2025.01.28
2025年1月号
アイセイ薬局では、当社グループの最新ニュースを紹介する『AISEI百景』を発行しております。Vol.20(2025年1月号)では、ご高齢の患者さまのご自宅を訪問して服薬をサポートする事例を特集。そのほか、プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」に所属する「アルバルク東京」との取り組み、『ヘルス・グラフィックマガジン』最新号についてお届けします。


患者さまそれぞれの生活背景に
あわせたサポートを
高齢化や核家族化が進み「老老介護」「認認介護」が増加する一方、介護の専門家でも各家庭の実態把握は難しく、サポートの手が届きにくい時代になっています。その中でも患者さまがご自身のペースで生活を長く続けられるよう、薬局・薬剤師も多職種と連携しながらサポートを行っています。
今回は「第18回日本薬局学会学術総会」でも発表した2事例を紹介します。
認知症患者さまの服薬管理や通院をサポート
介護支援の橋渡し役に

アイセイ薬局 稲毛海岸店(千葉県千葉市)の店長で薬剤師の小坂智子に話を聞きました。
患者さまの背景
70代女性・高齢夫婦世帯
気管支喘息・認知症/2つのクリニックを受診
患者さまの状況
2つのクリニックに通院、薬はPTPシートでお渡ししてご自身でお薬カレンダーで管理されていました。もともと受診遅れがあり服用状況に懸念がありましたが、一時期立て続けに「薬を紛失した」との電話が頻発したことをきっかけに、薬局が積極的な支援を試みるようになりました。それと前後して、病院に行ってきたかわからなくなる、話したことをすぐに忘れて同じ話を何度も繰り返すなど、認知症が進行している傾向が見られ、通院や薬の管理・服用にサポートが必要だと感じられました。
薬局のサポート【服薬管理・通院の支援】
まず、医師に薬局での状況や懸案事項について情報提供を行い、通院中の2つのクリニックから処方されている薬を薬局ですべて一包化してお渡しできるように調整しました。薬剤師がご自宅を訪問してサポートできる外来服薬支援制度を活用して、ご自宅にある残薬を確認・整理し、薬の渡し方の変更や一包化した薬のお薬カレンダーへのセット方法などを患者さまに説明しました。翌月に再訪問し、残薬状況やお薬カレンダーへのセットが自身でできるかを確認。多数たまっていた気管支喘息の吸入薬には順番に使えるように番号を振り、患者さまと相談しながら目につきやすい場所に配置しました。

通院のサポートやヘルパーの活用などができるように、地域包括支援センターに相談し介護支援を進めようとしたところ、他者が介入することに拒否感が強くいったん断念。薬局の訪問・介入については、おそらく、以前から病院より長く話をする場所であったこと、服薬管理のトラブル認識後はなるべく同じ薬剤師が対応するようにしていたこともあり、抵抗なく受け入れていただけました。そこで、通院に関しては薬局ができる限りフォローすることとし、薬がなくなる頃に受診できるように電話で連絡。薬局に来局された際には、いつどのクリニックに行ったか、何を渡したか、帰宅後の薬の取り扱い、次の受診日などをメモでお渡しするようにしました。
介護認定への橋渡し
約1年にわたって複数回ご自宅を訪問し、支援を繰り返す中で、患者さまやご家族とコミュニケーションを取り、他者介入への拒否感を徐々に解くことができました。同居のご家族(夫)も健康上の問題を抱えていたため、あらためて地域包括支援センターに連絡、介護認定申請を行い、介護支援につながりました。
目指す薬局・薬剤師の姿
今回のケースでは、ケアマネジャーにつなげて見守りの目が向く機会を増やすことができました。薬局は、ご家族や他職種から見えない生活の問題点を認識したり、情報を得たりしやすい立場にあります。薬局・薬剤師の専門性を生かしつつ、患者さまとご家族や他職種との間の情報のつなぎ役としてサポートできることは、一つの理想です。
患者さまが無理をしないで薬と付き合えるように、介護福祉や終末期医療など幅広く知識を身につけ、いろいろな選択肢を提示できる薬剤師を目指したいと考えています。
適切な服薬を支援し減薬・QOL改善へ

アイセイ薬局 川口前川店(埼玉県川口市)の薬剤師・高柳絵美子に話を聞きました。
患者さまの背景
60代女性・高齢夫婦世帯
パーキンソン病/複数のクリニックを受診
在宅対応の経緯・状況
もともとご家族の訪問薬剤管理を担当していましたが、パーキンソン病で手の動作が不自由な中で、ご自身で大量の薬を切り分けて小さなパックに入れていることを知り、ケアマネジャーさんに相談し、在宅対応させていただくことになりました。訪問開始時は17種類のお薬があり、服用回数は1日6回で、お薬カレンダーを使用していました。認知機能の低下は見られない患者さまで、服用忘れはなく、残薬もない状態でした。ただ、訪問時に詳しくお話をうかがうと、朝が苦手で起床時の服薬が遅れたり、15時、17時のお薬は外出や昼寝等でタイミングがずれるなど、医師の指示通りの時間に服用できていないことがわかってきました。
「服薬支援装置」導入のきっかけ
訪問時にいろいろお話しすることで把握できた患者さまのライフスタイルや服用状況などを、医師・ケアマネジャーにも情報提供し連携を取っていましたが、患者さまが突発的な錯乱状態になったことを機に、医師から服用方法等の検討依頼がありました。適切な時間に服用することが重要なので、サービス担当者会議でも「服薬支援装置」を提案し、皆さんの賛同を得て導入することになりました。

「服薬支援装置」導入の効果
時間通りに服用できるようになったことで、症状が安定し、wearing-off現象※や幻覚症状の発現が著しく減少しました。1週間に一度、服薬状況・症状・副作用の有無などを確認し、その内容を処方医にフィードバックしています。
※パーキンソン病が進行すると、薬が効く時間が短くなり、次のお薬を飲む前に効果が切れることがある
医師との連携・情報提供と減薬
慢性的な便秘や、朝方から日中にかけてひどい傾眠があるとうかがい、それが副作用であると考え、処方医に情報提供を行いました。17種類あったお薬を11種類に減らし、1日6回から4回に変更。減薬により日中の傾眠が減り、睡眠コントロールの改善にもつながりました。また、血圧低値によりデイサービスで入浴ができないという相談もいただき、医師に減薬を提案。薬の減量につながり、血圧は安定、入浴サービスを再開することができました。
在宅医療に携わる上で大切にしていること
担当する患者さまやそのご家族がより良く生活できるように、薬の知識はもちろん、他の職種との連携、「服薬支援装置」など機器類の紹介など、多方面から解決策を提案することが重要だと考えています。薬のセットをして終わりではなく、訪問時にお話しすることなどの中で、薬剤師だから見えてくることが必ずあると思います。ご本人のこと、ご家族のこと、デイサービスのこと、最近困っていることなど…、患者さまやご家族から相談していただける薬剤師になれるように、いろいろなアンテナを張るように心掛けています。
患者さまの安全・安心な薬物治療のために
全国の薬剤師が日々の取り組みや研究の成果などを発表する場であり、薬局機能・サービスの向上と薬剤師の育成等を目的とした「日本薬局学会学術総会」が11月2日・3日に開催されました。
アイセイ薬局グループは“奉仕のこころ”を社是とし、地域医療の発展、健康増進への寄与、薬剤師の育成・薬局の質向上を目的に、学会や論文等で発表する活動にも積極的に取り組んでいます。当グループからは口演・ポスター計5演題の発表、シンポジウムの座長・演者としても参加しました。

■シンポジウム
「薬剤師が施設の往診同行を行う意義~チーム連携さらなる躍進へ」
座長:薬局事業支援本部 本部長 立入節子
発表者:はなまるホーム草加松原 介護施設管理者 有村雄祐
首都圏西支店 マネージャー 山岸大祐
■一般演題(口演)
「GLP-1受容体作動薬間の切り替え時に発現した副作用」
アイセイ薬局 松原団地店 菅井貴洋
■一般演題(ポスター)
【薬剤師技能】
「薬剤師のトレーシングレポートの活用傾向と今後について考える」
アイセイ薬局 後楽園店 保谷薫美子
■【在宅医療・医療連携】
「服薬管理困難な認知症患者宅を薬剤師が訪問支援した症例」
アイセイ薬局 稲毛海岸店 小坂智子
「多職種連携による『服薬支援装置』導入事例及びその効果に関する報告」
アイセイ薬局 川口前川店 高柳絵美子
「薬剤師が介入し、多職種と連携したことにより改善に繋がった遅発性パラフレニーの症例」
アイセイ薬局 五日市店 茂木瞳
アイセイ薬局グループは、地域に根差し患者さまに寄り添う「かかりつけ薬剤師・薬局」、地域の健康サポート拠点として、地域の皆さまの信頼に応える薬局づくりを推進してまいります。

つらい人も、かるい人も、認めてない人も。
ヘルス・グラフィックマガジン Vol.54
「花粉症」

予防医療のための有益な情報や、セルフケアに役立つ健康情報を、当社の強みである「デザインの力」を発揮して、わかりやすく魅力的に紹介する『ヘルス・グラフィックマガジン(以下HGM)』。毎号ひとつの症状にフォーカスし、専門家によるメカニズムの解説や改善方法などの情報を、楽しいビジュアルとともに紹介する季刊フリーペーパーです。
あまりにも“国民病”になっている花粉症。身近ゆえに、「自分はまだ大丈夫」「病院に行くほどではない」など症状を軽く考えてしまいがちですが、実はスギ花粉症患者の約7割は重症または最重症と言われています。何となくやり過ごしていたり、自分の症状を花粉症と認めていなかったりすると、知らず知らずのうちにQOL(生活の質)が下がってしまうかもしれません。HGM最新号では「花粉症」をテーマに、あまり知られていない症状や対策、最新の治療法など、花粉の時期もすこやかに過ごせるヒントをお届けします。
薬を飲めば大丈夫…? 間違った対策にご注意を! 花粉ショーグンの、自己流対策。

さまざまな花粉症対策の情報が飛び交う昨今。「花粉症には乳酸菌」「とりあえず空気清浄機を置けば良い」など、自己流対策に心当たりはありませんか? 例えば、空気清浄機は部屋の真ん中や寝室に置くよりも、人の出入りの激しいリビングの入り口や花粉の侵入口となる玄関に設置した方が花粉除去に効果的なんだとか。誤解や思い込みを正しい知識に変えて、しっかり対策しましょう!
花粉症治療は、あなたに合った方法で 広がってます花粉症治療の選択肢

花粉症はアレルギー疾患の一つで、れっきとした病気。放っておいても治ることはなく、症状緩和には治療が必要です。治療法は年々進化し、薬物治療、アレルゲン免疫療法や手術治療などさまざま。症状や重症度だけでなく、ライフスタイルにも合わせた選択肢が広がっています。薬を服用しても症状が強い場合、2020年に保険適用になった「抗IgE抗体療法」も要チェックです。
このほかにも、代表的な花粉が飛散する時期、家の中の花粉を掃除するコツ、花粉対策グッズなど、「花粉症」にまつわる情報をたっぷりお届けします。自分の症状や原因となる花粉を正確に把握して適切なケアを行いましょう!
【メイン監修】
川島佳代子先生
(大阪はびきの医療センター 耳鼻咽喉・頭頸部外科 主任部長)
★HGM「花粉症」号およびバックナンバーのデジタル版はこちらからご覧ください。

9割が健康・食事などを意識するようになった・行動したと回答!
バスケ観戦時には健康チェック!で健康と笑顔に
アイセイ薬局は2023年10月から、プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」に所属する「アルバルク東京」が実施している、よりよい未来づくりに貢献する社会的責任プロジェクト「ALVARK Will」の活動に賛同し、社会課題・社会問題の改善のために、「SDGsパートナー」として取り組んでいます。

その一環としてアルバルク東京のホームゲームにおいて、野菜摂取量・体組成・血管年齢などを気軽に楽しくチェックできる特設ブースを出展。2023-24シーズンには、のべ9,800名超にご参加いただきました。アンケート※にご協力いただいた方の約9割が、健康チェック後に何か行動に移したり、意識するようになったと回答。「家族で野菜チェック対決をして、子どもが野菜を積極的に食べるようになりました」「日常で『気をつけよう!』と意識して改善できることを測定できるのがありがたいです」といった声をいただきました。今シーズンも2024年10月のホーム開幕戦から引き続き実施。“アルバルク東京の試合観戦時には健康チェック!”で、ご自身や身近な方の健康を考えたり、生活習慣病やフレイル予防のきっかけとしていただくことを目指します。また、今シーズンはアルバルク東京とコラボした健康セミナー・イベントの開催も予定。
アイセイ薬局は引き続き、健康管理の身近なパートナーとして、お薬による治療のサポートだけではなく、予防や未病の段階からの健康サポート等も推進していきます。
※2023-24シーズンの健康チェックブースに関するアンケート(2024年4月26日~5月9日実施)

アルバルク東京について
東京都を拠点として活動するB.LEAGUE所属の男子プロバスケットボールクラブ。2021-22シーズンより社会的責任プロジェクト「ALVARK Will」を立ち上げ、地域やコミュニティの抱える課題やニーズに応える活動を実施。
●「ALVARK Will」について詳しくはこちら
編集後記
患者さまそれぞれ “自分らしい”暮らしは異なるもの。最善を尽くせるよう、薬剤師は日々試行錯誤しています。
本年も、誰もがすこやかに、笑顔でいられる毎日のために、アイセイ薬局グループはより一層努めてまいります。
施策に関するご質問や取材のご依頼はこちらから
株式会社アイセイ薬局 コーポレート・コミュニケーション部
担当:原田・蛎崎(かきざき)
TEL:03-3240-0250 E-mail:koho@aisei.co.jp