今回は9月の「健康増進普及月間」「食生活改善普及運動月間」に向けて、薬局でできることについて薬剤師・管理栄養士の座談会を行いました。
有元里美 アイセイ薬局 明大寺店(愛知県岡崎市) 店長/薬剤師
今井建介 アイセイ薬局 若葉台店(東京都稲城市) 店長/薬剤師
高橋由季 アイセイ薬局 ほたる野店(千葉県木更津市) 管理栄養士
中川裕子 本社薬局営業推進部
橋本裕輔 首都圏東支店マネージャー
松木愛 アイセイハート薬局 吹田SST店(大阪府吹田市) 管理栄養士
―薬局の役割について
有元:薬をしっかり飲んでいただくことはもちろんですが、未病、予備軍の段階で健康維持のサポートをしていくことが大切だと感じています。患者さまがささいなことでも気軽に相談できる環境を整えたいと思います。
今井:国の制度としても地域の健康管理を担う存在として期待されていると考えています。若葉台店には多数の科の患者さまが来局されますが、健康管理のためには患者さまの病識向上にも取り組んでいく必要があると感じています。服薬していても食事内容を全く気にしていない方、治療中でもタバコ・アルコールがやめられない方がいらっしゃいます。そうしたところにもアプローチできれば、薬局の役割がさらに増えていくのではないかと思います。
高橋:お薬をお渡しするだけでなく、健康や生活習慣の相談もできる場所になりつつあるのかなと考えます。食事・栄養のお話になったときに、薬剤師から引き継いでお答えすることが多いです。患者さまの意識が健康に向いているところで、ふだんの食生活についてもサポートしていければと思っています。
松木:患者さまにとってお話ししやすい場所として「窓口」になれるのではないかと思います。健康チェック機器を常設した「ヘルスケアサロン」があるので、処方せんなしで来店されて測定したいという方とお話しする機会が多いです。薬剤師や医師と連携したり、患者さまに受診勧奨したりご案内ができる場所になっているのかなと思います。
―薬剤師として受けるご相談、栄養面のサポートの必要性を感じる場面など
今井:コレステロール値を下げるために食事内容の提案をしてほしいといったご要望、妊娠中の血糖コントロールのご相談など、いろいろな患者さまがいらっしゃいます。栄養士のアドバイスがあれば患者さまの満足度も上がり、貢献度も高くなると思います。
有元:血液検査の結果を持参された患者さまから食事についての質問を受けることがあります。長く向き合っていく疾患は日々の食事も重要です。特に糖尿病患者さまからの食事相談が多いのですが、管理栄養士のフォローがあれば心強いと思います。
食事・運動の自己管理をされている患者さまから、体重が増えてしまったので食事のどこを変えたらいいのかとご相談を受けたときに、薬剤師だけではすぐに判断できない…ということがありました。
―薬剤師と管理栄養士の連携について
松木:例えば血糖値の薬を飲んでいる患者さまに、薬剤師と連携して食事面のアドバイスをお伝えすることで、コントロールをより良好に保っていただけるようにサポートできると思います。「薬は飲みたくないけど数値が気になる」という方も多いので、定期的に体脂肪や筋肉量などをチェックすることをお勧めしています。継続的に管理栄養士が応援していけるようなお話ができたらいいと思っています。
高橋:個別栄養相談の際、患者さまとどんどん会話を進めていかないと原因が見えないなと感じたことがありました。体重が減らない・血糖値が下がらない…原因が必ずあるはずなんです。例えば食事内容をお伺いする中で「パン1枚」でも、「1枚」の量の認識が異なることがあります。話をすり合わせていくと原因が見えてくるのかなと思います。
中川:薬剤師の目線と管理栄養士の目線、それぞれで細かく見ていくといろいろわかってくることがあると思います。グループホームで薬剤師と管理栄養士が連携して食事の介入を始めたのですが、分析後にディスカッションする中で食事の食塩相当量が多い、水分摂取が足りていないといった課題が見えてきました。 本社の管理栄養士チームでサポートできることもいろいろありますし、レシピなども準備しているので、薬剤師・管理栄養士の連携をどんどん進めていけたらと思います。
―今後の取り組み、やっていきたいこと
橋本:地域包括支援センターの方とお話しすると、高齢者の低栄養改善、タンパク質の摂取といった課題があがることが多いです。そこで包括と連携した地域活動にも徐々に取り組んでいます。 栄養面のサポートの際はレシピの提供だけでなく、独居の方や料理の習慣がない方向けの商品や情報提供も必要だと感じています。
高橋:ほたる野店では昨年、包括の方たちと一緒に健康相談会を開催して、血糖コントロールについてのお話をしました。今度、公民館で野菜摂取量のチェックと相談も予定しています。管理栄養士が店舗にいていろいろ相談対応できること、栄養の情報などもこれから積極的に発信していきたいと考えています。
有元:管理栄養士とも連携して、患者さまそれぞれにあった食事指導のフォローをしたいと考えています。地域住民向けの健康相談会も開催したいと思います。
今井:生活習慣病の治療開始時や患者さまのご要望があったときにお渡しできる、栄養の資料を用意したいと考えています。独居の方やお料理習慣がない方の健康サポートができる商品の取り扱いも検討したいです。 未病対策のご質問も少しずつ増えているので、管理栄養士と連携することで健康サポート薬局として地域の包括的な健康増進に貢献できるのではないかと思います。
松木:ご家族やご友人から聞いて…と来局される方も増えているので、地域の健康相談窓口となっていくことができればと考えています。1度の測定で数値が良かった悪かったで終わるのではなく、栄養相談や継続的なサポートにしっかりつなげていきたいと思います。
橋本:今は情報を得る手段はたくさんありますが、減量などの取り組みを続けられるかは見てくれている人がいるかどうかも大きいのではないかと思っています。 患者さまといろいろお話しする中で、実はちゃんと薬を飲めていないのではとわかることがあります。患者さまに寄り添えること、会話を続ける中でわかることがあるというのは、「人」だからこそできることだと思います。さらに、医療機関・医師と密に連携できるのも当社の強みなので、見えづらいところでの患者さまの健康維持・増進のサポートもできたらいいなと考えています。
中川:栄養相談でも、情報があふれている中で何が正しいのか、何が自分に合うのかわからないというご相談が非常に多いので、正しい情報をお伝えするお手伝いをしていきたいと思っています。 ひとりの患者さまに対して、医師・薬剤師・管理栄養士、いろいろな接点を持って多職種連携で地域の皆さまの健康を守っていけたらと考えています。