳にする「ヒートショック」という言葉。急激な温度変化により血圧が大きく変動することで、さまざまな健康被害が起こる状態を指します。特に起こりやすいのは、冬の入浴時です。

危険なタイミングは主に2つ。
1つは、暖かい部屋から急に寒い脱衣所、冷えた浴室へと移動した直後。
もう1つは、熱めの湯船に長く浸かっているときです。

人の体は、周りの温度に合わせて、血管を広げたり縮めたりします。寒い脱衣所では血管が縮んで血圧が上昇し、冷え込んだ浴室で血圧はさらに上昇していきます。その後、温かい湯に長くつかっていると、今度は血管が拡張して血圧が急降下する事態に……。

heat-shock-cut01

この急激な血圧の変化によって、脳や心臓に負担がかかり脳出血、脳梗塞、心筋梗塞などが発生しやすくなります。また、血管が拡張すると、一時的に脳への血流が減少して貧血の状態になり、めまい、立ちくらみ、失神(一過性の意識消失)を起こすことがあります。湯船から出ようとして、転倒し怪我をするケースや、入浴中の意識消失により溺れて亡くなる事故も起きています。

関根先生
関根先生

ヒートショックによる死亡者は、正確な統計が取りにくいため明らかになっていませんが、浴槽での死亡件数は、推計で年間2万人以上(2013年厚労省研究班から推定)にのぼります。また、東京都健康長寿医療センター研究所の研究によると、2011年の1年間で約17,000人が「ヒートショック」に関連して急死したと推計されています。そのうち約8割は高齢者で、冬場の入浴中の急死者は夏場の11倍も多く、交通事故による死亡者よりも多いとも言われています。

高齢者だけじゃない!若い年代にもリスクあり

65歳以上の高齢者や、循環器系の疾患を持つ人、高血圧や糖尿病を持つ人は、血圧変動に伴うリスクが大きい傾向にあり、ヒートショックには特に注意が必要です。

一方で、「ヒートショックは高齢者の問題」と思われがちですが、そうとも限りません。脱水状態での入浴は、誰しも血圧が不安定になりやすいため、若い世代でも注意が必要です。また、疲れているときや睡眠不足、インフルエンザなどで高熱があるときにも、自律神経の働きが乱れ、ヒートショックのリスクが生じます。

意外な場面でも注意が必要!?

日常生活のなかで、血圧変動が起こりやすい場面を紹介します。以下の場面では、水分摂取をし、しばらく時間を置いてから入浴するように心がけましょう。

  • 食後:血液が胃腸に集中し、心臓や脳への血流が減少するため、特に高齢者は、食後低血圧によるめまいや失神が起こりやすくなります。
  • 飲酒後:アルコールによって自律神経が乱れることに加えて、脱水状態になりやすい、血管拡張作用により血圧が下がりやすいなど、ヒートショックのリスクが高まります。
  • 起床直後:寝ている間に脱水傾向にあったり、自律神経がまだ正常に活動できていなかったりして、血圧が不安定になるため注意が必要です。
  • トイレの直後:特に排便後は、排便時のいきみ(腹圧上昇)や直腸への物理的刺激で迷走神経反射が起こります。これにより、血圧低下と心拍数低下を引き起こして脳への血流が減り、意識消失します。

冬のお風呂を安全に楽しむ、ヒートショック予防策

ヒートショックの引き金は「温度差」なので、これを減らすような対策を心がけましょう。高齢者がいる家庭では、家族も注意を払うことが大切です。

ヒートショック予防策

◯ 脱衣所や浴室を暖めておく
◯ 同居の家族に声をかけてから入浴する
◯ 入浴前にコップ1杯ほどの水分補給をする
◯ 湯につかる前にかけ湯をする
◯ 湯温は41度以下に設定する
◯ 熱い湯温で長風呂をしない(お湯につかる時間は10分まで)
◯ 体調がすぐれないときは、シャワーで済ませる・入浴を避ける
◯ 浴槽から急に立ち上がらない

heat-shock-cut02
関根先生
関根先生

血圧の薬を服用していると、急な温度変化が起きたときに血圧のコントロールが難しくなる場合があります。だからといって、自己判断で服用を中断してはいけません。
 
薬を飲んだ直後の入浴を避ける、湯船から立ち上がる際はゆっくりと頭を持ち上げるなど、環境やお風呂の入り方を工夫することでリスクを減らしていきましょう。

ヒートショックが起きたときの対応・応急処置

ヒートショックによる失神や脳出血、心筋梗塞などの心血管系の病気は、突然発症するものであり予測しにくいという特徴があります。失神すると数秒から数分間意識がなくなってしまう場合もあるため、緊急時に取り得る対応を知っておきましょう。

ヒートショックの前兆になりうる症状の例

入浴中に以下の症状があれば、血流や脳・心臓などに異変が起きているサインです。

  • 動悸や息苦しさを感じる
  • 頭痛がする
  • めまいがする、ふらつく
  • 頭がぼーっとする
  • 体が自由に動かせない
  • 意識が遠のく
  • 視界がぼやける、暗くなる

対応すべき症状・ケースと対応法

ケースごとに対応は変わってきます。次のような対応を取りましょう。

自分の意識がもうろうとする・息苦しい・動けない・転倒した場合

① 可能なら急いで浴槽の栓を抜く
浴槽を空にすることで、意識を失ったとしても、溺れることはなくなります。
② しばらく横になり安静を保つ
浴槽のお湯が抜けたら、無理に立とうとせずに、横になれる状態なら横になります。脳に血流が戻ってくれば、動けるようになるでしょう。意識がはっきりして気分が良くなったら、起き上がり水分補給を。
③ 横になっても症状が良くならない場合には、119番へ救急要請する。もしくは、医療機関を受診する。

家族が倒れている・ぐったりしている・溺れているのを発見したら

① 浴槽の栓を抜く。他に家族がいれば、大声で助けを呼ぶ。
② 浴槽から出せるようなら救出する。出せない場合には、溺れないよう体勢を変える。
③ ここで意識が戻るようなら救出し、脱衣所に運んで横に寝かせる、水を飲ませるなどの対応をとる。
④ 両肩を叩きながら話しかけ、会話ができる状態か確認する。
反応がなければ119番へ救急車を要請する。(飲酒や薬を飲んでいると思われる場合には、そのことを伝えて指示に従いましょう)
⑤体にタオルや毛布などをかけて、安全な場所に寝かせ、反応がなく自然な呼吸をしていなければ胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始。
救急車到着まで胸骨圧迫を続ける。

胸骨圧迫の方法は、以下の動画を参考にしてください。

関根先生
関根先生

入浴中のヒートショックは、血圧の変動により起きています。そのため、倒れている人の体が熱くなっていても、体を冷やす必要はありません。むしろ体が濡れて体温が奪われやすい状態になっているので、安全な体勢で寝かせたら体を拭いて、タオルなどをかけ冷えないような工夫をしましょう。

快適・安全に冬の入浴を楽しもう

寒い季節は、とりわけお風呂時間が恋しいという方も多いでしょう。冷えた体がじんわりと温まっていく時間は、1日の疲れを癒してくれます。毎日の入浴時間を快適・安全に過ごすためにも、冬はヒートショックが多発しやすい時期ということを忘れずに。温度差に気をつけながら、お風呂時間を楽しみましょう。

CREDIT
取材・文:及川夕子 編集:HELiCO編集部+ノオト イラスト:フクイヒロシ

この記事をシェアする

クリップボードに
記事のタイトルとURLをコピーしました。
ピックアップ記事
  • 症状・お悩みから探す
  • 部位から探す
  • 健康習慣から探す
  • 薬剤師と学ぶ

戻る

症状・お悩みから探す

  • 頭痛
  • 腹痛
  • 体の冷え
  • 体の乾燥
  • 肌荒れ
  • アレルギー
  • 尿の悩み
  • 目の疲れ・悩み
  • 歯の痛み・歯周病
  • ストレス・心の不安
  • 依存症
  • 睡眠の悩み
  • 疲労・だるさ
  • 自律神経の乱れ
  • 更年期・ホルモンの乱れ
  • 女性特有のお悩み
  • 男性特有のお悩み
  • 性感染症
  • 性・ジェンダーの悩み
  • 肥満・やせ
  • 汗・体臭
  • 加齢・老化
  • がん

戻る

部位から探す

  • 頭・脳
  • 口・歯
  • 胸・乳房
  • 呼吸器
  • 腹・胃腸
  • 腎臓
  • 泌尿器
  • 甲状腺
  • 手・足
  • 筋肉・骨
  • 肌・皮膚
  • 毛・爪
  • 女性特有の部位
  • 男性特有の部位

戻る

健康習慣から探す

  • 食事・レシピ
  • ストレッチ・運動
  • 睡眠
  • 入浴・温活
  • 休養
  • ツボ押し・マッサージ
  • スキンケア
  • 漢方薬・薬膳
  • 腸活
  • 心のセルフケア
  • 子育てお役立ち
  • 介護お役立ち
  • 衛生習慣
  • 健診・人間ドック
  • 豆知識・トリビア

戻る

薬剤師と学ぶ

  • 薬のこと
  • 薬局・薬剤師のこと
  • アイセイ薬局グループの取り組み