2024.07.22

2024年7月号

アイセイ薬局では、当社グループの最新ニュースを紹介する『AISEI百景』を発行しております。Vol.18(2024年7月号)ではパリ五輪開催にあわせて、薬の専門家としてアスリートを支える「スポーツファーマシスト」の活動を特集。そのほか、在宅医療における訪問看護師と薬剤師の連携、『ヘルス・グラフィックマガジン』最新号について紹介します。

ドーピングからアスリートを守りたい選手のコンディショニングを支えるスポーツファーマシスト

ドーピングからアスリートを守りたい
選手のコンディショニングを支えるスポーツファーマシスト

薬剤師の中には、がんや糖尿病、漢方や小児など、特定の領域で薬物療法の知識・技術を身に付けた「認定薬剤師」や「専門薬剤師」がいます。認定・専門薬剤師はチーム医療の中で、医師・看護師・ケアマネジャー等と連携しながら、薬のスペシャリストとして患者さまの安全で適切な治療をサポートしています。

今回は、スポーツにおけるアンチ・ドーピングを専門とする「公認スポーツファーマシスト」をご紹介。今年はオリンピック開催年。日本代表選手の活躍も期待されますが、大会に出場するうえで気を付けなくてはいけないのがドーピング。ドーピング検査で陽性となれば、競技会に記録されている成績の取り消し、一定期間の競技活動停止などの厳しい制裁を受けることになります。そんなドーピングからアスリートを守るため、重要な役割を果たしているのがスポーツファーマシストです。認定資格を持ち、スポーツチームや大学の陸上競技部などのサポートをしている、当社薬剤師の野村大祐に話を聞きました。

スポーツファーマシストの主な役割は、アスリートをドーピング違反から守ることです。特に、知らず知らずのうちに禁止物質の入った薬やサプリメントなどを服用してしまう「意図しないドーピング」に注意が必要です。意図していなかったとしても、禁止物質が検出されたらアンチ・ドーピング規則違反となり、競技活動にかかわる制裁を受けることになります。スポーツファーマシストは「知らなかったから回避できなかった」という事態を防ぎ、選手が安心して競技に取り組むことができるよう活動しています。具体的には、アスリートやスポーツチームからの相談対応、アンチ・ドーピングに関する情報提供や講習会の実施、遠征や海外渡航時の常備薬セットの準備などです。ドーピングは薬物乱用にかかわる問題の一つでもあるので、学校薬剤師として小学生に対してアンチ・ドーピングについてお話をしたりもします。

アスリートからの相談内容は、市販のかぜ薬やサプリメントに関するものが多いです。中でも気を付けたいのはサプリメント。医薬品と異なり、全成分の記載が義務付けられていないので、自己判断の使用にはリスクが伴う場合があります。栄養素の補給目的で使用している方も多いと思いますが、安心してお使いいただくためにも一度ご相談いただきたいです。時には管理栄養士と協力して、栄養の観点から本当に必要なサプリメントかどうかを判断することもあります。食事で十分摂取できていれば、無理に使用する必要はないので、必要性の有無や効果的な食材などもお伝えしています。市販薬だけでなく、病院で処方される薬にも禁止物質が含まれていることがあるので、受診する際はアスリートであることを伝えるように指導しています。もし処方内容に不安があればすぐにスポーツファーマシストにご相談いただきたいです。どんな選択肢でも、最後に判断するのはアスリート自身です。その方にとって最良と思える判断をしていただくために、必要な情報はすべて用意するよう努めています。

すべてのアスリートがより良い環境でスポーツに取り組めるように

以前、ダンススポーツをされている方から「花粉症のつらい症状に悩んでいたが、ドーピングが怖くて薬を飲めなかった」とご相談いただいたことがあります。その方はそれまでスポーツファーマシストの存在を知らず、誰にも相談できずに症状をずっと我慢していたそうです。実は抗アレルギー薬はごく一部を除くと、ほとんどのものが禁止物質を含まず、ドーピングの面では非常に安全なお薬です。この相談を受けたとき、知識の有無がパフォーマンスや競技生活に直結すると実感し、自分の知見をもっと伝えていかなくてはいけないという使命感を持ちました。同時に、スポーツファーマシストが必要とされていること、まだまだ認知が広まっていないことも考えさせられました。専門的な知識を身に付けた薬剤師がいることをもっと知っていただけたら、意図しないドーピングや薬への不安を減らせるのではないかと思います。今後は、地域のスポーツイベントや健康イベントでもアンチ・ドーピングや薬物乱用に関するクイズやセミナーを実施して、より多くの方々に活動を知っていただきたいです。

私の目標は、すべてのアスリートがより良い環境でスポーツに取り組むことができる状態にすることです。この目標はひとりだけでは実現できないので、もっと活動できるスポーツファーマシストを増やしていきたいと思っています。現在は社内で、認定資格を持っている人やスポーツ好きを集めて、月に一度勉強会や情報共有などをしています。今後も、アスリートをドーピング違反から守る活動はもちろん、さらに広げてスポーツを楽しむ大人や子どもたちにも興味を持ってもらえる活動をしてきたいです。

専門性を生かした連携で患者さまの生活を支える在宅医療

専門性を生かした連携で
患者さまの生活を支える在宅医療

通院が困難な方、ご自宅等での療養を希望される患者さまを支える在宅医療。アイセイ薬局グループも地域医療に貢献すべく、薬剤師訪問サービスなど在宅対応を推進しています。ご高齢の患者さまに加え、小児や精神科の患者さまなど在宅ニーズが増加する中、患者さま一人ひとりに合わせたサービスを提供するには、医療・介護従事者との連携が欠かせません。

今回は近畿エリアで、株式会社N・フィールド様の運営する「訪問看護ステーション デューン」と連携して取り組む精神科在宅患者さまのサポートについてご紹介します。近畿西支店在宅チーム・薬剤師の西哲矢に話を聞きました。
※大阪に本社を置く株式会社N・フィールドが運営する訪問看護ステーション。全国230カ所以上展開中。

2022年9月から、精神科に特化した「訪問看護ステーション デューン」と連携し、患者さまのご自宅等に薬剤師が訪問して薬の管理や服薬支援などを行っています。精神科の在宅では特に、まず信頼して受け入れていただくことが重要です。そのため、患者さまの承諾を得られた段階で、担当看護師の方からこれまでの経緯・特性・留意点などを共有いただき、サービス開始前に一緒に訪問。実際にサービス提供となった場合は、最初の1カ月は訪問の度に速報ベースで共有、密に連携を取り、患者さま特性にあわせた丁寧な対応を心掛けています。薬剤師の訪問は最大で週1回ですが、訪問看護は週2、1回なので、患者さまの様子や服薬状況、訪看さんの視点からの情報等を共有いただくことでより正確な情報が集まり、適切に服薬いただくためのアプローチなどを工夫しやすくなります。連携を深めるために、薬剤師側から積極的に連絡をとり、患者さまについてわからないことを教えていただいたりしながら、逆に、薬のことを気軽に聞いてもらえる関係づくりに努めています。看護師・薬剤師が専門性を生かして連携することで、患者さまにとってより充実した医療サービスを提供できているのではないかと思います。

患者さまのため それぞれの専門性を最大限発揮できる連携を

薬のことを薬剤師に任せていただき、複数の科を受診されていて薬が多い方、ご自宅でおくすりカレンダー等にセットが必要な方などの対応を薬剤師が引き受けることで、訪看さんが専門領域の業務に集中できるようになったと伺っています。患者さまからご質問をいただいた際、多くの薬を服用していれば、それだけ薬学的な知識が必要になるので助かっているという声や、薬剤師という専門家からお話しすることで、患者さまに納得感をもって受け入れていただけることも多いという声などをいただきます。担当患者さまに限らず、薬に関する質問やお悩みには随時お答えできるようにしています。また、患者さまの状況をみて、医師に減薬の提案をしたり、訪看さんから共有いただいた情報も踏まえて、より良い治療につながるように、医師ともしっかり連携を取っています。密な多職種連携によって、医療サービスの質の向上にもつながります。

N・フィールド様との連携も徐々にエリアを広げているところですが、他にもまだ薬局・薬剤師を必要とされているところはあると思います。お互いにオンライン勉強会等を実施し、今後、全エリアでつながりを作っていきたいと考えています。また、“薬剤師が入ってくれてよかった”という事例を積み重ねて、頼っていただけるように努めるとともに、必要なときに依頼しやすい体制づくりを進めていきます。

生きづらい思いをされている方を 皆で支援していきたい 株式会社N・フィールド 本並寿美代様

対話を通じたケア、不安に思っていることや心配されていることに関していろいろ話をする中で少しでも解決に導いていくことが精神科訪問看護師の大事な役割の一つです。訪問看護では、ご利用者さまが地域社会の中で長く安定して生活するために、社会とつながる訓練的な要素も含まれています。一方で、薬の管理やセットに時間を要すると、対話の時間を減らさざるを得ないなど、薬に関する業務負担が課題でした。
連携してからは薬に関することを担っていただけるので、業務分担ができ、私たちも一番重要なところにしっかり時間をとれるようになりました。看護師と話す時間を確保できることや、薬のことを質問したい方も多かったので薬剤師に直接聞けることで、ご利用者さまの満足感も上がっていると思います。薬のことで看護師がわからない点があった場合でも、気軽に連絡を取って連携することができるのも大変助かっています。

精神科の治療では、継続して服薬することが大切になります。看護師・薬剤師を含め多職種の介入と、アイセイ薬局から紹介された「服薬支援装置」の導入によって、改善が見られたご利用者さまもいらっしゃいます。途中で薬を飲まなくなり問題行動を起こしてしまい入院していたという経緯のある方だったのですが、「服薬支援装置」が音声で知らせてくれることで何とか薬を継続して飲めるようになり、生活リズムもできて、入院に至ることなく過ごせています。

一人の方の生活を支えるのに、訪問看護師だけではできることも限りがあるため、医師・薬剤師・ケアマネジャー・ヘルパーなど多数の関係者が連携することが大切だと思います。ご本人のご希望にあわせて、長く在宅で生活できるように、専門分野で役割分担して、皆で支えていけたらと考えています。

自分の耳の、味方はジブン。ヘルス・グラフィックマガジン Vol.52「耳の不調」

自分の耳の、味方はジブン。
ヘルス・グラフィックマガジン Vol.52
「耳の不調」

予防医療のための有益な情報や、セルフケアに役立つ健康情報を、当社の強みである「デザインの力」を発揮して、わかりやすく魅力的に紹介する『ヘルス・グラフィックマガジン(以下HGM)』。毎号ひとつの症状にフォーカスし、専門家によるメカニズムの解説や改善方法などの情報を、楽しいビジュアルとともに紹介する季刊フリーペーパーです。

耳は「音をきく」「姿勢を保つ(平衡感覚)」という2つの大事な機能を担う、小さくも偉大な器官。自分では直接見ることも、中をのぞくこともできないからこそ、もし不調があっても対策が打ちづらいものです。そこで、6月17日発行のHGM最新号のテーマは「耳の不調」。「音をきく」機能に焦点を当て、耳の不思議やしくみ、不調や対処法についての情報を集めました。

ちょっと気になるこんな症状はありませんか? 耳を傾けよう! 耳のSOS(pp.8-9)

「耳の不調」は“きこえない”だけではありません。痛みやかゆみ、液体が垂れてきたり、つまった感じがしたり、症状はさまざま。ズキズキ、ガヤガヤ、キーンなど不調の音が聞こえてきたら、それは耳からのSOSかもしれません。代表的な症状とその原因、予防・対処法をご紹介します。セルフ耳掃除が不調の原因になることも!? 「『耳掃寺』住職、その極意を語る―。」(pp.10-11)も合わせてご覧ください。

実はカッコイイ! 補聴器の「いま」と知っておきたい情報 THE Hochoki Now(pp.16-17)

老化現象のひとつとして誰にでも自然に起こる加齢性難聴。日常生活に不便を感じ始めたら、補聴器の活用がオススメです。「うっとうしい」「お年寄りっぽい」などネガティブなイメージもあるかもしれませんが、補聴器は快適な生活やコミュニケーションの強い味方。補聴器にまつわる誤解や正しい活用方法、実はカッコイイ最新の補聴器事情もお届けしています。

難聴の原因は加齢だけではありません。若い世代でも突発性難聴やヘッドホン難聴、ストレス性の難聴の場合もあるので、きこえにくさや違和感を覚えたら、まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。

このほか、今回のHGMでは「Good life for ears.」「耳もまもれる!ワクチンのススメ」など、耳の不調に関する情報をたっぷりお届けします。生涯にわたって健やかな耳を保つために、HGM「耳の不調」号をお役立てください。

【メイン監修】
小森学先生(聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教室 主任教授)

★HGM「耳の不調」号およびバックナンバーのデジタル版はこちらからご覧ください。

編集後記

スポーツファーマシスト特集ということで、「せっかくなら!」と、陸上競技場で表紙を撮影。競技場にはさわやかな空気が流れていて、思わず走り出したくなったり…。とても気持ちが良く、楽しい撮影になりました。

施策に関するご質問や取材のご依頼はこちらから

株式会社アイセイ薬局 コーポレート・コミュニケーション部
担当:原田・蛎崎(かきざき)
TEL:03-3240-0250 E-mail:koho@aisei.co.jp

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