「かかりつけ医」を持ちましょう――。
そんな言葉を、どこかで聞いたことはありませんか。けれど実際には、何科を選べばよいのか、どんな医師を選べばよいのかわからず、そのままになっている人も少なくないかもしれません。発熱や健康診断の“要再検査”、更年期の不調、親の介護のことなど、いざというときに相談先が決まっていない不安は、思っている以上に心細いものです。
かかりつけ医とはどのような存在で、どのように探し、どんなときに相談すればよいのでしょうか。賢く医療を選択するための、実践的なポイントを解説します。
- 教えてくれるのは…
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- 石井 道人先生
- ファミリークリニックあざみ野 院長
2007年北里大学医学部卒業後、東京都立多摩総合医療センターで救急医療、総合診療を学ぶ。2013年より北海道・喜茂別町で唯一の医療機関、喜茂別町立クリニックに管理者として赴任。乳幼児健診から看取りまで、町民二千人の健康管理を担う。2020年9月より「ファミリークリニック あざみ野」を開業。かかりつけ医の普及を目指す「医療法人ミチテラス」代表。
[監修者]石井 道人先生:https://imfc.jp/clinic.html#clinic01
ファミリークリニック あざみ野:https://imfc.jp/
かかりつけ医とは「信頼して何でも相談できる医師」
「かかりつけ医」とは、健康に関することを気軽に相談でき、必要に応じて専門医や専門医療機関へつないでくれる医師のことです。
日本では、かかりつけ医になるための明確な登録制度はありません。患者側が、「この先生に健康管理をお願いしたい」と思うことで成り立つ関係です。診療科は問いません。
「かかりつけ医」を持つメリットと、賢い医療選択につながる理由
かかりつけ医を持つことには、いくつかのメリットがあります。
1情報が一元化され、予防につながる
かかりつけ医がいると、
- 既往歴(病歴)
- これまでの検査歴・家族歴
- 生活習慣
- 健康診断の結果
といった情報が分散せず、ひとつの視点で整理されます。そのうえで、「次に受けるべき検査は何か」や「いま必要な予防接種は何か」といった判断を、その人に合わせて提案してもらえます。予防の質が変わるのは大きなポイントです。
2時間と医療費の負担を減らせる
複数の症状をそれぞれ別の診療科で受診すると、そのぶん時間も費用もかかります。たとえば花粉症の時期に耳鼻科・眼科・皮膚科を回るのではなく、幅広く診てくれる医師がいれば、1か所で対応できる場合もあります。結果として、通院の負担や医療費の抑制につながることがあります。
3医療の“道案内”をしてくれる
「この症状は何科に行けばいいの?」と迷ったとき、適切なアドバイスをするのもかかりつけ医の大切な役割のひとつです。適切な専門医に紹介してもらえることで、患者側の自己判断の負担が軽減します。
4将来への“備え”になる
かかりつけ医は、健康管理の伴走者のような存在です。たとえば女性の場合、骨密度測定や転倒予防など、高齢になったときの骨折リスクへの対策を早めに相談できます。生活習慣の見直しも、一人では続きにくいもの。何かあったときに相談できる医師がいることで、無理のない改善が続けやすくなります。
結果として、健康状態の安定や将来の医療費の抑制につながる可能性もあります。
現在、国でもかかりつけ医機能の強化が議論されていますが、登録制は本格導入されていません。だからこそ、制度がどうなるかに関わらず、自分で選び、つながっておくことが大切です。
医師と薬剤師の連携でより質の高い医療を
かかりつけ医を持つと、健康状態を継続的にみてもらえるメリットがあります。しかし、日々の薬の管理や細かな体調変化の相談まで含めると、医師だけでは完結しないケースもあります。そのため近年は、かかりつけ医と、かかりつけ薬局(薬剤師)が連携して患者さんを支える体制が広がっています。
- 「かかりつけ薬剤師」を持とう。メリットや利用方法などを解説
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薬のことだけでなく、健康や介護など幅広い知識や豊富な経験を持つ薬剤師を、専任のパートナーとして指名することができる「かかりつけ薬剤師」制度。かかりつけ薬剤師を持つことのメリットや利用方法などについて、詳しく解説します。https://www.aisei.co.jp/helico/medicine-pharmacy/about-personal-pharmacist/
「かかりつけ医」を選ぶポイント
すべてを満たす必要はありません。「この医師なら相談してみたい」と思えるかどうかの目安にしてみましょう。
信頼の土台になるポイント
科学的根拠を説明してくれる
- 診断や治療の理由を、根拠を示して説明してくれる
- たとえば、「なぜこの薬なのか」「なぜいまは検査をしないのか」を言葉にできる
不必要な検査を勧めない
- 検査前に見立てをつけて、「必要・不要」の理由を説明してくれる
生活背景を理解しようとする
- 症状だけでなく、仕事や家庭環境、生活習慣などを丁寧に聞こうとする姿勢がある
- “その人自身”を見ようとする
家族の相談もしやすい雰囲気がある
- 子どもの受診ついでに自分の体調も相談できるなど、気軽に話せる空気がある
将来の安心につながるポイント
主治医意見書を快く書いてくれる
- 介護認定に必要な書類などを、快く引き受けてくれる
介護や訪問診療との連携がある
- 通院が難しくなった場合の選択肢を、一緒に考えてくれる
患者の希望を尊重してくれる
- 「自宅で過ごしたい」「できるだけ通院回数を減らしたい」などの思いを受け止めてくれる
チーム医療体制がある
- 医師やスタッフ間の連携が取れている
姿勢や雰囲気を見るポイント
他院を否定しない
- 前の医師を批判するのではなく、建設的な提案をしてくれる
理念や地域活動が具体的
- ホームページに具体的な理念や目標が示されている
- 地域活動に参加している
待合室の雰囲気がよい
- スタッフの対応や空気感が心地よく感じられる。不快ではない
「かかりつけ医」の疑問Q&A
こちらが「かかりつけ医」だと思っていても、医師の側はどう思っているのかわからない……など、不安に思うこともあるかもしれません。ここでは、「かかりつけ医」を選ぶ際のさまざまな疑問について、石井道人先生に解説していただきます。
Q. 一方的に「かかりつけ医」だと思っていていい?
Q. 世代によって選び方は変わる?
Q. かかりつけ医を変更してもいい?
Q. かかりつけ医の診断に疑問を感じた場合、他の医師にかかってもいい?
Q. かかりつけ医を探すときに、情報はどこで得られる?
かかりつけ医は豊かな人生を歩むためのパートナー
かかりつけ医は、「重い病気」に備えるためだけの存在ではありません。体の小さな変化、将来への不安、家族のことを一緒に考えてくれる医療のパートナーです。「ここなら、また相談してみたい」と思えるかどうか。その感覚を大切にしてみましょう。元気なうちに出会っておくことが、将来の安心につながります。