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顔の毛、どう対処するのがいい?皮膚科医に聞きました

顔の毛、どう対処するのがいい?皮膚科医に聞きました

マスク生活が続き、しばらく顔の毛のケアをサボっていたという人も少なくないのでは。おでこや頬などのうぶ毛のほか、眉毛、まつげなど、顔には太さや濃さが異なる毛がたくさん生えています。部位によっては、正しい処理方法に悩んでしまうこともあるでしょう。今回は顔の毛をケアする方法や素朴な疑問について、「私の皮膚科」院長で皮膚科専門医の棟田加奈子先生にお話をうかがいました。

教えてくれるのは・・・
棟田 加奈子先生
棟田 加奈子先生
私の皮膚科 院長

東京医科歯科大学卒業後、同大学病院、都立墨東病院、横浜市立みなと赤十字病院などの総合病院や美容クリニックを経て、2022年外苑前に私の皮膚科を開設。大学病院・総合病院で皮膚科医として幅広い皮膚疾患に対応した経験と、皮膚科専門医としての知識を活かし、一人ひとりにあった、医学的根拠のある治療を行っている。日本皮膚科学会専門医。

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顔の毛をケアするメリットとデメリット

頬やおでこ、口周りなどに何気なく生えている毛。まめにケアしている人もいれば、ほとんどケアをしていない人もいるかもしれませんが、そもそも顔の毛をケアするメリットとデメリットとは、どのようなことなのでしょうか。

【メリット】肌がきれいに見える

日本人などの東アジア系の人種は、髪の毛や体毛が黒色をしていることが多いため、うぶ毛ほどの細さであっても、顔全体に生えていると肌がくすんで見える傾向が。メイクの際にも、下地やファンデーションなどを塗るときにうぶ毛があることで、きれいに仕上がりづらい場合もあります。

棟田先生
棟田先生

鼻や鼻まわりの毛穴からちょこっと顔を出している短い毛は、毛穴の黒ずみとして認識されたり、毛穴を目立たせたりする原因にもなります。「鼻の黒ずみが気になる」といって、当院を受診される方の約半分は、毛穴に角栓が詰まっているだけではなく、短い毛が生えることで黒く目立ってしまっている場合もあります。

毛にはさまざまな役割があるので一概にはいえませんが、美容的な観点では、うぶ毛は「ケアしたほうがいい毛」といえるでしょう。

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【デメリット】肌に炎症が起きたり、埋もれ毛ができたりすることも

カミソリやシェーバーで剃る場合は、肌へのダメージが考えられます。刃によって肌が傷ついたり、肌を守る役割を持つ角質層が必要以上に削られてダメージを受けたり、場合によっては炎症が起こることもあります。

また、毛を抜いた場合、毛がなくなった毛穴の表面を角質層が覆ってしまい、新しく育ってきた毛が肌の表面に出ることのできない「埋もれ毛(埋没毛)」と呼ばれる状態になることがあります。埋もれ毛ができると炎症が起きて、ニキビができることも少なくありません。さらに、何度も抜いて毛が生えなくなると、あとから「やっぱりここに毛を生やしたい」と思っても、生えてこないことがある、というのもデメリットになります。

棟田先生
棟田先生

毛は抜き続けるといずれ生えてこなくなりますが、どれくらいで生えなくなるのかは、毛根の強さなど、個人によって異なります。ちなみに「毛は剃ると濃くなる」という話もありますが、それは剃ることによって、毛の断面が斜めに見えて太くなったように感じるからで、実際に濃くなっているわけではありません。

顔の毛は、どう処理をするのが適切?

肌荒れや炎症、埋もれ毛をできるだけ避けるためには、どのようにケアするのが適切でしょうか。

ポイントは「清潔」「肌を守る」「定期的な角質ケア」

毛を剃ったり抜いたりした箇所から菌やウイルスが肌内部に侵入し、炎症が起こらないよう、あらかじめ肌やケア用品を清潔にしておくことが重要です。

カミソリやシェーバーを使って毛を剃る場合は、ジェルやクリーム、泡立てたせっけんなどを肌に塗り、刃のすべりを良くして、肌を傷つけないように心がけましょう。

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また、毛を処理したあとの肌ケアも大切です。処理後に伸びてきた毛が埋もれ毛にならないよう、ピーリング(角質ケア)効果をうたった化粧品や洗顔料を使って、不要な角質をしっかり取り除いておくのがおすすめです。

棟田先生
棟田先生

ピーリングは、毛の処理をした1週間後くらいに行うのが良いでしょう。顔の毛のケアと合わせて定期的に行うと効果的です。また、肌への負担やセルフケアの手間を考えると、医療用脱毛で顔のうぶ毛を処理するのもひとつの方法。うぶ毛の処理には、蓄熱型のレーザーを毛根に照射し、毛を生やす指令を出す器官(バルジ領域)にダメージを与える方法が有効です。個人差はありますが、顔のうぶ毛であれば、1か月おきに5回ほど施術をすれば、だいぶ効果を実感できるはずです。

顔の毛の素朴な疑問Q&A

「鼻毛は抜かないほうがいいの?」「なぜ、1本だけ太い毛があごに生えるの?」など、顔の毛に関する素朴な疑問と解説をまとめました。

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鼻毛は抜いてもいい?

体内に菌やウイルス、ホコリなどが入り込まないようにしている鼻毛。「抜いてはいけない」といわれますが、本当のところはどうなのでしょうか。

棟田先生
棟田先生

鼻のなかは湿っていて、菌が繁殖しやすい環境が整っています。鼻毛を抜くことで毛穴が傷つき、そこから菌が入り込んで炎症を起こしたり、感染症にかかったりすることもあります。鼻毛は抜かずに、カットする程度にとどめましょう。

ほくろの毛は抜いてもいい?

ほくろは母斑細胞(メラニン色素を産み出すメラノサイトが変化したもの)が皮膚の特定の箇所に集中してできたものです。母斑細胞はメラニンをつくるので黒く太い毛が育ちやすい環境が整っているといわれます。

しかし、ほくろから生えた毛は「抜くとがんになる」といわれることもあり、気になっているのに毛を抜かずに我慢している人もいるのでは? 本当にほくろの毛を抜いてはいけないのでしょうか。

棟田先生
棟田先生

ほくろから生えている毛を抜いたり、抜くときに肌を傷つけたりすることが刺激になって、がんになってしまう可能性は否定できません。とはいえ、がん化するのは、ごくまれなケースといってよいでしょう。出血するようになったり、サイズや色が変わってくるようなら皮膚科を受診しましょう。どうしても気になる人はほくろを除去してしまうのも選択肢のひとつです。

あごに太い毛が生えるのは、男性ホルモンが増えたせい?

あごに生える毛=ひげは、男性ホルモンであるアンドロゲンが影響して生える毛です。そのため、アンドロゲンの分泌量が多い、男性の特徴として知られています。

しかし、女性でもあごに突然1本だけ、ひげのような太くて硬い毛が生えることがあります。「もしかして男性ホルモンが増えている?」と心配になる人がいるかもしれませんが、これはなぜなのでしょうか?

棟田先生
棟田先生

アンドロゲンは、少量ですが女性にも分泌されています。体調などによっては、分泌量が多少変化することもあるでしょう。

あごに太い毛が生えてくるのは20代半ばから30代にかけてよく見られます。この時期は、女性ホルモンも含めた性ホルモン全体の分泌量が人生で最も多くなる時期です。突然太い毛が生えることがあるかもしれませんが、誰にでも起こりえる現象なので、安心して大丈夫ですし、抜いてもOKです。

ただし、なかには病気の影響で男性ホルモンの分泌が大きく増加している場合もあります。太くて硬い毛が数本生えているだけではなく、口まわりの毛全体が太い毛になっていたり、手足の毛が濃くなったりしているなどの症状があれば、婦人科の受診をおすすめします。

顔のなかで、まつ毛と眉毛だけ濃いのはなぜ?

「顔の毛」とひと言でいっても、部位によってその濃さや太さ、長さはまちまちです。なかでもまつ毛や眉毛には比較的濃い毛が生えていますが、それはなぜなのでしょうか?

棟田先生
棟田先生

まつ毛や眉毛が濃いのは、目にホコリなどの異物が入らないようにするためです。

眉毛がある動物はヒト以外にも意外と多くいて、たとえばイヌやネコはヒトの眉毛にあたる部分の毛が長くなっていたり、キリンやラクダには目の上に眉毛のような毛の密集地帯があったりします。しかし、それらの役割は、風向きや気圧を感じることなどで、ヒトの眉毛とは異なります。

ちなみに、生物学では、ヒトの眉毛が濃いのは、感情を表現するためではないかという説があります。動物は別の個体と対峙するとき、毛を逆立てて怒りを表すことがありますが、ヒトは毛を逆立てることができません。そこで、相手とのコミュニケーションをとるために眉毛を利用したと考えられています。

生えている部位によって役割や形状が異なる顔の毛。それぞれの適切なお手入れ方法を理解して、自分らしく付き合っていきましょう。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:きじまももこ

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