母が薬剤師だったこともあって大学は薬学部に進んだのですが、実は文系肌でした。薬学部の勉強では薬理学が好きでしたね。体の中で、薬がどんなふうに効いていくのか知ることがおもしろかったのです。逆に苦手だったのは化学で、反応式を覚えるのに苦労しました。国家試験のときもぎりぎりまで勉強していて、たまたま直前に見ていた化学の問題が出て、無事に合格できました(笑)。
卒業後はアルバイトで働いていたドラッグストアに就職しました。OTC薬は、「風邪にはこれ」という感じでざっくりとしていて、働いているうちに、調剤薬局で処方せん薬を勉強したいと思うようになりました。患者さまの症状に合わせて、ドクターがどう処方されるのか、改めて学びたいと思ったのです。それで、新規オープンで開局スタッフを募集していたアイセイ薬局に転職しました。
いちから新しい店舗をつくることができる点が魅力でしたね。その頃のアイセイ薬局は、まだ20〜30店舗で、これから店舗を拡大していこうという時期でした。最初の配属となった店舗の門前クリニックにはとても厳しいドクターがいらして、度々ご指導をいただきました。それは患者さまのことを考えているからこそですが、私も薬剤師としての意見をお伝えし、応戦していました。徐々にこちらのこともご理解いただけるようになり、薬に関しては薬局にお尋ねいただけるような信頼関係を築くことができました。
薬剤師は医療従事者ですが、調剤薬局は小売業でありサービス業という側面もあります。この業態でこれだけ感謝の言葉をかけていただける仕事は、ほかにないと思っています。店舗勤務時代、ヘルプで岡崎店(愛知県・岡崎市)に行ったときの「ありがとう」は今でも一番心に残っています。年末の営業を終えて帰り支度をしていたら、「あとで取りに来る」と言われた患者さまが来ていなくて、薬がひとつ残っていたのです。主婦の方で高血圧の薬でしたが、年末年始はお忙しいでしょうし、いつ血圧が上がるかわからない。「万が一のことがあったら大変!」と、ご自宅までお届けに行きました。
当時、車にはカーナビなど無く、真っ暗な道中を電話で誘導していただき、山を越えて、ようやくたどり着いて。その患者さまに「こんなに一生懸命に届けていただいて!」とすごく感謝されたことを覚えています。私は「薬剤師ですから当然のことです」とお答えしながらも、内心ほっとしていました。そんな「ありがとう」の積み重ねこそが薬剤師としてのやりがいでしたし、忘れられないエピソードです。
二つの店舗で店長を経て、会社からの辞令で首都圏のマネージャーになりました。店長時代も、数字の管理はしていましたが、今度は複数の店舗を見ながらマネジメントしなければいけないので、「自分にそれができるのか」という不安や葛藤がありました。店舗では1カ月単位で段取りをしますが、本部側では年単位。しかもさまざまなタスクをこなしながらPDCAを回して、スケジュール管理をしていきます。店舗ではルーティン業務が主ですが、本部ではルーティンにプラスして、ゼロベースで何をするべきかを考えて、仕事をつくり上げていきます。こういった経験が自身の成長にもつながったと思います。
当時は、一人で7〜8店舗を担当して、新店立ち上げのサポートで2週間出張とかもざらで、休みも思うように取れなかったですね。会社の成長期だったので「みんなでいっしょにやろう!」という雰囲気で、楽しく仕事をしていました。
マネージャーとして120%働いていたときに、結婚して子どもを授かりました。育休明けは本社の人事部へ異動になりました。復帰後は以前のように仕事がこなせず、一方で家事や育児も思うようにいかず…。何もかも中途半端な気がして悩みました。でも、あるとき一人でがんばるのではなく、周りの人と協力し合って、その時々のパフォーマンスを出していれば、それが今の100%だと気がついて。自分を認めてあげることで気持ちが楽になり、「家庭と仕事」の両立という難題を乗り切れたように思います。
2015年に社長に就任しました。会社としてのビジョンを考え、最後に決断するのが私の仕事です。コロナ禍でも感染症予防に配慮しながら店舗を開けることが我々の使命と考えました。あのときは医療従事者としての誇りをもって、社員一丸となって対応してくれたので、アイセイ薬局の人材の心強さを感じました。
これから、オンライン服薬指導、電子処方せんなどDXへの対応が本格的にはじまります。「病院の近くだから利用していた」という患者さまの行動も変わってきますし、在宅医療も増えていきます。薬剤師は店舗の外へ踏み出していく時代。そうなるとドクターはじめ看護師、介護士、ケアマネージャーとの連携が大事になってくるので、薬剤師としての質的な向上が求められます。
そして、時代のキーワードは「かかりつけ薬剤師」です。患者さまに選んでいただき、信頼を得て、寄り添える薬剤師になるには、さらなるスキルアップが必要ですね。会社としても新しい流れに対応して、積極的に取り組んでいきます。患者さまに「アイセイの薬剤師に相談して良かったね」と喜んでもらえるように、そんな薬局を目指していきます。
※インタビュー内容は2022年9月時点のものです。
神奈川県出身。日本大学薬学部卒業後、1997年アイセイ薬局に入社。店舗勤務を経て、首都圏営業部マネージャー、本社人事部、学術研修部、内部監査室など、さまざまなキャリアを重ね、2015年代表取締役社長に就任。休日は、飼いはじめたばかりの2匹の猫と遊ぶのが癒しの時間。大学生になった娘との旅行も楽しみのひとつになっている。
※一部、当時の組織名を用いています。
「人と比べなくていいよ」という
店長からの励ましの言葉を胸に刻んで。
尾形 由佳
ヘルプで入った店舗で出会って、
家族になりました。
馬場 奨太 / 馬場 佑衣
帰宅してから、両親に話を聞いて
もらうことが心の癒しです。
市川 真衣
仕事もプライベートも
自分らしく、充実しています。
阪本 雄大
社内サークルで、海へ、山へ。
ありのままの自分でいられる時間。
鎌田 真翠
“医療人”として、
地域の患者さまに寄り添いたい。
鈴木 惠理
ドクターと密に連携し、
医療モール全体で患者さまを支えています。
山田 遼子
在宅医療で大切なのは、患者さまと
ドクターとの信頼関係。
鈴木 一慶
新入社員研修のおかげで、
社会人への気持ちの切り替えがスムーズに。
染谷 僚人
楽しく仕事ができる雰囲気づくりで、
やる気に火をつける。
板倉 由樹人
多くの薬剤師に影響を与えられる
やりがいを感じて。
錦 夕佳
薬局DXの時代だからこそ、
患者さまへの“寄り添い”を大切に。
藤井江美